J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2017年05月号

寺田佳子のまなまな 第17回 お化け屋敷プロデューサー 五味弘文さんに聞く “恐怖”の魅力

唯一無二の職業、お化け屋敷プロデューサー。
その肩書きを持つ五味弘文さんが今回の「まなまな」のお相手だ。
「お化け屋敷は誰にでもつくれる。だからこそ、誰も見たことがないものをつくりたい」と語る五味さん。お化け屋敷をエンターテインメントへと進化させるにあたって大切な“恐怖のメソッド”を、寺田さんが体を張って体験します!

五味 弘文(ごみ ひろふみ)氏
立教大学法学部在学中より演劇活動を始め、卒業後に劇団を結成。主宰・作・演出を務める。並行してイベント会社でイベントの企画・演出などを行う。1992 年、後楽園ゆうえんち(現 東京ドームシティ アトラクションズ)の『麿赤兒のパノラマ怪奇館』で、キャストの現れるお化け屋敷を復活させ反響を呼び、その後もさまざまなお化け屋敷を手がける。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
インストラクショナルデザイナー、ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/Instru ctionalDesignConsulting

お化け屋敷は落語と同じ!?

人はなぜ、お金を払ってまでお化け屋敷に行くのか?

なぜ、偽物だと分かっているのに絶叫するのか?

なぜ、「怖かったぁ~」と言いつつ大笑いしながら出てくるのか?

不思議だ。お化け屋敷は、実に不思議だ。

こうつぶやきながら「怖いもの見たさ」で入った東京ドームシティ アトラクションズの「地獄への手紙」。今回の「まなまな」のお相手、五味弘文さんがプロデュースしたお化け屋敷である。

ネタバレになるので詳しくは言えないが、「きゃあ~」「いゃあ~」と、叫び声だけは女子高生並みの可愛さで地獄を巡り、出口ではやっぱり、「怖かったぁ~、あははは!」と爆笑した私である。

そのドキドキがまだ収まらないままに案内された、お化け屋敷の舞台裏。カッと見開いた目ヂカラがハンパないお化けさんと並んで座り、時折、壁越しに響くお客さんの悲鳴を聞きながら、というまことに刺激的なシチュエーションでインタビューは始まった。

「お化け屋敷の評価基準はとてもシンプル。『怖い』か『怖くない』か、二者択一ですから。お笑いの『面白い』か『面白くない』か、と同じですね」

と、聞こえてくる悲鳴の大きさにニヤッとする五味さん。

お化け屋敷とお笑い……。んー、どう考えても真逆のエンターテインメントのように思うけれど、“お客さんを「笑わせる」ワザ”と“「悲鳴を上げさせる」ワザ”って、同じなの?

「そうですね、『緊張と緩和のメカニズム』とでも言いましょうか。感情の落差で快楽を感じさせる構造が同じなんです」

つまり、こういうことらしい。

お化け屋敷で、いかにも怪しげな扉を前にすると、「この向こうに、絶対何かいるんだろうなぁ…」と嫌な期待(!)が高まって、喉から心臓が飛び出しそうになる。ところが恐る恐る扉を開けて、「あら? いない?」となると、一気に緊張がほどけて無防備になる。そこにヌッとお岩さんが現れたら……。何もしなくても髪の毛が逆立つほど驚くに違いない。まるでジェットコースターに乗っているようなこの感情の高低差とスピードが、絶叫の快感を生むのだ。それはちょうど、落語で熊さん八つぁんの間抜けなやりとりを聞きながら、「このままいったら、絶対やばいなぁ……」と不安がピークに達した時に、思いがけないどんでん返しで大笑いする快感、つまり落語の“オチ”と同じというわけだ。お化け屋敷も落語も、「ハラハラ」と「ホッ」をタイミングよく組み合わせることで、人の心をつかみ夢中にさせるのだ。

なるほど! おどろおどろしい人形が飛び出す仕掛けをつくるのが、お化け屋敷のプロデュースかと安易に考えていたが、どうやらそれは大間違い。五味さんのアタマの中には、人の心理を見抜いた、まことに緻密な「恐怖のメソッド」があるらしい。

“恐怖を楽しむ劇場”への進化

大学で演劇にのめり込み、卒業後は劇団を主宰していた五味さんが初めて「お化け屋敷」に関わったのは、1992 年に後楽園ゆうえんち(現・東京ドームシティ アトラクションズ)の企画制作に携わった時のこと。遊園地の片隅にひっそりと佇むお化け屋敷を見つけ、懐かしくて入ってみた。古風なつくりではあったが、井戸から飛び出すお化け役のキャストの動きには心底ビックリして、魅せられた。

「これは、大人でも楽しめる全く新しいエンターテインメントにできるかも……」

そこでひらめいた企画が、「麿まろ赤あか児じのパノラマ怪奇館」である。演出家・舞踏家として世界的に有名な麿赤兒氏の協力を得て、お化け屋敷の暗闇の中に、全身白塗りのダンサーたちが突然飛び出す演出を考えた。さらに、音楽をサックス奏者のジョン・ゾーン氏に、ポスターのメインビジュアルをイラストレータ―の丸尾末広氏に依頼。現在、このポスターは大英博物館に展示されているというから、一流のアーティストたちがコラボした芸術的なお化け屋敷だったに違いない。

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