連載 リード・マネジメントで、組織を変える! 第3 回 職場環境改善・成功に向かう4 つの道
リード・マネジメントとは、アメリカの精神科医ウイリアム・グラッサー博士が提唱する「選択理論」をもとにした、上質な人間関係によって組織目標を達成するための効果的なマネジメント手法である。今回は、そのリード・マネジメントの手法を駆使して、組織人として企業の業績を生み出し、職場環境を改善していくための重要なテーマについて述べていきたい。
スキルとしての人間関係技術
社員を取り囲む職場環境の問題には、当然ハード面でのオフィス環境があり、業界、仕事の内容、会社の評価システム、そういったソフト面でのトータルなシステム環境も含まれる。
だが、それらの重要なテーマの中でも、とりわけ重要なのが、上司や管理者といったマネジメントに携わる人間が、スキルとしての人間関係技術を持ち合わせているか、いないかの問題がある。今回は、そのマネジメント的側面を、以下の4 つのテーマにしぼって述べていくことにしたい。
第1の道 「愛と所属」
まず第1は「愛と所属」である。
昨今、職場では「うつ」が非常に大きな問題となっている。警察庁によれば、2005年の自殺者は8年連続3万人を越え、3 万2,552人と報じている。その自殺者の75%近くは「うつ」であり、このうち、労働者(被雇用者)は8,312名と約25%強を占めている。
私は、この問題の背景として、上司や管理者のマネジメントスキルそのものが、経済的合理性を追求することを前面とした、至上目的型、至上目標型であるがゆえのことだと思っている。それは人間関係を犠牲にして、経済合理性のみを追求していくマネジメント手法である。欲しいものを手に入れるためには、脅かそうと、威圧しようと、罰を与えようと、時には灰皿をぶつけようと、蹴りを入れようと構わないといったボス・マネジメント型スタイルといってもよい。
B to B(ビジネス・トゥ・ビジネス)といった、法人を対象として営業展開をしている企業の中にも、マーケティング手法としてのプル戦略(引き込み型)と、プッシュ戦略(対面営業型)がある。一方、B to C(ビジネス・トゥ・カスタマー)といわれる個人を対象として営業展開を図っている企業の中の、とりわけプッシュ戦略を基盤とした組織には、ボス・マネジメントがよく見受けられるようである。わかりやすく表現すれば、それはいわゆる成果主義と称したノルマ制度を導入し、人海戦術的アプローチをとっている会社ほど顕著であるということだ。
以前、ある保険会社の営業職員が私のところに来てこんなことを言った。
「青木先生。先生が常日頃教えてくださっているリード・マネジメントを、私どもの拠点長にも教えてやってもらえませんか。先日、その拠点長が会議の中で、『自爆でも何でもいいから契約を持ってこい!』とこう言うんです。ひどい話です……」
このように、こぼしたのである。