J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年05月号

OPINION2 社内育成しないという選択も!? プロ人材は特性を踏まえ ホワイトカラーと異なる対応を

R&D部門で働くようなプロ人材には、どのような特性があるのか。
そして、そのような特性を持ったプロ人材に対して、どのようなマネジメントをすべきか。
プロ人材と組織の関係に詳しい西脇暢子氏に聞いた。

西脇暢子(にしわき のぶこ)氏
京都大学にて博士号(経済学)取得。専門は組織行動論、経営学、社会心理学。プロフェッショナルワーカーの組織内活用と管理の在り方や、組織と個人の関係を研究。著書に『組織論レビュー』(共著、白桃書房)などがある。

[取材・文]=増田忠英 [写真]=編集部

プロ≠ハイパフォーマー

R&D部門で働くようなプロ人材を、企業はいかにマネジメントすべきか。結論から言えば、ホワイトカラーに対するマネジメントと同じ方法では、プロ人材の能力を生かすことは難しい。プロ人材の特性を踏まえ、別のアプローチを取る必要がある。

そのために、まずはプロ人材がどういう人材か、捉えていきたい。

プロ人材というと、「すごい成果を出す人」というイメージを持つ人が多いだろう。しかし、もともとプロ人材とは、博士、弁護士、会計士、医師などのように、長期的かつ専門的なトレーニングが必要な、体系的な知識を獲得した人材のことであり、「すごい成果」を確約するものではない。駆け出しの医師や弁護士がいきなり目覚ましい成果を発揮できるかといえば、もちろんそんなことはない。経験を積み、自分なりのノウハウを蓄積していくことによって、体系的な知識の使い方を少しずつ身につけていくのである。

それにも関わらず多くの場合、プロ人材は、入社した瞬間から成果を期待されてしまう。この「プロ人材=ハイパフォーマー」という誤った認識を変えることが重要である。

ではプロ人材とはどういう人たちなのか。彼らのすごさはどんな点にあるのか。それは「何をすべきか・すべきでないかのストックが多い人材」という点だ。例えば、化学のプロはどの薬品を組み合わせると何が起きるかを熟知している。望ましい反応を引き出すための「すべき」ノウハウと、事故などの危険を未然に防ぐ「べからず」のノウハウを数多く持っている(図1)。

このように、専門知識を持っていることで物事を問題なく進めたり、日常を安定的に動かすために起こり得る問題を未然に防げるということが、プロ人材の「すごい」ところなのである。

研究職はできるだけ自律的に

R&D部門の人材もこの「プロ人材」であるわけだが、彼らに対し、上司や会社はどのようなマネジメントをすべきだろうか。

R&Dと一口にいっても、R(研究職)とD(開発職)の仕事はかなり異なる。研究職の仕事が、何もないところから何らかの成果物をつくり出すことであるのに対して、開発職の仕事は、研究職がつくり出したものを製品化・実用化することである。

研究職には、ゼロから1を生み出すような創造性が求められるだけに、マネジメントは特に難しい。自律的にさせたほうが、創造性は発揮されやすいからだ。例えば、2015 年に米連邦航空局(FAA)の型式証明を受けた小型航空機「ホンダジェット」は、ジェット機開発に必要な諸技術の研究の開始から30 年を経て実現にこぎつけた。このように、どれだけ自由にやらせて成果が出るのを辛抱強く待てるかがポイントになる。

開発職にはゴールを明確に

一方、開発職に求められるのは、具体的なゴールに向けて、専門知識を発揮して問題を解決していくことである。したがって、開発職に対するマネジメントも、この「ゴール」を明確に示せるかどうかということがカギとなる。

例えば、ある化合物ができたとしよう。A社はそれをうまく製品化できず、お蔵入りさせてしまった。しかしB 社は、それを製品化して売り出し、ヒットさせることができた。この場合、A社とB 社の違いはどこにあるのか。

それは、どのような製品をどんな市場にいつまでに提供するかというゴールを、経営やマネジメント側が開発職に明確に示すことができているか否かの違いである。それができていたB社は、開発職が能力を発揮し成果を出せたのだ。つまり、マネジメントの違いが問題なのである。

ところが、プロ人材の研究をしていると、プロ人材にしてほしいことを曖昧にしたまま、経営・マネジメント側が明確にすべき部分まで彼らに丸投げしているケースが多く見られる。これからバレーボールをするのかサッカーをするのかバスケットボールをするのかを決めずに、ただ「試合に勝て!」と言われても、どう動けばいいか分からないだろう。それと同じようなことが、企業でも行われているのである。

開発した製品の市場投入は数年先のことである。その時の市場の状況を予測し、新製品の戦略を決めるのは、まさに経営の役割である。そこがふらつけば、どんなに優秀なプロ人材・R&D人材がいても宝の持ち腐れになり、モチベーションも低下させることになる。

プロ人材は“ 特別扱い”すべき

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