MOT推進各研究機関の取り組み ④早稲田大学ビジネススクール 大学院こそ技術革新を牽引する 人材の育成が可能な場だ

「高度専門職業人の養成に4剞匕する」という方針を打ち出し、実学中心の教育を進める早稲田大学ビジネススクール。日本企業を変革し再生するには「経営戦略」「アントレプレヌールシップ」「技術経営」が不可欠との認識から、従来のMBAプログラムに加え、本年度よりMOTプログラムを開講させた。技術を戦略的にマネジメントする人材の育成にいち早く乗り出した同校の取り組みについて、ビジネススクールの責任者である松田修一氏に話を聞いた。
技術を背景としたマネジメント能力の育成
本年度より早稲田大学大学院アジア太平洋研究科修士課程国際経営学専攻は、早稲田大学ビジネススクール(経営専門職大学院) として、[ 高度専門職業人の養成に特化する]実学中心の教育をスタートさせた。
停滞する日本経済の、そして日本経済を牽引する日本企業を変革し再生するためには、「経営戦略」「アントレプレヌールシップ(起業経営)」「技術経営」が必要である。そこで早稲田大学ビジネススクールでは、それぞれに専修を設け目標とする人材像を明確にするとともに、産学連携を重視した教育・研究を基本に高度職業専門家支援のための教育体系を具現化した。
そのため、従来の経営管理(MBA)プログラムに加え、「技術を戦略的にマネジメントする能力」を育てるべく「技術直結型ビジネスモデル」を意識した技術経営(MOT)プログラムを新設。 MOTでは、最先端技術の商品化・事業化、生産システムの革新など、技術を背景にしたマネジメント能力を育てることを目的とし、講義スケジュールを金曜日と土曜日に集中、仕事を続けながら修士号の取得を目指すことも可能とした。また、1 年で修士の学位を取得できるコースも用意した。
MOTプログラムを新設したといっても、そもそも早稲田大学アジア太平洋研究センターの前身は1956 年に創設された生産研究所である。敗戦後の日本経済再生のために生産テクノロジーをいかに日本企業に広めていくかを目的に、ミシガン大学と提携して誕生した。産学連携を重視した技術経営に関する教育・研究は組織創設以来のテーマだったのである。
60 年代半ば以降になると、企業事例のケース研究が増加し、企業に対するコンサルティング活動を行うなど、ビジネススクールとしての色合いが濃くなった。 74年にはシステム科学研究所に名称変更し、以来ビジネススクールとしての活動を行っていたのである。98 年に大学院アジア太平洋研究科がスタートし、MBAプログラムが発足した際にも、生産経営システム設計などのオペレーションマネジメントの授業科目を設けるなど、モノづくりに対する研究、教育にはずっと力を注いできた。
日本企業の躍進の源泉は、モノづくりにある。いま、個人預金の10 % が市場に回るような金融システムが構築されれば、日本経済は浮上するという論が浮上している。確かに理論上ではその通りだ。しかし、それは机上の空論に思えてならない。日本はモノづくり立国であり、モノづくりにこそ日本再生の鍵がある。
現在の花形産業である半導体にしろバイオにしろ、日本企業が先鞭をつけた技術は多々ある。ところがその技術を速やかに事業化できなかったために