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未来を切り拓く経営
人的資本と健康経営が生む価値共創を考える

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現代の経営において、従業員の健康は企業の持続的成長に不可欠です。しかし、従業員を「守る」ことを超えて、人的資本としてのその価値を最大化し、組織全体の成長と発展に活かす戦略的な取り組みこそ、真の健康経営と言えるのではないでしょうか。人的資本経営と健康経営が如何にして企業の競争力を向上させ、充実した職場環境を創出するかについて、慶應義塾大学の岩本隆教授と株式会社ルネサンス執行役員の樋口毅氏にお話しいただきました。

こんな方におすすめ

  • 人的資本経営や健康経営の推進を担われている方
  • 人事部門のマネージャーや担当者、特にエンゲージメント向上に関心がある方
  • サスティナビリティ経営やその推進を担われている方

登壇者プロフィール

樋口 毅(ひぐち つよし)氏

株式会社ルネサンス 執行役員 健康経営企画部 部長/健康経営会議実行委員会事務局長/NPO法人健康経営研究会理事

岩本 隆(いわもと たかし)氏

慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

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第1部

未来を拓く経営 人的資本と健康経営が生む価値共創を考える
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第2部

人的資本経営と健康経営
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第3部

クロストーク(質疑応答)
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Ⅰ.未来を拓く経営 人的資本と健康経営が生む価値共創を考える

樋口 毅氏 株式会社ルネサンス 執行役員 健康経営企画部 部長/健康経営会議実行委員会 事務局長/NPO法人健康経営研究会 理事

私は、15年ほど前から健康経営を社会実装するための仕事をしています。ルネサンスに籍を置く前から、健康経営🄬の登録商標を持つNPO法人健康経営研究会の活動を支援しており、経済産業省が健康経営優良法人認定制度を立ち上げてから今日に至るまで、本制度の普及啓発を支援させていただいています。今日はそうした健康経営を推進する立場から、①健康経営の現状、②健康経営とは何か、③健康経営と人的資本経営(人財視点)、④健康経営と人的資本経営(人材戦略)という大きく4つのテーマについて、お話ししたいと思います。

●健康経営の現状

・多様な団体が連携して健康経営を推進

まず、健康経営の現状についてです。経済産業省の主導により、現在では多くの企業が健康経営に取り組むようになっています。従来、健康というテーマは主に厚生労働省が推進する領域でしたが、経済産業省が主導して、企業の業績や企業価値の向上を視点にして取り組んだことが社会に浸透したポイントだと思います。

現在は、健康政策に関わる関連省庁との連携が進んでいますし、健康経営優良法人の認定主体でもある日本健康会議を中心に、経団連、経済同友会、日本商工会議所といった経済団体、そして日本医師会など医療に関わる団体が本会議に参画し、健康経営を後押ししてくれています。

・様々な顕彰制度においても申請数で存在感を示す

国が推進する様々な顕彰制度がありますが、そのなかでも健康経営は非常に大きく取り上げられています。健康経営に取り組む企業は確実に増えており、こうした顕彰制度のなかで申請法人数はもっとも多くなっています。

まず、大規模法人部門の健康経営については申請、認定件数ともに確実に増えており、令和5年度は、3,523社が申請をして2,988社が認定を受けています。

健康経営優良法人のなかでも特に優れた取り組みをしていることを顕彰する「健康経営銘柄」を取得されている企業を見ても、様々な業種で健康経営に取り組む企業が増えていることが実感できます。実際、9割以上の業種において健康経営の取り組みが増加しており、直近では、保険業、精密機器、建設業といった企業において増加傾向が見られます。

また、都道府県レベルの大企業に占める申請企業の割合を見てみると、東京に集中してはいるものの、上位5県に挙がっている山梨、奈良、島根、高知、大分の各県の企業では、自治体との連携も相まって取り組む企業が増えてきています。

現在、上場企業3,932社のうち、健康経営優良法人の申請を行う企業は1,200法人を超えており、既に上場企業の30%が参加している状況です。健康経営が始まったばかりのころは、一部のイノベーター(革新者)やアーリーアダプター(初期採用者)の取り組みだったものが、現在はアーリーマジョリティ(前期追随者)を超えていて、これからはレイトマジョリティ(後期追随者)にまで広がっていくことが十分に予見されます。つまり、上場企業にとっては健康経営に取り組むことが当たり前になりつつあるという状況になっています(図表1)

図1 健康経営が、上場企業では当たり前の経営に
図1 健康経営が、上場企業では当たり前の経営に

・中小企業にも着実に取り組みは広がる

国の顕彰制度は、どちらかというと上場企業や大企業向けのものと感じる方も多いかもしれませんが、健康経営は大企業だけではなく、中小企業にも着実に取り組みが広がっています。2023年度の申請者数は1万7,000社を超え、認定企業も1万6,000社を超えており、毎年着実に2,000社以上の認定・申請が増加しているという状況が見られます(図表2)

