巻頭インタビュー 私の人材教育論 基本の徹底と、ブレないDNAが 組織の成長と変化を支える
今年創業90 周年を迎えたスーパーマーケット、成城石井。
おいしさや品質にこだわった品揃えが、消費者の高い支持を集め、店舗数を着実に増やしている。
そのこだわりを実現するのが、調達から製造、物流まで、ほぼ自前で行う独自の仕組みであり、それを支える人材だ。
同社の人材育成方針について、原社長に聞いた。
豊かな食生活を提案できる集団に
―貴社の経営理念と、理念を実現する人材の育成について、お考えをお聞かせください。
原
「食にこだわり、豊かな社会を創造する。」、これが成城石井の経営理念です。おいしさや品質にこだわった本物の味をお客様に提案するために、日本全国や世界中を歩き回り、独自に商品を開発し、お求めやすい価格で提供していくための努力を続けています。
そうした理念を実現する人材像を一言でいえば、「プライドとホスピタリティを持って、お客様のためにチームで仕事をし成果を上げられる人」です。もちろん、スーパーマーケットですから、お客様志向を持った人材が不可欠です。お客様に成城石井の価値を伝えると共に、豊かな食生活を提案できる集団をつくっていきたいと考えています。
そうした集団であり続けるために、2009年から、当社の経営理念や信条をまとめた「成城石井BASIC」という小冊子をパート・アルバイトも含めた全ての従業員に配布しています。常に携行し、日々の業務で判断に迷った時などに読み返し、会社の進む方向とベクトルを合わせてほしいと考えています。また、店舗での会議や朝礼・夕礼の際には、「成城石井BASIC」の内容に照らして、各自が取り組んでいることを発表するといった活用もしています。
現場では、日々予想外の出来事が起こります。マニュアルだけで全てを解決することはできません。その時々で自分で考え、判断するための基準となるのが「成城石井BASIC」なのです。
株主が変わっても軸はブラさない
─貴社の歴史を振り返ると、オーナー企業からスタートの後、4回株主が変わっています。
原
お客様からは、「大きな変化の中で、スタイルを変えずに成長できたのが不思議だ」とよく言われます。もともと私たちは、お客様の目線に立ち、ご要望に応えながら成長してきた会社です。しかし、株主がオーナー経営者から企業に交替した時に経営方針が大きく変わり、急激な多店舗展開を行うことになりました。人の育成が追いつかず、一時的に離職率も高まりました。商品へのこだわりも後回しになっていたかもしれません。結果としてお客様も離れてしまい、業績を著しく落とすという経験をしました。
その時に強く感じたのが、私たちにとって最も大切なのは、お客様に喜んでいただくことであり、何があってもそれを軸に据えていかなければならない、ということでした。株主が変わるたびに経営の方向性が変わるようでは、社員は不安を感じますし、お客様にも当然ご迷惑をおかけします。そこで、成城石井にとって大切な軸をブラさないために、2008年に作成したのが、「成城石井BASIC」だったのです。それ以来、株主が変わっても、方針は変わらずにやってきています。
当時は非常に厳しい時期でしたが、あの経験があったからこそ、組織として強くなることができたと思います。