MOT推進各研究機関の取り組み ③企業研究会 技術経営塾 技術経営の実践は40歳から。 現場の泥臭い経験が学習の基礎になる

2003年度で12期を迎える社団法人・企業研究会の「技術経営塾」は、企業の最前線で一定経験を積んだ研究・技術開発マネジャーが、MOTの体系的な学習を積むと同時に、お互いが持つ経験や知恵を共有し、相互研さんする場だ。R&D の視点からだけでなく、企業経営の立場から技術マネジメントのできる人材を養成、最終的に経営の担い手となる人材輩出にも実績を上げている。
経営・技術の両面に精通するプ囗は育成可能か?
社団法人企業研究会の「技術経営塾」は1992 年にスタートし、今年度で第12 期目を迎えた。[技術経営] という言葉を使ったのは、日本では私たちが最初ではないだろうか。塾長の植之原道行氏( 多摩大学名誉教授、元NEC代表取締役)と、山之内昭夫氏(元大東文化大学教授、元キヤノン理事・技術開発センタ所長)、そして私(元ブリヂストン取締役・研究開発本部長)の3人で立ち上げ、現在に至る。
対象は企業の研究・技術開発マネジヤーとスタッフであり、約30 人を定員としている。年間全12 回のなかで講義および事例研究、課題発表を行い、うち2回は1 泊2 日の合宿研修である。合宿以外は午後1時半から5時まで東京都内の会議室で行う。最後には、修了論文を提出願っている。
技術経営塾を始めた当時の問題意識は現在と全く変わらない。若い人たちが成し遂げた研究開発上の成果を、いかに企業経営上の成果に結びつけるかである。単に技術の視点からだけでなく、経営戦略と密に整合のとれた、企業経営の立場から技術マネジメントを行うこと――それが研究・技術開発マネジャーの役割であり、そのような人材を養成することが技術経営塾の目的である。
一般にMOT教育の目的とは、「経営と技術の両方がわかる人を育てることである」といわれるが、私見だが、そんなスーパーマンのような人材を育てるのは不可能ではないだろうか。ソニーの井深大氏と盛田昭夫氏、ホンダの本田宗一郎氏と藤澤武夫氏の名コンビからもわかるように、技術に深く通じた人物と経営に長けた人物の両雄並び立つ企業が成功を手にしている。
一言で「技術がわかる」と言っても、その奥は深いのだ。技術は日進月歩で変わっていくため、そのすべてがわかる人は望めない。ただ、専門家ほど詳しくはわからないにせよ、経営戦略との関係で技術の素性と将来の発展性が直観的にわかる人、つまり技術と市場の相関を読める人材がMOT には必要である。
もう1つは、自社のR&D に加えて社内外の既存技術を有効に活用し、どのように企業経営に役立てるかという発想がMOTには欠かせない。大学との連携や、他社との戦略的提携やM &A といった経営手段も必要となる。こういったことを考えられる人材がMOT の担い手となるべきである。
技術経営の「基礎」について実体験と実例で学ぶ
技術経営塾の目指すところは次の3点である。