図表2 健康経営のひろがり
図表2 健康経営のひろがり

健康経営に取り組む中小企業の特徴としては、建設業、製造業、運輸業のような人手不足の業態でも申請者数が増えていることも挙げられます。都道府県別に見ても、すべての自治体において着実に実施率が増えています。東京や首都圏で増えているわけではなく、広島、鳥取、宮城といった地域で、自治体の普及活動や各地域の商工会議所や協会健保とのパートナーシップとも相まって、健康経営の取り組みが推進されているのです。つまり、健康経営は一部地域の上場企業だけではなく、中小企業も含めて全国的に広がっています。

また、健康経営優良法人の認定制度とは別に、健康保険組合とのパートナーシップのなかで「健康宣言」を行う企業もここにカウントされております。現在、すでに約22万8,000社の企業が健康宣言を行い、さらに、健康宣言を行う企業は、2025年までに50万社が見込まれ、目標自体が上振れしています。

大企業に限らずに、健康経営に取り組む企業が増えているという現状がご理解いただけるのではないかと思います。

●健康経営とは

・スタートから10年間の変遷

さて、2014年にスタートした健康経営は、この10年間でどのような変遷が見られるのでしょうか(図表3)。健康経営が立ち上がったころの社会課題は、医療費の適正化でした。よって、健康経営が始まってからしばらくの間は健康保険組合とのパートナーシップによる「コラボヘルス」という形で、拡がっていきました。

図表3 健康経営施策の10年の変遷
図表3 健康経営施策の10年の変遷

それが2018年度以降になると、働き方改革がテーマになり、このタイミングでは過重労働やメンタルヘルス疾患といった、働くことによって起こる健康問題を改善していくための健康管理というテーマで広がりを見せるようになりました。なお、この期間はコロナ禍とも重なっています。そして2020年度以降になると、人的資本経営という考え方が企業の間に広がるのに合わせて、健康経営という概念も、人的資本経営や人材開発までをカバーするようになっていきます。

この10年間で、健康経営の取り組みはメディアにも多く露出したことから、その認知度も高まりました。インターネット上でも「健康経営」というキーワードは、「人的資本」や「女性活躍」よりも多く検索されています。その理由としては、先述のとおり健康経営の取り組みが上場企業だけではなく、中小企業にも確実に広がってきているということ。その結果、有価証券報告書の人的資本の開示が義務化されていない中小企業においては、人的資本経営よりも健康経営というキーワードの方が身近に感じられているからではないかと考えられます。

今後は、中小企業への普及啓発も含めて新たなマーケットの創出に取り組んでいくこと、さらには取り組みの可視化と質の向上により、日本の文化として定着したものを海外へ向けて発信していくことが、健康経営の取り組みの延長線上に描かれつつあります(図表4)

図表4 健康経営の目指すべき姿
図表4 健康経営の目指すべき姿

・労働市場への影響度も高まる

健康経営の普及は、労働市場にも大きく影響しています。2023年9月に経済産業省と日本経済新聞社が、就活生600人と転職者300人を対象に実施した「働き方に関するアンケート」調査によると、就活生の54.6%が健康経営に取り組む企業が就職先を選ぶ際の重要な決め手になると回答しています。健康経営への積極的な取り組みは、労働市場においては、着実に就職企業選定の基準にもなってきているのです。

●健康経営とは何か

・人口動態の変化と健康経営

NPO法人健康経営研究会では、2019年に、健康経営を新たに深化版として定義しました。そこでは、健康経営とは、「人という資源を資本化し、企業が成長することで社会の発展に寄与すること」と書かせていただいています。これは、健康経営の取り組みが、従来の労働安全衛生や、心と体の健康づくりだけが対象になるのではなく、働きやすさ、働きがい、そして生きがいまでも、企業が支援する大切なテーマとしながら、経営者の倫理観に基づく経営戦略を土台にして、最終的には企業の成長と社会の発展を循環を目指していくことを狙いとしています。

時代とともに変わりゆく社会状況のなかで、もっとも変化が著しいのは人口動態です(図表5)。1980年代は人口増加の流れでしたが、その後人口は減少に転じ、2020年の日本の出生率は過去最低で80万人を切っています。働く人の高年齢化によって、高年齢従業員の再雇用やフリーランサー化などを中心に、雇用の流動化を進めていく必要性が高まることが考えられます。労働人口が減少するで、いかに労働力を確保するのか、また会社の成長につながる人材をどのように確保していくのか。NPO法人健康経営研究会でも、労働人口の減少をもっとも大きなテーマとして見ていました。働き手の確保は、この5年、10年で企業が直面する大きな課題です。

