J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年11月号

寺田佳子のまなまな 第11回 保育園経営者 宮村柚衣氏に聞く 「ココロで行うマネジメント」

今回のお相手は、「ちゃのま保育園」経営者の宮村柚衣さん。
自分の子どもが待機児童になったことから歩み出した起業家の道は、楽しいことばかりではなかったといいます。
現場の保育士さんたちを活かす「宮村流」マネジメントについて、子どもたちの笑い声が絶えない保育園で、お話を聞きました。

宮村柚衣(みやむらゆい)氏
合同会社はひぷぺぽ代表・ちゃのま保育園代表。立命館大学法学部卒業。行政書士資格を持つ。司法書士事務所に就職後、新事務所の立ち上げに関わり経営に興味を持つ。2014 年、自身の子どもが待機児童になったことがきっかけで保育園を開業。「保育士の楽園プロジェクト」「日本ちゃのまProject」の立ち上げ等、保育の分野で幅広く活躍。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師、ATD(タレント開発協会)会員。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/YoshikoTeradaBook

「自分でつくったらええやん」

今回のまなまなは、「お砂場」から始まる。

前にここで遊んだのは、遠い遠~い昔なのだが、三つ子の魂なんとやら。気前のいい2歳のお兄ちゃんに、「ハイッ!」とかわいいバケツを手渡されると、ちゃんと崩れない「砂団子」がつくれるのだから、私も大したものである(笑)。

うまく並べてみせると、そのお兄ちゃん、「よくやった!」とばかりにニッ! と笑いかけてくれる。ちょっとテレて辺りを見回すと、0~2歳の子どもたちと一緒に夢中になって遊んでいるオトナは私だけではない。ピンクのエプロンを着けた保育士さんたちも、腕まくりをして長いトンネルを掘ったり、草むらをのぞき込んでバッタを探したりしている。

そんな光景に微笑みながら、

「みんなが気ままに好きなことをして、でも手を伸ばせば家族と触れ合えて、ゆったりと温かな時間が流れていく。そんな、昔の『茶の間』みたいに安心して和める保育園をつくりたかったんですよ」とつぶやくのは、墨田区施設型小規模保育所A 型「ちゃのま保育園」の代表、宮村柚衣さん。奈良県の出身で、大らかな笑顔と柔らかな関西弁が魅力的だ。

行政書士の資格を持ち、司法書士事務所で働いていたという彼女。いったいなぜ、保育園をやっているの?

「4年前に寿退社をして、2人の子どもに恵まれました。下の子が1歳になり、そろそろ仕事したいな、と認可保育所に申し込んだら『不許可通知』が来て、めっちゃ、めげたんですわ」

ありったけの保育園に当たったが、どこも定員いっぱい。20 ~ 30 人の待機児童がいる状態だった。今から思えば、早めに「保活」をしなかったから仕方がないのだが、「仕事はしたい、けど預かってくれるところがない」というジレンマで、毎日、ウジウジと愚痴をこぼしていた。そんなある日、

「入るとこないんやったら、自分でつくったらええやん」

思わずのけぞってしまいそうな大胆な発言をしたのが、ご主人である。

聞けば、「柚衣ちゃんは、起業したほうがゼッタイええよ」と前々から言っていたというから、妻の才能をいち早く見抜いていたのだろう。

夫もすごいが、「そんなん、無理やわ」と言わない妻もすごい。「その手があったかぁ」とばかりに走り回り、わずか8カ月で開園にこぎつけた。

効率だけではうまくいかない

いやぁ、さすがアクティブですねぇ。無事スタートできて、ホッとしたでしょ!

「それが……。開園してからのほうがタイヘンやったんです。『なんで、こんなんつくっちゃったんや』って、後悔ばっかりして」

当時は、経営者と園長の一人二役。朝から晩まで現場にいて、細かいことまで逐一チェックし、あれこれ指示を出した。なにしろ最初は自治体から認可を受けていない無認可保育所だったため公的補助金がなく、毎月赤字。自分が先頭に立って働き、効率的に運営しなければときりきり舞いして、行き詰まってしまった。思うようにチームが回らない。保護者とのコミュニケーションもうまくいかない。夢見てた保育園って、これじゃない……。

つらくて、家に帰るとずっと泣いていた。そんなある日、

「しんどいんやったら、やめてもいいんやで」

再び、ご主人の大胆かつ優しい一言が。

「肩の力が抜けたんでしょうね。そこで、ハッとひらめいたんです。あ! ビジネスやないんや、保育園は、って」

え、ビジネスじゃなかったら、いったいなんなの?

「保育園って、福祉なんですよ」

それまで「ビジネスのアタマ」で成功させようとあがいていた。しかし、保育園は「福祉のココロ」で運営すべきだ、と気がついたのだ。

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