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チームワーキング
ニッポンのチームをアップデートせよ

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「中原淳氏(立教大学経営学部教授)と田中聡氏(立教大学経営学部助教)による共著『チームワーキング―ケースとデータで学ぶ「最強チーム」のつくり方』の刊行を記念して、会員限定セミナー「チームワーキング:ニッポンのチームをアップデートせよ」が、3月10日に開催されました。
人材育成専門誌『Learning Design』での、中原氏の人気連載「GoodTeamのつくり方」で蓄積された様々なアイデアをベースに、田中氏が「データアナリティクスラボ」で行った研究成果を掲載した本書は、VUCA時代におけるチームワーキングの要諦が詰まった貴重な内容となっています。
当日は中原氏と田中氏により、本書の一部を圧縮して紹介した濃密な講義が行われました。ここでは、本講演の一部をレポートと動画で紹介します。

こんな方におすすめ

  • さまざまな現場で「チームを前に進めたいと考えているすべてのひとびと」

登壇者プロフィール

中原 淳(なかはら じゅん)氏

立教大学 経営学部 教授

田中 聡(たなか さとし)氏

立教大学 経営学部 助教

セミナー動画

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0:07:02

第1部

すべての人々にチームを動かすスキルを!①
0:17:35

第1部

すべての人々にチームを動かすスキルを!②
0:11:46

第2部

ケースとデータで学ぶTeam Working①
0:07:02

第2部

ケースとデータで学ぶTeam Working②
0:19:56

第2部

ケースとデータで学ぶTeam Working③
0:13:59

第3部

まとめ
0:10:39

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第1部・第2部チームワーキング
すべての人々にチームを動かすスキルを

  • 中原 淳氏/田中 聡氏
  • 立教大学 経営学部

セミナーレポート

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Ⅰ. すべての人々にチームを動かすスキルを!

書籍『チームワーキング』の出版にあたって

中原:

この『チームワーキング』という書籍では、様々な主張を展開しています。リーダーだけではなく、すべてのチームを動かすスキルを、「すべての人々」が持つべきであるということ。そしてチームで動くための「OS(チームを見つめる見方)」ととともに、「すべての人々にチームを動かす「3つのアプリ(チームでの行動)」が必要であるということを書いています。

さらに、データに基づきながら、「こういうものが大事なんだ」と解説し、データだけではなかなか学びにくいところもあるため、「ビジネスケース」も設けています。

(1)「すべての人々にチームを動かすスキルを!」

●VUCA時代の3つの病:
①うちの会社って何の会社だったっけ症候群

ビジネスケースを使ったブレイクアウトセッションに入っていく前に、本書の執筆に至ったきっかけについてお話をしておきましょう。皆さんは、「なんか最近の組織って、うまく動かないなぁ」とか、「なんか、ギスギスしてるなぁ」みたいな実感はありませんか?

最近「VUCA」とよく言われますが、Volatility(変わりまくり)、Uncertainty(やたら動いている)、Complexity(鬼複雑)、Ambiguity(劇的あいまい)の頭文字です。要は、社会全体がいろいろなかたちで動いていて、そのスピードや複雑性が増しているということだと思うのです。コロナ禍こそ、まさしくVUCAの典型ですね。

変化が激しいということは、組織や企業やビジネス、それぞれ全体が変化し、揺さぶられます。そうなると、なかなか自分の仕事や職場が何を目指しているのか、見通しが効かなくなってきます。そのなかで、『①うちの会社って何の会社だったっけ症候群』が発病しやすくなります。

「会社変わりまくり」、「ビジネス変わりまくり」の状態では、自分の会社が何をやっていて、何を目指していたのか、だんだんと分からなくなってくるので、職場でも何をやっていいかが分からなくなってくるわけですね。

パナソニック代表取締役の樋口泰行さんは、いまは、「自分たちが『何屋』になり何をするのかを定義しなければならない時代≒目標、めざすものが何かを自ら定義する時代」で、そういうときには「組織やチームは揺れる、揺れ続ける」とおっしゃっています。

「パナソニックが置かれた環境は、次に開発するものが決まっている時代が長かった。テレビが、ブラウン管やプラズマ、液晶といった技術変化と、モノクロからカラー、フル HD 、 4K といった放送方式にあわせて進化してきたのがその最たる例だ。また、多くの製品がスタンドアロンの箱として存在していた。そのため、工場や実験室にこもっていても開発できた。

しかし、いまではそれが通用せず、さらに、さまざまなディスラプターが存在している。

事業部を基点とした戦い方では勝てなくなってきている。視野を広く、景色を広くみないと勝てない」

つまり、カオスに陥らず、いかに「何=めざすもの=目標」を決めて、それぞれの現場で、ひとを巻き込んでいくかということですね。

「目標が見えない」という問題があるなかで、「目標をしっかり握る」ということがとても重要になります。逆にいえば、それらがシビアになっている状況なので、すべての人が、もう一度、チームを動かす技術を身につけなければなりません。

その技術を学ぶのが、本書のテーマのひとつです。

②となりに座っているひとって何やってるひとだっけ病

変化の激しい時代では、人の出入りも激しくなります。皆さんの会社はどうですか? 「②となりに座っているひとって何やってるひとだっけ病」を発病してはいませんか?