図表5 健康経営資本の鍵となる人口減少問題
図表5 健康経営資本の鍵となる人口減少問題

健康経営では、2006年の時点では働く人の高齢化によって起こる様々な健康問題をテーマにしていましたが、2020年に新たに深化版として出した健康経営では、進む少子高齢化や生産人口の減少といった課題とともに、人的資本経営の考え方を取り入れています。

従来は人の安全衛生や健康管理といった面はコストとして捉えられていました。昨今の人的資本経営というトレンドにおいては、働き手の確保を目的とする働きやすさや働きがいの提供と相まって、企業における付加価値を高めるための戦略の一環として、健康経営として取り上げられつつあります。

これからの未来では、健康経営を「ヒューマン・キャピタル・トランスフォーメーション(HCX)」と捉え、人を中心とする企業経営において、社会情勢の変化に対して、新しい考えと行動をもった人が、新たな価値をイノベーションによって生み出していくことが必要になってくるだろうとも考えています。

●健康経営と人的資本経営(人財視点)

・人はコストではなく資本

さて、ここからは人的資本経営と健康経営のつながりを見ていきたいと思います。

人をコストではなく、キャピタル(資本)として考える見方が、この数年で一般化しつつあります。たとえば、しばらく前までは、賃上げイコール「会社としては減益」というようなイメージがありました。しかしそうではなく、賃上げによって良い人材を多く確保すれば、企業は増益と株価の上昇にもつながるというように考え方へと変わりつつあるのです。労働生産性の分母を時間あたりの労働投入量を置き、コストをどれだけ削減できるかということだけではなく、価値創造の源泉は人であるということを再認識し、人が生み出す新しい付加価値を労働生産性の分子に置き、健康経営の視点から考えていくことが、私たちの基本的な考え方です。

・ウェルビーイング経営と健康経営の違い

よく健康経営の議論においては、「ウェルビーイング経営と健康経営とは何が違うの?」という質問を受けますが、私たちが健康経営で捉えている健康とは、WHOが定義する、肉体的、精神的、社会的という3つの健康が(図表6)、完全に良好な状態が、ウェルビーイングであると考えています。

図表6 健康経営での健康は、ウェルビーイングへの投資
図表6 健康経営での健康は、ウェルビーイングへの投資

ウェルビーイング経営というキーワードを掲げている企業の皆様は、肉体的、精神的な健康にのみ取り組むのが健康経営であり、社会的な健康がウェルビーイングだと位置付けられているかもしれません。しかし、私たちは肉体的、精神的な健康も、社会的な健康も相互の影響を受けながら育まれると考えています。つまり会社組織そのものが社会的な健康であり、健康経営に取り組むことは結果として、組織の健康を高めることでもあり、結果として、個人の肉体的・精神的な健康にも良き影響を与えるという前提です。

また、健康経営は、いきいきと働くことができる人をどれだけ増やせるかという点も大きなテーマです。つまり健康診断やストレスチェックの結果、スコアの悪い人を何とかするという以上に、すべての従業員が健康でいきいきと働くためには何ができるかが問われているのです。

まだモデルとしては十分ではないものの、従来のヒューマンコストとしての健康管理というテーマから、いきいきと働くことやエンゲージメントというキーワードも含めて、より人の成長につながることをどのように指標化できるのかを、NPO法人健康経営研究会ともに、検討しています。また、健康経営の実践においては、従来の心と体の健康管理軸に加えて、コンフォート(居心地の良さ)とコミュニケーションといった社会環境軸も大切な投資軸となっています(図表7)

図表7 健康経営の2つの投資軸
図表7 健康経営の2つの投資軸

●健康経営と人的資本経営(人材戦略)

・健康経営を通じた組織風土の醸成が求められている

健康経営は「戦略」なので、「何を、なぜするのか」を考え決断することが必要です。このような視座を得るためには、あるべき状態を考えて、そこからバックキャストをして打ち立てた戦略シナリオが必要になります(図表8)。この戦略シナリオの立て方としては、現在の健康経営度調査の調査項目では、why、who、what、how、そしてEvacuationという5つのテーマがベースになります。

図表8 健康経営の進め方(モデル)
図表8 健康経営の進め方(モデル)

健康経営に取り組む企業のなかで、成果を上げている企業ほど、組織風土の醸成を大切にしています。「なぜ健康経営に取り組むのか」という経営者の思いが、管理職との合意の形成によって育まれ、結果として組織風土のなかに従業員を大切にするという文化が生まれる。そしてさらに、従業員の会社に対する信頼が高まり、健康経営の施策の実施率や参加率が高まり、従業員の健康指標の改善につながっていくという好循環が生まれるのです。ただ単に健康施策を実施するのではなく、経営戦略を通じて組織風土を醸成していくことが、より一層の成果を上げるためには必要なのです。

