Trend 若手育成の課題と対応策の現状 相手に合わせた丁寧なコミュニケーションで 若手のやる気を喚起する
景気回復を受けて大量採用に転じた日本の企業だが、“いまどきの若者”に戸惑いを隠せないでいる。
一昔前に比べて若者の気質が変わってしまったのか。
それとも、これまで長期にわたった採用抑制で人を育てる仕組みが崩壊してしまったのか。
現在の日本企業が抱える若手人材に関する課題と、それに対する対応策の現状について探った。
素直で真面目。でも、挨拶も返事もしない
「素直。言われたことはきちんとやる。真面目です。扱いにくい?
とんでもない。むしろ人なつっこい新人が多いですよ」
長年にわたって多数の企業で研修を手がけてきたHRMコンサルタントの入谷亨氏は、主に入社1年~3年めにあたる“いまどきの若手”について、このように語る。入谷氏は18年にわたって、全国のさまざまな業種、規模の企業の新人を見てきた。今、人事・教育担当者の多くが、若手について感じている課題とは何だろうか。
「ひとつは基本的な生活態度。そこを教わらないまま、現在まで来てしまったような若手が多いとの印象を受けます。他人に対する気遣いや想像力が働かないのです」
たとえば最近、某大手企業の中間管理職からこんな話を聞いたという。
「若手の部下に、報告書をつくっておくように言い置いて出張に出たそうです。すると部下から『報告書をつくったので見てください』と携帯電話のメールに連絡が入りました。そして、そのメールにはQRコード(縦と横の2方向に情報を記録できる2次元コード)が……。なんとその部下は、膨大な報告をQRコードにして送ってきたのです。受け取った上司が読みにくいかどうかなど、考えてはいません。むしろいいことを思いついたと思っているのです」
加えて、モラル、マナーの低下も深刻だと、いずれの教育担当者も嘆いているという(図表1)。
「たとえば、ここ2、3年、大手企業、中小企業を問わず目立っているのが、返事ができない新人が増えているということ。研修で『わかりましたか?』と聞いても『はい』と答えが返ってくることはあまりありません。目の前に立って、『わかったら、返事をしなければいけませんよ』と言うと、やっと『うん、うん』とうなずく。明らかに返事をしなさいと教えられてきていないのです」
理解力は高いが主体性に欠ける若手
しかし、彼らは特別な存在ではない。普通に学生生活を送り、普通に入社してきた“普通の新人”だ。
「繰り返しますが、最近の若手は理解力が高くて素直。だから、教えたのにできていない時は、『できてないよ。こうしなさいって言ったはずだよね』と叱ると、素直に『ごめんなさい』と謝りに来ます。ただし、事前に教えていない内容について叱ると、『そんなこと言われてないよね』と集団で拒絶してしまう。こんなこと教えなくてもわかるだろうと思うようなことでも、同じような反応が返ってきます」(入谷氏)
このような基本的なコミュニケーション力の問題に加え、多くの人事・教育担当者が挙げるもう1つの問題が「主体性の欠如」だ。