これは、チームのメンバーが「自分の仕事はここまで、あなたの仕事はここ、あとは干渉しない」といった「個業化」が起こることによって、コミュニケーションがとれない問題を指します。

これも、実際にある方から聞いた言葉です。

「気づいたら、今日1日誰とも会話しなかったっていう日もあるんです。すべてのコミュニケーションは社内チャットですみますし、言った言わないの水掛け論にならないので、文字で残したい。チームであって、チームじゃない。あまりよく知らないひとが、ただ自分の隣にいるだけです……」

リモートワークだったらあり得る話です。1日誰とも会話をしないというのは、多くの方が経験していると思います。

「自分の業務範囲を決めてしまう」うえに、「情報を共有しない」ことで、人々はなかなかコミュニケーションをはかれず、「隣の人が何をしているか分からない状態」になります。チームにとっては「これで成果を!」と言われても、出るはずがありません。

・“上腕二頭筋トレーニング”(飲み会)の限界

昔だったら、いわゆる「上腕二頭筋トレーニング」、つまり「飲み会」ができたわけです。

経営学者である野中郁次郎先生の、1970年代「課長層のコミュニケーション特性」に関する研究によると、「低業績課長」と「高業績課長」を比較したときに、一番の差があるのは、方向性(オフ・ザ・ジョブ)の項目でした。(高業績課長は)部下と「仕事以外」でのコミュニケーションが多いということです。ここから「=飲み会」と導き出すのはやや暴論のような気がしますが、(たとえ効果があるとしても)現在のコロナ禍において、飲み会のようなコミュニケーションを仕事外で持つということは、なかなか難しいわけです。

また、こうした“ノミュニケーション”とは「日本人男性正社員=長時間労働をいとわない人にだけ奏功するコミュニケーション」でもあります。たとえば、育児や介護をしている人たちはどうなるのか? 時短や派遣の人はどうなるのか? 組織が多様化しさまざまな雇用形態の方がいる現代において、上腕二頭筋トレーニング的なコミュニケーション施策には頼れません。

組織では「コミュニケーション施策」や「情報のやりとり」をかなり意図的に仕掛けていかなくてはならない状況にあるのです。

・必要なのは、「仮説」ではなく「地に足のついたデータ」

また、少し前だと、コミュニケーションの現状に対しては、「関係の質」という言葉が導入されました。「関係の質を高めれば、思考の質が高まり、行動の質が高まるから、よって結果の質につながる」という、アメリカから輸入された概念です。

しかし実は「関係の質」という概念は仮説であり、実証されていません。組織行動論の教科書などによく書かれている「タックマンモデル」なども同様です。

輸入された仮説をいくら覚えても、実際にはあまり使えないと私は思います。私たちにもっとも必要な行動は何か? それを、地に足をつけたデータから導き出す必要があり、それによって原理原則を身につけていくこと。これが本書『チームワーキング』の挑戦でもあります。

③モチベ低い病

アメリカのギャラップ社の調査によれば、日本は、熱意あふれる社員割合が6%と、139カ国中では最低レベル(132位)です。日本は、働くことに意義やモチベーション、動機などが持ちづらい状況にあることがうかがえます。

2019年の厚生労働省の調査(「令和元年版 労働経済の分析」)によれば、エンゲージメントが高まるほど、個人や企業の労働生産性も上がっていることがわかっています。つまり、働きがいを高めていかなければいけないということです。このようなエンゲージメントや働きがいは、どのようにしたら高まるのでしょうか。一番簡単に思いつくのは、「給料を上げる」ことです。しかし、その効果はおそらく一瞬です。上げ続けることはできないうえ、給料が上がってエンゲージメントが高まる人は、金になびきやすいので、待遇の良い会社があれば、すぐに転職するでしょう。だから、給料を上げるのは、結構難しいのです。

・エンゲージメント向上のためには何が必要か?