・今後の課題

今後の経営にとって大切なことは、事業継続に必要な人づくりのために、DEIを中心に、多様性を考慮することや、人材開発の視点から健康経営に対して積極的な投資を行っていくことです。こうした視点は、「人材版伊藤レポート」にも書かれていますが、このような要素は、健康経営においても同様に、大切な共通キーワードになっていると私たちは理解しています。

これからの健康経営は、産業保健や医療を中心とする心と体の健康だけでなく、経営学、社会学ほか、様々な人たちの知恵や知識を結集していくことが必要です。そうしたなかでの課題は、健康経営をどのように可視化できるのか(図表9)。また、自分たちが取り組んでいる健康経営をどのように成果として外部に発表できるのか。そして、その前提として、企業としての戦略シナリオをどのように描いていくことができるのか。健康経営が経営資本としてどう生かされるようにしていくかが直近の課題だと言えるでしょう。

図表9 健康経営資本をどのように可視化できるか
図表9 健康経営資本をどのように可視化できるか

Ⅱ.人的資本経営と健康経営

岩本 隆氏 慶應義塾大学大学院 政策・メディア研究科 特任教授

●人的資本経営と健康経営は、経済産業省のヒット施策

今、「〇〇経営」といった言葉がすごく増えていますが、今日は「人的資本経営」と「健康経営」について話を進めさせていただきます。

この2つは、経済産業省の大ヒット政策です。「政策」というと補助金などが伴うケースが多いのですが、この2つは大したお金をかけずに、仕組み・仕掛けで広がりました。よって、政策のROIがとても高い施策とも言われています。

私は、経済産業省が樋口さんたちの健康経営研究会に相談する前の2011年頃に、依頼を受け、健康経営の政策のベースとなる経済性を分析するために、約40数兆円に膨らんでいる医療費の流れを調べました。すると、40数兆円の医療費のうち約3分の1は、生活習慣病によるものが占めており、ここを改善すれば医療費の3分の1が削減できることがわかりました。健康経営の推進は、このような社会課題が起点となっており、顕彰制度も、もともとは社会課題起点から政策導入が始まりました。健康への投資が、業績や生産性向上につながることを体系化していこうという動きの活発化にもつながり、多くの企業で従業員の健康支援のための取り組みが行われるようになっています。

また、最初の健康経営銘柄を発表したときには、新卒採用に大きく影響が出ました。健康経営銘柄を取得したホワイト企業に人気が集中したのです。同様に、人的資本経営でも同じような現象が起こっています。人的資本経営をきちんとやっていない企業には学生が集まらないというのです。人手不足が企業の大きな課題となるなか、新卒採用というテーマにおいて、健康経営や人的資本経営の推進は1つのドライバーになっていると言えるでしょう。

●「企業は人なり」の考え方と「人的資本経営」

人的資本経営は、日本では2017年頃から意識されるようになりました。人的資本経営、英語ではヒューマン・キャピタル・マネジメントですが、これが盛り上がっている背景には、企業価値に占める無形資産価値の高まりという要素があります。ソフトウェアやデータなどの「見えない資産」のビジネスが大きくなっているからです。そうした背景から、投資家も、無形資産の価値も開示してもらわないと投資の判断ができないという要望が高まり、人的資本開示の国際標準化や政策としての検討が進んできたのです。

日本では、2017年に働き方改革実行計画が閣議決定されましたが、これ自体は、残業を減らして有給休暇の消化率を高めようという、いわば「働く時間を減らす」政策でした。その後、経済産業省では、多様な働き方の推進や働きがいにもフォーカスし、企業の生産性を高める「働き方改革2.0」を推進しています。これが人的資本経営につながっていきます。

実は、人的資本経営のような考え方は昔からあり、多くの企業がこれを実践してきました。パナソニックの創業者の松下幸之助氏は、『人事万華鏡』という著書で「企業は人なり」「事業は人なり」と述べていますが、これもある意味、人的資本経営と言えるでしょう。ただ問題は、働く人の生産性が低くても会社に残れるような仕組みでは、企業の業績は上がらないということ。一人ひとりの生産性の最大化が求められるようになっているのです。

「企業は人なり」についても、松下幸之助さんは「みんなを同じように育てよう」という意味でおっしゃったのではありません。『人事万華鏡』の中では、「全ての人材には才能があって、一人ひとりのポテンシャルを引き出して、一人ひとりが活躍できるようにする」「活躍を通して一人ひとりが成長して、一人ひとりの成長が企業の持続的成長につながる」と書かれています。

現在、「企業は人なり」と謳っている企業は、どちらかというと雇用を守るという意味で使っているケースが多いと思います。もともとの意味に立ち返ると、従業員一人ひとりが才能を発揮して活躍する。あるいは成長できている。それを企業として最大化する必要があるということです。イメージとしては、「金太郎飴型」から「プロスポーツ型」へというもので、「企業は人なり」の原点に立ち返りましょうということです。

