Opinion② 社会が変わり、学びが変わるソーシャルメディアの情報革命
さまざまなモバイルツールやソーシャルメディアが登場している現在。情報技術を利用した学習環境のデザインに関する専門家で、産学協同のプログラムに多数かかわる東京大学情報学環の山内祐平准教授は、これらのツールを用いたソーシャルラーニングによって、自律的かつ持続的な学びが可能になるという。ソーシャルラーニングによる“学び”と学習環境のデザインについて聞いた。
従来のネットワークと何が違うのか
現在、インターネットの急速な発展により、さまざまなソーシャルメディアのツールが登場し、新しい学習の形が生まれつつある。
ただし、電子掲示板やメーリングリスト、グループウェアといったオンラインで情報共有するツールは、すでに1990年代から企業で活用されてきた。これらの電子ネットワークと、現在のソーシャルメディアの大きな違いは、“開放性”にある。
従来のツールは、企業内の閉じられた空間の中で用いられるものだった。一方ソーシャルメディアはオープンなプラットフォームであり、企業の外側と社員がつながって学習することが可能になる。この開放性をどのように学習に活かすかということが、ソーシャルラーニングにおける最大のポイントといえるだろう。
では、ソーシャルラーニングにおける“学び”とは何か。多様な形があるため一概にはいえないが、1つは知識を得る“学び”だ。業界情報や問題解決方法、研究結果などを知ることがそれに当たる。
しかしより重要なのは、自分とは異なる領域の人から、問題に対峙する際のパースペクティブ(観点、物事の見方)を得る“学び”である。
他者のパースペクティブは、自分と違う場合も同じ場合もある。自分と異なれば、イノベーションにつながる学びが得られる。反対にパースペクティブが自分と同じ場合は、対話が生まれ、より細かい情報を交換することで知識が得られる。いずれにせよ、開放的な空間で自分とは異なる領域に属する人に出会い、学び取っていくことがポイントなのである。具体的な学習例を紹介したい。
半開放型のネットワークにおける学習
私は、ベネッセコーポレーションと共同でBEAT(東京大学大学院情報学環ベネッセ先端教育講座)という、モバイルメディアの教育利用について研究するプロジェクトを推進している。2010年からは、高校生と大学生・社会人をソーシャルメディアでつなぎ、キャリア学習を支援する「Socla(ソクラ:ソーシャルラーニングプログラム)」を実施してきた。2011年のプログラムの概要は図表1の通りである。