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月刊 人材教育 2016年08月号

人材教育 The Movie ~映画でわかる世界と人~ 第46回 『悲情城市』川西玲子氏 時事・映画評論家

「悲情城市」
1989年 台湾 監督:侯孝賢(ホウ・シャオシェン)

川西玲子(かわにし れいこ)氏
1954年生まれ、メディア・エンタメ時評。
中央大学大学院法学研究科修士課程修了(政治学修士)。
シンクタンク勤務後、企業や自治体などで研修講師を務めつつ、コメンテーターとして活動。
著書に『映画が語る昭和史』(武田ランダムハウスジャパン)、『戦前外地の高校野球台湾・朝鮮・満州に花開いた球児たちの夢』(彩流社)等。





『悲情城市』
販売元:紀伊國屋書店
発売元:IMAGICA TV 配給:フランス映画社
価格:4800 円+税 DVD 発売中
第二次世界大戦後の激動の台湾を舞台に、歴史の波に否応なく巻き込まれていく林一家の面々を通して、家族の愛と悲しみを描いた作品。第46 回ヴェネツィア国際映画祭金獅子賞、第26 回金馬奨最優秀監督賞、主演男優賞を受賞。
©ERA INTERNATIONAL LTD.1989

台湾の現代史は複雑だ。第二次世界大戦終結後の国共内戦の最中に国民党が施行した戒厳令は、1987年まで37年間も続いた。その間、大陸では1949年に共産党による中華人民共和国が成立し、国民党政権の台湾と対立する。台湾は、東西冷戦におけるアメリカの同盟国として経済を発展させた。

だがアメリカは、ソ連へのけん制やベトナム戦争終結への思惑などから、中国に接近。後に日本に続いて国交を正常化した。一方、台湾国内では1970年代から民主化運動が盛んになる。戒厳令解除後の1988年には、本省人※の李登輝が総統に就任(当初2年は代行)。中国との関係に配慮した現実外交を展開した。

戒厳令解除によって、映画界にも新しい動きが起こった。架空のヒーロー物や恋愛物語ではなく、台湾の歴史や日常を描く台湾ニューウェーブの誕生だ。その象徴的作品がこの『悲情城市』。国共内戦に敗れた国民党政府が、台北を臨時首都に定めるまでの4年間に、ある一家がたどる運命を描いたものである。

戒厳令が解除されるまで公の場で語られることがなかった、後述の二・二八事件を描いたことも話題になった。この映画は第46回ヴェネツィア国際映画祭で金獅子賞を受賞し、侯孝賢監督は一躍、世界的な名声を得ることになった。

※第二次世界大戦前から台湾に居住する台湾人。対して、共産党との内戦に敗れた国民党と共に大陸から台湾に渡った人々と子孫のことを「外省人」という。

○激動の時代に残る日本統治の痕跡

物語は1945年8月15日の玉音放送から始まる。日本統治が終わり日本人の引き揚げが始まるが、船問屋を営む林リン家では、長男の文ブン雄ユウは地域の顔役となるものの、次男は日本軍の軍医として南方に出征したままで、三男も徴用され上海に行ったきり戻ってこない。耳が聞こえない四男の文ブン清セイは写真館を営んでいた。やがて三男は帰還するが、何者かの密告で漢奸として逮捕されてしまう。

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