●企業が設定する人的資本KPI

図表1は、2017年以降の主な政策の流れです。最初はHRテクノロジーを活用して生産性を高めることを目指していました。要は、テクノロジーを活用して、人は人でしかできないこと、あるいはテクノロジーを活用する側に回って、人による付加価値を高めていくことです。

図表1 日本の「働き方改革実行計画」公表以降の産業人材政策(「働き方改革2.0」)
図表1 日本の「働き方改革実行計画」公表以降の産業人材政策(「働き方改革2.0」)

実は「HRテクノロジー」という言葉は日本では私が最初に言い始めたものです。HRテクノロジーのツールは、日本でもかなりの数がありますが、海外ではヒューマン・キャピタル・マネジメント・アプリケーション(HCM)と言われています。これを日本語にすると「人的資本経営アプリケーション」となりますが、2020年に研究会のタイトルに使われたものから始まってバズワード化したのです。

図表2は、人的資本経営に取り組む企業が設定している、人的資本KPIの例です。まず、2017年に始まった働き方改革は、今は「働きがい改革」へと進化しています。従業員のキャリア自律、あるいは自律的キャリア形成については、働きがい改革とセットにして取り組まれている例が多くなっています。また、従業員エンゲージメントをKPIにしている企業や、最近多いのは「コグニティブダイバーシティ」という、思考特性、スキル、経験といった多様な人材の目に見えない属性に着眼したダイバーシティを謳っている企業もあります。なお、コグニティブダイバーシティの対極にあるのが、性別や国籍、年齢などの属性の多様性を意味するデモグラフィックダイバーシティです。デモグラフィックダイバーシティは、実は企業の成長にはあまり相関しないという研究論文が出ています。コグニティブダイバーシティとは、漢字にすると「認知的多様性」ですが、これを高めるには心理的安全性や手挙げ文化も大切になります。

図表2 人的資本経営における日本企業の主要な取り組み(=人的資本KPI)
図表2 人的資本経営における日本企業の主要な取り組み(=人的資本KPI)

●脳の健康度合いと生産性の関係

最近、統合報告書のサステナビリティレポートとして、人的資本経営の在り方について開示している企業も増えています。ここでよく見る言葉は、「多様な人材がいきいきと働ける企業文化」といったものです。これはよく考えてみると、社会的健康も含めた健康経営の取り組みともいえます。つまり、人的資本経営と健康経営の交接点です。

そこで私の研究を1つ紹介させていただきます。内閣府の「ImPACT山川プログラム」というもので、脳の健康度合いの国際標準です。日本のいくつかの大学で取ったMRIのデータからBHQ(Brain Healthcare Quotient)という指標を導き出しています。いろいろなBHQがあるのですが、GM-BHQとFA-BHQは国際標準化されたもので、前者は脳の神経細胞の健康状態の指標、後者は脳の神経繊維の健康状態の指標ですが、技術的な話は別にして、これで脳の健康度がわかるというものです。偏差値で表されるようになっており、100が平均です。

私は、健康経営の取り組みがこのBHQの数値にどう影響を与えるかについて調べました。3社にご協力いただき、80数名のMRIを取り論文を発表しましたが、学会でも新しい研究だと認められ、ヨーロッパの学会でベストペーパーアウォードを受賞しました。

サンプル数が80数名と少なかったので、統計的に何かを言えるところまでは見出せなかったのですが、面白いことに、実際にBHQの数値の高い人は、若くても責任のある仕事を担当して、いきいきとやりがいを感じて働いている人でした。そうした研究を通して、脳の健康にとって、社会的健康も重要であるという認識をもちました。

このようなエビデンスのとれた研究成果から、BHQ Actionsを定義し、脳が健康になる18の行動指針が策定されています(図表3)。BHQ Actionsには、脳の健康に関係する社会生活、運動、健康管理、食事、睡眠、また、学習を続けるとか、わくわくする体験といったことが入っています。

図表3 BHQを用いた研究成果から策定した「BHQ Actions」
図表3 BHQを用いた研究成果から策定した「BHQ Actions」

●従業員エンゲージメントの意味

皆さんの企業でも従業員エンゲージメントスコアを取られていると思いますが、何をサーベイしているのかがよくわかっていないケースも多くあると思います。私なりの解釈では、従業員エンゲージメントとは、婚約に近い概念、つまり企業と従業員とが婚約時の男女の関係のような状態です。従業員エンゲージメントが高い状態とは、企業と従業員とが対等に、選び・選ばれる関係で、お互いがワクワクしている状態です。そして、結婚することをコミットし合っている状態です。こういった関係にあると、当然、企業の業績は上がることは容易に想像できるでしょう。

エンゲージメントと業績との相関関係は、世界中で研究されていますが、米国ギャラップ社の調査では、日本の従業員エンゲージメントは世界最下位だと言われています。これは、男女の関係ではなく親子の関係に近い企業が多いからだと思います。親である企業の言うことを聞く子どもの従業員という関係なので、対等の関係ではないのです。