では、給料を上げる以外に、エンゲージメントを高める方法はないのでしょうか?
『成長企業が失速するとき、社員に“何”が起きているのか?』※という書籍に、そのヒントはありました。

エンゲージメント向上のために必要なことは、①チームの一員だと感じること、②リーダーが従業員をにかけていること、③リーダーが変化の先頭に立つこと、④チーム内で情報を知らされていることにより、「可能性があると感じられること」「明確な焦点と期待が示されること」となり、こうしたことから高いエンゲージメントが醸成されると言及しています。

エンゲージメントや働きがいを上げる、つまり「モチベ低い病」を見直すために必要なのは、自分の「半径 3 メートルの職場・チーム」の見直しです。

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Ⅱ.ケースとデータで学ぶTeam Working

田中:

立教大学経営学部にある「データアナリティクスラボ」は、チームやリーダーシップに関する研究を行う組織です。本日は、我々が日々の研究で扱うデータをもとにしながら話を進めさせていただきます。

※編集部註:当日はここで書籍『チームワーキング』のGoal Holdingケーススタディー1つを使ったブレイクアウトセッションを実施。その後、田中氏による解説がありました。詳細は、上部の「セミナー映像」をご覧ください。

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Ⅲ.まとめ

中原:

本日は『チームワーキング』の一部をご紹介しましたが、大切なことは、「チームを動かすのは『リーダー』だけではない」、「すべての人々にチームを動かすスキルを!」という点です。

これからは、一体型の「餅型組織」ではなく、それぞれの粒が残って繋がっていても、信頼関係のもとで動く「おにぎり型組織」が求められます。ただし、まだまだ「OS(チームを見つめる見方)」がインストールされていないのが現状だと思われます。田中先生は現状をどう見ていますか?

まとめ
田中:

何となくズレている気がしていても、その原因に気づけない状態に、多くのニッポンのチームがあると思います。それを探る意味でも、本書が1つの素材になればいいのではないでしょうか。お互いに話し合う際に、管理職やメンバーだけではなくて、すべての人、たとえば、会社の新入社員の育成のところから、基本的な社会的スキルとして身につけてもらえると変わっていくと思います。

中原:

その通りですね。「Goal Holding」「Task Working」「Feedbacking」という呼び方がよいかはわかりませんが、こうした共通言語を持つことは大きな強みだと思います。皆さんのの職場やチームで「Team+Working」している状態をつくろうということですね。

冒頭で、コロナ禍はVUCAの極みと申し上げました。先行きの見えないなかで、この1~2年何が起こったかといえば、パーソル総研のデータによれば、「組織の一体感の低下」(36.4%)や「組織に貢献したい意欲・気持ちの低下」(25.6%)、「組織の帰属意識の低下」(24.8%)、「生活の満足度は高まるも……」(19.2%)とあり、他でもおおむね同様の傾向が見られています。つまり、コロナ禍で組織が揺れているのです。

テレワーク実施直後の変化

また、オフイスの解約も首都圏を中心に増えています。そういう意味でも、同じ人たちが、同じ時間に、同じ場所を共有するといった、「日本型」「昭和型」の働き方も変わってくるのではないでしょうか。リモートになるほど、遠心力が働くので、求心力となるものをインストールする必要があります。

ぜひ、皆さんで本書をお読みいただいて、議論していただければと思います。

チームを動かす技術は、学校では教えてくれません。引き続き、我々大学からも、教育を通じて優位な人材を社会に輩出していきますので、企業の皆さんでも実践していただければと思います。

田中:

学校では教えてくれないが故に、それぞれが自分のチームワークでの経験を基にした議論をしますが、実は、これが一番やっかいなのです。何故なら、それぞれがもっている経験が違うからです。だからこそ、「チームワークって、なんだっけ?」ということを、同じ共通言語を使って、認識をすり合わせることが必要です。その過程においては、ストレスがかかると思います。リーダーによっては、自分の目標設定の仕方がよくないと思う人もいるかもしれません。そうした、痛みやストレスを伴うかもしれませんが、このあたりで一度、話し合う時間をつくる必要があると思います。

中原:

面白いですね。たしかに、自分の職場で「チームワーク、どう?」なんて聞いたら、お互いの経験をしゃべり始めて、収拾がつかなくなることがあるかもしれません。

その点、書籍やケースの良いところは、現実から一度離れることができることにあります。書籍を通じた議論をして、最後は自分の職場に戻していくことができれば、良いOSとアプリの「再インストールの機会」になると思います。ぜひ、「昭和型」のチームワークのアップデートを、皆さんでやっていただきたいと思います。

本日は短い時間でしたが、また書籍の中でお会いできるのを楽しみにしております。ありがとうございました。

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