連載 リード・マネジメントで、組織を変える! 第2 回 強く有能な部下、弱く仕事ができない部下

今回は仕事の遂行上、強く有能なピークパフォーマーと、そうではない人の違いを明らかにしながら、ピークパフォーマーを育成していくためのリードマネジメントの考え方について明らかにしていくことにしたい。
強く有能な部下と弱い部下を分ける決定要因

私は19年前にコンサルティング会社を設立して以来、あらゆる業種・業態の企業で、19万人を超える人の研修を担当してきた。また「戦略的目標達成プログラム『新・頂点への道』」という自社の公開講座も、1 万6,000 人もの人に受講いただいている。
私どもでは、強く有能な典型的な部下を「ピークパフォーマー(高度達成者)」と呼び、3年間をかけて育成していくその研修の中で、人が本来の資質を開花させ、強くなり、ピークパフォーマーへと育っていく姿をずっと見守ってきた。
そこで思うのは、人というのは当然ながら、一人ひとり個性も違えば、持ち味も違うということであり、人間としての価値は、何を切り口にしてみるかによって、存在価値もそれぞれであるということだ。
もともとは、中学校の体育の教師をしていた星野富弘さんという方がいる。クラブ活動の指導中に、過って頚椎を損傷してしまい、首から下の自由を全くなくしてしまった。それは体育の教師という切り口から見れば、その存在価値はないに等しい。だが星野さんは、以後口に絵筆をくわえ、主に花の絵に詩を添えて作品を発表し続けている。その詩画は本となって出版され、何冊もベストセラーとなり、群馬県勢多郡東村にある「富弘美術館」では、1991 年の開館以来514 万人という方々が訪れ、その作品から深い慰めと勇気を与えられているのである。つまり星野さんは、アーティストという切り口で見れば、他の人には換えられない付加価値を持っていることになる。
つまり人間の価値というものは、どの切り口で見るかによって違うだけで、誰であろうとも、その人に対し価値がある、価値がない、などと軽はずみなことは決して言えないということだ。だが、一つ明確に言えることは「仕事のできる強く有能な部下」と、「仕事のできない弱い部下」は存在する。仕事が正確で速い、これは有能な部下であろう。だが、仕事のミスが多く、また、時間や期日を守れない部下は、仕事の能力が低いという見方をされることになる。
つまり私は、企業側から見た人材、あるいは仕事という切り口において相対評価で物を言っているのであって、仕事も各人の絶対評価でよしとするという考えがあるならば、これから私が述べようとすることは、根底から覆されてしまうことを先にお断りしておきたいのである。
さて、そこでここからは、強く有能な部下と弱く仕事ができない部下を分ける決定要因というテーマに入っていこうと思う。
まず、能力開発という観点から見れば、人は2通りに分類できる。つまり、自分の心で思っていること、思考していること、イメージしていることを、実現できる人と、それができない人の2通りである。
組織の中で有能と言われる人は、たいがい自分の思いどおりに目標達成していく。それは自分の求めるものが明確であり、その計画が具体的であり、それを成し遂げるための行動が伴っているから達成できるのである。私はその力を「考動力」と呼んでいる。つまり、有能な部下というのは、「戦略思考」的に、たえず物事をゴールから逆算して考え、行動できる人であるのに対し、仕事のできない部下というのは、最終的な目的・目標の着地点が見えない人だと言えるだろう。着地点が見えないのだから、その行動は曖昧で、具体性を伴わずに分散するのは当然である。