従業員の皆さんは、真面目に仕事をしているとは思いますが、「言われたことを真面目にする」という状態の企業が多く、「ワクワクしながら」仕事をしているわけではないのです。

エンゲージメントスコアと営業利益率や労働生産性の関係についての研究は私も行っています。図表4は、初期研究のデータですが、発表当時はインパクトがありました。今は、様々な企業の統合報告書でエンゲージメントと自社の業績との相関を開示されるようになってきました。

図表4 エンゲージメントスコアと労働生産性の関係
図表4 エンゲージメントスコアと労働生産性の関係

●コグニティブダイバーシティと人的資本経営

「ダイバーシティ」という言葉は時代とともに進化していますが、最近では「DEIB(Diversity:多様性、Equity:公平性、Inclusion:包括性、Belonging:帰属性)」という言葉がよく使われるようになっています。デモグラフィックなダイバーシティよりも、コグニティブなダイバーシティを高めていく必要があると申し上げましたが、これは昔から言われていることで、多様な人が掛け合わさることで新しいイノベーションが生まれるという話です。

女性活躍推進や障害者活躍推進では、「公平」に近いEquityが重要です。Belongingは、Diversity、Equity、Inclusionの全てが満たされたときに、所属意識が高まるというものです。日本の企業は所属意識が高い従業員が多いと思いますが、どちらかというと同質な集団内での所属意識が高いということで、ここで言うBelongingは、異質な人が集まった集団における所属意識の高さです。中途採用で入った人はカルチャーの違いがネックになって活躍できないといった話も聞きますが、そうではなくて、異なる背景や文化を持った人でも、居心地がいいような環境です。そういった企業文化がイノベーティブな組織を育むのです。

「メトリック」とは測定基準の意味ですが、ダイバーシティのメトリックは25ぐらいあって、このなかで自社にとって意味のあるコグニティブダイバーシティとは何かを考えて、取り組みを進めていくべきだと思います(図表5)

図表5 ダイバーシティのメトリック
図表5 ダイバーシティのメトリック

●ウェルビーイングとエンゲージメントの両立が大切

コロナ禍に入ってから、燃え尽き症候群のような現象も増えています。エンゲージメントは高いのに離職が増えたという企業が増えていて、私のところにも数社から相談がありました。これも海外で研究論文があるのですが、ウェルビーイング、つまり幸福度を同時に高めないといけないと言われており、エンゲージメントとの両立が必要だということです(図表6)。これが両立できていると、いろいろなものが生成(ジェネレート)されます。そういうジェネラティブな組織には、好奇心が強い、勇気づけ、探求的といった特徴があります。

図表6 従業員エンゲージメント×ウェルビーイング
図表6 従業員エンゲージメント×ウェルビーイング

●人的資本開示と国際規格ISO 30414

内閣官房が示している人的資本開示の項目を見ると(図表7)、健康・安全はどちらかというと「リスク」マネジメントの観点、エンゲージメントなど社会的な健康は「価値向上」の観点に寄っていることがわかります。

図表7 日本の人的資本開示の政策
図表7 日本の人的資本開示の政策

ISO 30414という人的資本経営の国際規格があり、その認証・保証機関は、日本ではHCプロデュースとBSIジャパンの2社です。直近では12社がISO 30414の認証取得をしています。また、三井住友銀行(人的資本経営推進分析融資、2022年12月リリース)と、みずほ銀行(Mizuho人的資本経営インパクトファイナンス、2023年5月リリース)が人的資本経営度合いを評価した融資サービスを始めています。そういう意味では、融資を受ける非上場企業も人的資本をデータにして開示することが求められているといえるでしょう。

●まとめ

もともと健康経営はヘルスケア産業政策として始まり、人的資本経営は生産性を高める産業政策として打ち出され、広がりました。経営としての取り組みでは、人的資本経営と重なる部分がかなり多いと言えるでしょう。

従業員と企業との関係では、従業員が強くなってきているので、経営としては一人ひとりに目を配り、活躍成長できる人的資本経営が求められています。従業員エクスペリエンス、つまり「従業員体験」という言葉が広がっていますが、どういう従業員がどんな良い体験を積んでいけるのかをきちんと見ていく必要があるということです。

繰り返しになりますが、人的資本経営を機能させるためには、一人ひとりのフィジカル、メンタル、ソーシャルな健康を実現する健康経営が重要です。先述の人的資本KPIにこの手のテーマが結構あったと思います。

人的資本報告は上場企業だけではなく、非上場企業にとっても重要になってきます。特に中小企業は健康経営と同様に採用にかなり影響を与えるので、自社の人的資本経営の状態を、データも使いながらきちんと開示をしていかないと、採用もできないといった事態に陥るかもしれません。

Ⅲ.クロストーク(質疑応答)

