失敗のケースを分析する4 リストラの失敗 残すべき人材を見極め、 残した人をいかに活用するかの 視点が不可欠だ

失敗のケース
業績低迷を脱するべく、人件費削減を狙いに全社員約1万人のなかから勤続15 年以上の社員を対象とした2,000 名の早期退職を募った電機メーカーG社。退職に当だっての条件は、最大で給与の24ヵ月分を退職金に上乗せするというもの。一昨年の12 月に従業員に告知し、昨年の2月から3月にかけて募集を受け付けるという予定であった。
2月に入り募集を開始したところ、受け付け開始と同時に定員をオーバーする2,380 人が申し込み、急きょ、その日のうちに募集を打ち切ることに。しかし問題は、今後、A社の中核を担うべき人材として嘱望されていた30 代の優秀な社員が、予想をはるかに越えて多く辞めていってしまったことであった。特にG 社の生命線とも言える開発部門から優秀な社員がごっそり辞めてしまい、次年度の新製品開発が滞るという事態も随所に発生。
結局、人件費の削減効果はあったものの、いまだ業績低迷からは脱せていない。
分析
日本式の「網ですくう」リストラは非効率的
日本で「リストラ」と呼ばれているものには3 種類ある。それは、①希望退職制度、②早期退職優遇制度、③解雇、である。それぞれは本来全く違うものであるにもかかわらず、往々にして混同されており、このG社でも違いをよく理解していないようだ。
解雇については、日本の法律においては解雇権の濫用が厳しく規制されているので、大企業ではリストラの手段としては行われず、人減らしの目的では期間限定、人数限定で年齢制限などを設けた希望退職制度がしばしば用いられる。一方、早期退職優遇制度は定年前に退職を希望する社員に対して退職金の割り増しなどの優遇措置を図るもので、キャリア支援策の一環として行われ、期間を限定することなく1年中、早期退職者に適用されるものだ。
今回のリストラ策が失敗した理由の第1は、G社のリストラ制度自体の欠陥であり、第2はリストラの目的と手段の履き違え、そして第3は、優秀な人材をどのように残し、どのように生かすかという視点が欠けていたことである。