企業事例 ダイエー 従業員視点での自律的キャリア開発を促す 社内公募制度
キャリア開発を行ううえで、重要なのは本人の“やる気”をどうやって育て、尊重していくかである。ダイエーでは2003年より同じ職階であれば契約区分を変更できるCAP制度を導入。
この制度により、挑戦する風土と個の力を伸ばす文化を醸成してきた。そして満を持して2007年度、3年ぶりに社内公募制度を再開。
雇用形態を問わず、“やる気”のある人材に大きく門戸を開き、フルオープンで行われるこのユニークな公募制度について取材した。
同一労働・同一賃金が契約形態の基本
1990年代後半から業績低迷が続いていたダイエーは、2004年に産業再生機構からの支援が決定し、その後着々と再建の道を歩んでいる。2007年3月にはイオン・丸紅との資本・業務提携を締結し、同年5月に「ダイエーグループ新中期経営計画」を発表。かつて業界を牽引したリーディングカンパニーは、名実ともに新たな一歩を踏み出したといえる。
再建の柱の1つとなるのが人材戦略である。リストラクチャリングの過程で中断していた従業員のキャリア開発を再開すべく、プログラムの再構築を開始。これまで以上に個々の従業員に焦点をあてたCDP(キャリア開発プログラム)が行われている。
ダイエーの人事制度の根幹を成し、キャリア開発の基盤ともなるのが「CAP(Contract of All Partner)」と呼ばれる契約区分制度だ(図表1)。
ダイエーに限らず、小売業は労働集約型の形態である。社員のみならず、パートタイマーやアルバイトなど、多様な働き手を受け入れながら利益を生み出す構造になっている。CAP制度は、これら多様な従業員に対し、「同一労働・同一賃金」とするために考えられた枠組み。同様の職務をこなす従業員に対して、パートタイマー・契約社員・正社員の契約区分にかかわらず、同等の処遇(職務・職位・給与等)を行うことを目指している。
それでは具体的に、CAP制度の内容を見てみよう。ダイエーの従業員はその契約区分ごとに、アクティブキャップ(パートタイマー)、キャリアキャップ(契約社員)、ゼネラルキャップ(正社員)、プロフェッショナルキャップ(嘱託社員)の4つに分かれている。それぞれの区分で階層が分かれており、たとえばアクティブキャップではA1~A5、キャリアキャップではC3~C5、ゼネラルキャップではG3~G7、そしてその上の管理職であるM職と区分されている。この中でA3とC3とG3といった数字が同じ職階にいる者は、同様の業務に配置され、同一の価値を生み出すとみなされる。そのため、処遇についても時間給と月給の違いこそあるものの、ほぼ同じ額が支給される。
そしてこのキャップは、本人の希望ややる気により、双方向に変更できるのも大きな特徴。事実上、契約区分の垣根がなくなるため、パートタイマーから契約社員、契約社員から正社員といった契約区分の変更も容易になる。CAP制度という名称には、あたかも「帽子(CAP)をかぶり替えるように契約区分を変えられる」という意味も込められているのだ。
この制度により、たとえば子育てを終えたパートタイマーが、それまでの経験を活かして社員に契約変更することが可能になる。ダイエーがこの制度を本格的に稼働し始めたのは2003年4月から。労使双方にとって柔軟かつ効率的な勤務形態として定着しつつあるという。
ちなみに、ゼネラルキャップにG2以下がないのは、新任パートタイマーの時間給をそのまま月給に換算した処遇だと、人材の確保が難しいという理由からである。