ファシリテーター:ここからは、質疑応答とクロストークに入っていきたいと思います。最初の質問は、「ISO 30414の認証を得ることと、人的資本の開示はどちらが優先されることでしょうか?」「個人認証とはどういう意味でしょうか?」というものです。岩本先生、いかがでしょうか。
岩本:

まず1つめですが、認証を取らなければいけないというものではありません。ただし、いろいろな取引をするにあたって、取っておいた方が有利だといえます。一方、「開示」については、上場企業はマストです。直近はまだ開示項目が少ないのですが、これから増えていくことになります。非上場企業は、義務ではありませんが、先ほど申し上げたように採用や融資に影響するので開示はしておいた方がいいという話です。

個人認証というのは、企業の人的資本報告書にISO 30414の認証を出すのですが、それをアセスメントするコンサルティング会社が発行するものです。日本ではHCプロデュースという会社が担っていますが、認証取得者は1,000人以上と、とても増えています。なお、HCプロデュースでは、認証取得のための研修講座を開設しています。

ファシリテーター:人的資本経営の開示義務が金融庁から出た当初は皆さん「何を開示したらいいの?」と混乱されていた印象があったのですが、今は落ち着いてきたように感じます。健康経営についても、10年ほど経過していることを考えると、東証プライムスタンダードを中心に非上場も含めて、社員がいきいきと働くための1つの重要な活動として注目をされていくのでしょうか?
樋口:

そうですね。2024年問題といわれていますが、特に人手不足が深刻です。樋口さんの資料にもあったかと思いますが、若い人たちが企業を選ぶときに、その企業で自分はいきいきと働けるか、活躍できるか、成長できるかといったことが判断基準の上位に来るということです。中小企業からすると、ただでさえ人手不足のなか、優秀な人材を獲得するためには、そういったことをホームページ等々でアピールしていかないと、学生の目にとまりません。採用は強いドライビングフォースになっています。

岩本:

やはり大企業は社会の動向に強く影響を受けていると感じています。健康経営銘柄という仕組みでは、基本は各業種から一社しか認定が取れないことが、採用活動にも大きく影響しているといえると思います。また健康経営優良法人認定制度が10年経過して、中小企業の経営者からは、採用がうまくいくようになったという声が聞かれるようになりました。具体的には、健康経営を通じて、HR系の会社を介さずに直接の応募数が増えるようになったとか、自社の社員が、次の社員を紹介してくれるようになったなどの声です。経営者の肌感覚としては、人材の定着や採用に対して影響力があると実感されていると思います。

ファシリテーター:働き方改革が始まった2018年以降は、最終面接でIRレポートやアニュアルレポートを見て質問をしてくる学生も増えているようです。職場風土もありますが、良いも悪いも注目されることは重要ですし、そのなかで優秀な学生さんを集めたり呼び込んだりするという意味では、経営の方向性として、“人”がキーワードである健康経営や人的資本経営は重要だと思いました。
さて、次の質問は、「今後開示される人的資本のメトリックで健康経営絡みのものは含まれていきますか?」というものです。
岩本:

ISOのTC260というところに健康経営関連のワーキングがあります。内閣官房のガイドラインでは、マイナスをゼロにするというか、健康を害していないといったリスクマネジメントの要素で開示してほしいといったことは出てくると思います。ただ、ソーシャルな健康の「いきいき」という表現は、エンゲージメントで表現することもあれば、指数をつくって表現するなど、そこは各社の工夫しだいです。ただし、そういったことは投資家からすると関心が高いので、義務ではありませんが、「開示した方が良い」という方向だと思います。

ファシリテーター:健康経営の調査項目も進化していると思いますが、そういう観点からはどうでしょうか。
樋口:

岩本先生の資料のなかにも挙げていただいた、企業に求められる人的資本の開示事項のように、横で比較できるデータの提供だけでは、会社の良さを十分に伝えることができません。その会社が何を経営課題として考えていて、何に具体的に投資をして、どう改善したのかという、個社ごとの戦略シナリオを開示していく必要があるでしょう。去年までは、有価証券報告書にまず書くということで、規定の演技項目として必須のものを外部に開示することになっていたと思いますが、これからは、自社の経営シナリオをできるだけ有価証券報告書に盛り込んでいくような独自性のある企業が出現し、そこには、自由演技としての健康経営の要素が含まれてくるのではないかと予見しています。特に、これらの企業の健康経営の戦略シナリオについては、健康経営度調査の調査項目にも盛り込まれるようになってきています。

ファシリテーター:健康経営は可視化をして外部に発信していくことが大切ということですが、未上場の企業も含めてどう発信していけばいいのでしょうか。健康経営を外部にうまく発信していくにあたってのポイントがあれば、事例も含めて教えていただければと思います。
岩本:

