J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年09月号

Trend 3 起業家養成の権威・バブソン大学で教えられている アントレプレナーシップとリーダーシップ

米国ボストンに、起業家教育に特化した大学がある。
知る人ぞ知る「バブソン大学」である。トヨタの豊田章男社長やイオングループの岡田元也CEOなど、名だたる企業の経営者も卒業生名簿に名を連ねる。
ニューズ&ワールド・レポート誌、大学ランキングの起業家養成部門では20年以上1位を獲得している。世界中から起業したい若者や既に経営に携わる社会人学生等が集まり、学生の4割は海外からの留学生だ。
そこで教えられているリーダーシップとアントレプレナーシップとは。


右:山川恭弘( やまかわ やすひろ)氏
バブソン大学 准教授 専門:アントレプレナーシップ・失敗学
慶應義塾大学法学部卒。ピーター・ドラッカー経営大学院にてMBA、テキサス州立大学ダラス校にて国際経営学博士号取得(Ph.D)。バブソン大学にて、日本人としては非常に稀な「Tenure(終身在職権)」を取得。起業コンサル、数々のベンチャーのアドバイザリー・ボードを務める。

左:キース・ローラグ( Keith Rollag)氏
バブソン大学 准教授 専門:組織行動学・リーダーシップ・チームワーク
スタンフォード大学にて博士号取得。P&Gの開発責任者として、日本、アジアでの赴任経験を持つ。ハーバード、スタンフォードなどが発行する学術誌に数多くの論文を掲載。バブソン大学ではマネジメント部門の責任者を務める。

[取材・文]=堀尾志保・小菅 啓・永國幹生(JMAM) [写真]=永國幹生

ボストンでビジネスリーダーに

―最初に、バブソン大学の特徴についてお聞かせください。

ローラグ氏(以下ロ)

通常の大学は、文学部や理工学部などを併設していますが、バブソンはビジネスだけに特化した稀有な大学です。アントレプレナーシップ(起業家精神)、企業経営について集中的に学習でき、リーダーとして不可欠な能力を磨ける環境です。

山川氏(以下山)

主な特徴は2つあります。1つは、何と言っても学生の質と志の高さです。バブソンには世界中から、起業を最高にかっこいいと感じ、高い志と意欲を持つ学生が集まってきます。彼・彼女らは大学側への要求も高いため、教える側の質も自ずと高まります。

2つめは地域柄です。ボストンにはベンチャーキャピタルや投資家等、起業家を支えるための活発なコミュニティがあります。ベンチャーの起業ではシリコンバレーが有名ですが、起業した企業数や投資額という数字で見れば、東海岸もかなりの起業家輩出地域といえます。

なお、バブソンでは企業内起業や同族経営、社会的起業、つまり地域貢献における起業家精神やその実践方法なども、包括的に扱っています。

起業家精神とは何か

―バブソン大学で学べるアントレプレナーシップの内容と、それを学ぶ重要性とは。

アントレプレナーシップとは、ただ事業を始めるということではありません。「先が分からない状況下でも、まずは“Action”、行動を起こしてみる」というマインドセット(心の持ち方)です。事業のみならず、地域活動や家族とのやりとりなど、人生のあらゆる場面で物事をよりよく、豊かにしていくために重要なものです。

バブソン大学では、在学期間中、Problem-driven(課題起点)であることが叩き込まれます。起業の起点や目的は、常に「世の中の課題や問題の解決」のためである、ということです。プラスαでお金をもうけたい、という考えはあってもいい。ただし、あくまでも前提は「世の中の課題を解決すること」というのがバブソンの一貫した考え方です。

世の中の課題や問題を根本的な方法で解決するには、1人で頑張っても限界があります。才能ある人材を集め、チームで課題解決に取り組むことで大きな力になります。そのために、どのようにアイデアとチームをつくり上げていくか。どう“起業家的”に考え行動するかを、実際に起業経験を積み、過程を振り返ることで学んでいきます。

リーダーシップとの深い関係

―アントレプレナーシップとリーダーシップの関係とは。

アントレプレナーシップとリーダーシップは別々のものではなく、つながっているものです。新しいことを始めるには、リーダーシップが必要であり、実際に資金を集め、アイデアを形にしていくためには、アントレプレナーシップが不可欠です。事を成す過程で、リーダーシップとアントレプレナーシップは相互に結びつきながら発揮されていくものなのです。

起業を実体験する「FME」

―起業を実体験する授業とは、実際にはどのようなことをするのですか。

「FME※ 1」という授業です。学部1年生の前期でアイデアを創り、後期で実際に事業化します(図1)。オペレーションや資金繰り等々、起業や事業運営にまつわるさまざまなプロセスを実際に経験し、経験を通じて、時には失敗を通して学んでいきます。失敗を次に活かすこともアントレプレナーシップの重要な要素です。他大学では学びの集大成としてこのような授業を卒業時や卒業後に行うことが多いのですが、当校では1 年次に行います。授業には、リーダーシップを含め組織行動学を教える教授とアントレプレナーシップを教える教授の2名がつきます。

※1 The Foundations of Management and Entrepreneurshipcourseの略。

■前期:事業アイデアづくり

1クラスは約40 名です。10 名×4グループに分かれ、チームごとに世の中の課題・問題の中からテーマを見つけ、解決のための事業アイデアを3分間でプレゼンします。これを学生同士で審査し、やりたいと感じる事業を10 個ほどに絞り込んでいきます。学生には、「経済的かつ社会的価値のあるものか」「事業として優れたものか」「皆が情熱と誇りを持って打ち込めるものか」の3つの観点で評価をさせます。

そして、15 分間の最終プレゼンを行い、資金面などの実現可能性も評価・検討し、さらに皆で2つか3つのビジネスプランに絞り込んでいきます。

この時、教授側は学生たちがより多くの経験を積めるよう、複数分野のビジネスが試せるようなプラン選びを行います。

資金面では実際に、1事業につき30 万円程度の予算をつけています。ただし、すぐには渡しません。実際の起業のプロセスに近い状況をつくるために、学生側に、投資額を綿密に考えさせます。教授側も、「在庫の発注予定数が多い」「事業予定に対して投資要求額が多すぎるのでは」など、具体的にその根拠や妥当性を追求し、何度もやり取りして精査させます。

■後期:運営場面

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