EXTRA CASE 調査レポート CDC 大学生の活動調査から 学生時代の過ごし方がキャリアをつくる ~社会人基礎力の育成ポイント
会社に入って同じスタートラインに並んだように見える新入社員だが、いざ始まってみれば、個人の仕事遂行能力に大きな違いが見られるという。
人事・採用業務経験者からなる有志のキャリア支援・研究団体「CDC」は、その原因を探るため、学生時代の過ごし方に着目して調査を実施した。
CDCメンバーであるワークナビ研究所の高橋浩氏に、その調査結果についてレポートしていただいた。
学生時代の活動が個人能力に大きく影響
我々CDCは、主に人事・採用業務経験者からなる有志のキャリア支援・研究団体であるが、最近の新入社員について、入社当初は要領よく元気に働いていたのに、数年後から伸び悩み、元気がなくなる層が存在するように感じていた。反対に、入社当初はそれほどでもないが、次第に成長のスピードを上げていく者もいる。その差は明らかに、専門知識や学業成績によるものではないように思われる。
では、この差はどこから来るのであろうか。
我々は今回の調査に先駆け、入社5~6年めの若手社会人19名に対して、「現在の仕事において役立っている能力は何か」「それはいつ習得したものか」を尋ねてみた。その結果、多くの者が、対人関係力や課題遂行力などの社会人基礎力に相当する能力を、学生時代のゼミ活動や課外活動、アルバイトなどで習得していることが確認できた。入社後数年間に発揮される主な社会人基礎力は、どうやら学生時代に習得されているようである。
このことから、学生時代にある程度の社会人基礎力を習得しておくことは、社会人(職場)への円滑な移行と、その後の職務遂行に有効であると思われる。しかし現在の大学教育は、その機能を十分に果たしているのであろうか。
いくつかの大学では、すでに社会人基礎力を意識した教育プログラムを展開し始めている。
武蔵野大学の「SPARKLE」という教育プログラムは、バーチャルカンパニーの体験学習を行っており、学生自ら企画・運営・実施・検証を行っている。また、慶應義塾大学のプロジェクト型授業では、企業の関係者と大学の教員・学生がチームを組み、1年間にわたって課題の解決に向けた検討を行い、企業側から評価を受けている。いずれも、実践的な体験学習を試みており、1つの有効な方法といえる。
しかし、単に体験学習をさせればそれでよいのであろうか。
毎日コムネットが、大学卒業後5年以内の若手社会人1380名を対象に2006年に行った、大学時代の課外活動経験(クラブ・サークル経験)が就職後の仕事に対する意識等に与える影響について調査した結果によると、課外活動に積極的に取り組んだ人ほど、仕事上の人間関係にポジティブで自己肯定的であり、社会人基礎力が高いということが示された。しかしこれは、課外活動に積極的なグループと非積極的なグループの比較をしたわけで、課外活動だけが社会人基礎力に対して有効であることを示すものではない。むしろ、活動に対する取り組み方が積極的であったことが社会人基礎力に影響していると捉えるべきである。
したがって、たとえ職業体験のような実践活動を行ったとしても、取り組み方によっては社会人基礎力が形成されない恐れがある。その点を考慮すると、社会人基礎力を育成するために有効な活動の取り組み方を明らかにするべきであるが、この点についてはまだ十分な研究がなされていない状況である。そこで我々CDCは、大学生の学業・課外活動・アルバイトといった活動に着目して、これらに対する取り組み方と社会人基礎力の関連を分析し、有効な育成ポイントを明らかにすべく調査を行った。
企業が求める社会人基礎力
そもそも社会人基礎力とは、経済産業省の「社会人基礎力に関する研究会」が提唱する概念であり、「職場や地域社会の中で多様な人々とともに仕事を行っていく上で必要な基礎的な能力」のことである。もう少し平たく言うと、どのような仕事においても共通して必要とされる基礎的な力といえる。具体的には、図表1に示すような3つの力と12の能力要素からなっている。
この図表を見ていただくとわかるように、社会人基礎力は取り立てて新しい概念を提示しているわけではない。重要なのは、このような当たり前の能力をあえて明示し、意識的に育成しなくてはならない時代が来ているということである。職場では、採用した人材が手取り足取り指示をしないとほとんどまともに動いてくれない、あるいは、指示したことしか行わず、目的に応じて必要なことを考えて動いてくれない、といった問題を抱えているのではないだろうか。