資本市場・金融市場や労働市場などの外部の人が求めるのは、人的資本のKPIです。つまり、何がその会社の業績を高めるのかを知りたいので、人的資本のKPIは国際規格ではなく、自社の経営戦略として設定したほうがいい。その人的資本の主要KPIに、ソーシャルなことも含めて健康経営的な要素が多いことから、そこはほぼ重なっていると言っていいと思います。

ファシリテーター:「働き方改革から働きがい改革へ」というキーワードも出てきましたが、働きがい改革では、具体的にどのような取り組みがされているのでしょうか。
岩本:

企業によって様々で、各社なりに多様な取り組みが行われているようです。たとえば大企業では、タレントマーケットプレイスという、手挙げでどこの部署にも異動できるような取り組みがあります。そうすると、各部門は魅力がないと来てくれないので、マネジャーが部門のサイトを立ち上げてアピールするなど、良い組織になるように競争し合います。キャリア自律の関連では、必ずしも全てのマネジャーがキャリアコンサルタント的なスキルを持っているわけではないので、一人ひとりのキャリアを考える担当者、つまりHRビジネスパートナーをアサインして、全従業員のキャリアについてきちんと面倒を見るといった取り組みもあります。場合によっては、「この部門に異動して、こういう仕事をした方がいい」といったことも提案するようです。

もう1つはテクノロジーを使うことです。ラーニングシステムと連携して自分の進みたいキャリアについて入力すると、AIがレコメンドしてくれるという仕組みがあります。今、eラーニングのコンテキストがとても増えているので、その人にとって適切な学びをレコメンドしてくれるシステムをつくっている会社もあります。中小企業の場合、なかなか自社ではできないと思いますが、そういうアプリケーションも増えていると思います。

ファシリテーター:「働きがい改革」については、樋口さんからもぜひお話いただければと思います。健康経営の観点から取り組まれている企業の事例等についてお話いただけますでしょうか。
樋口:

働きがいと健康については、相関があるだろうと考えています。働きがいにきちんと取り組む企業は、健康も同時に見ているという印象があります。たとえば丸井さんでは、エンゲージメントとストレスという2つのデータを見ながら、職場評価を行っています。たぶん、ストレスの多い職場では、上司・同僚の支援がなかったり、仕事の量が多かったり、仕事の質が難しかったりという傾向が見られ、それがストレスに繋がっているので、結果としてエンゲージメントも低いと思います。組織の負の要素を解消していくという視点で、ストレスを見ながら、なおかつ同時に、働きがいを高めるための組織活性の仕組みづくりについても取り組んでいく。そういうプラスの状況をつくっていくなかで、従業員のエンゲージメントを高めていく動きも出てきていると思います。

しかし実態としては、こうした状況に気がつく企業はまだ十分ではないと思います。それは、それぞれの部門での目的や目標の部分最適化が起きてしまっているからだと思います。例えば大希望の場合には、ストレスを見ている部署とエンゲージメントを見ている部署が縦割りで異なり、これらのデータについて横のつながりがないという現状も出てきています。働きがいを上げるためには、会社が保有する人に紐付くデータをどのように総合的に見て、多角的な判断ができるのか。また、それを管理職がどう支援できるのかについても、今後は課題になってくると思います。

ファシリテーター:最後のご質問です。「メトリックのお話がありましたが、その領域の専門家ではない人に、それぞれのサービスを提供するコンサルが様々な提案をしてくると、何が正しいのか、どう判断するのかが難しく感じます。利用者側の拠り所になるような考え方があれば教えてほしい」という質問です。難しいご質問だと思いますが、いかがでしょうか。
岩本:

ISOのコンサルタント認証を取った人が1,000名を超えている状況なので、ほぼ全ての人事系コンサル会社が提案をしてくると思います。よって、ISO云々よりも、皆さんにとって相性の合うコンサル会社を使うなど、同じ軸で判断することが大切という感じがします。あまりいい答えではないかもしれませんが。

ファシリテーター:健康経営の調査票や指標も、最初は今ほどクリアではなく、ぼんやり始まったものなのでしょうか? 質問は、健康経営コンサルがたくさん出てきたことにも、関連するかと思うのですが。
樋口:

調査票そのものは、精緻なものに仕上がっていますが、経済産業省も、健康経営コンサルの質や制度の問題を挙げています。コンサルティングを提供する会社に対する認証制度というよりは、宣言制度のようなものがこれから立ち上がる予定になっています。健康経営の調査票を回答することだけを目的とした、健康経営優良法人ウォッシュみたいなことが起き始めていることも、健康経営のコンサルを選ぶときの課題です。経営戦略の立案よりも、健康経営優良法人の認定に貢献できるコンサルを優先して選んでしまっているという実態が増えてきているのです。岩本先生のお話にもありましたが、人的資本経営の根底は、金太郎飴型からプロスポーツ型へということなので、ウォッシュではいけないと思います。コンサルサイドも、矜持を示さなくてはいけないと思っています。

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