J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年04月号

寺田佳子のまなまな 第4回 日本大学生産工学部創生デザイン学科 三井和男教授に聞く 「幸せなキモチの構造デザイン論」(後編)

今回の「まなまな」は、前回に引き続き、日本大学生産工学部創生デザイン学科の、三井和男先生です。
学生たちの興味と好奇心を掻き立て、学びへの関心を引き出すための三井先生の秘策に迫ります。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師、ATD(タレント開発協会)会員。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/YoshikoTeradaBook

三井和男(みついかずお)氏
日本大学生産工学部創生デザイン学科教授。工学博士。1977 年日本大学生産工学部数理工学科卒業。日本大学生産工学部で、助手、助教授などを務め現職。専門は計算工学。主な研究テーマは「自己組織化による構造形態の自律的生成と空間デザイン」「遺伝的アルゴリズムによるシステム最適化と形状デザイン」など。建築デザインコンペで、構造観点での技術調査員等を担う。

[写真] = 鈴木卓也

学ぶ面白さを教える

「いいなぁ~。こういう仕事がしたいなぁ~」

小学生の時、代々木にできたばかりのオリンピック競技場を見上げて、こうつぶやいた少年時代の三井教授。当時はイケイケ気分いっぱいの高度成長期である。ダイナミックな建築物に魅了され、モノづくりに憧れた子どもは珍しくなかったに違いない。

だが、彼がユニークだったのは、その夢に近づく過程だった。

就職を考えれば、建築ラッシュで引く手あまたの建築デザインの道に進むのが、堅実な選択だったろう。しかし、あえて選んだのは、「基礎である数学を学ぶこと」だった。

今、注目を集めるモノをつくることより、将来に役立つ新しいモノを追究するほうが面白い。そんな想いを胸に、遠回りにも見える道のりをたどったのが、その後の「変化の時代」で大いに役立つことになった。

「数学のようなソフトな学問をバックグラウンドに持っていたので、思いがけなくモノから情報へと研究対象を大きく変えることにも、柔軟に対応できたのです。この経験は自分にとって大きな財産になりました。だから学生にも、何か1つのモノをつくる技術をキッチリ身につけるより、いろんなものに興味を持って、好奇心旺盛にチャレンジするほうが将来の役に立つよ、って言っているんです。学生たちは、これからどんな世界に飛び込むか分からない。なのに1つのモノしか知らないと、それが通用する狭い世界でしか生きていけなくなる。変化の時代に置いてきぼりを食ってしまいますからね」

なるほど!

今ある“知識・技術を教える”のではなく、将来生まれる新しい“知識・技術の学び方を学ばせる”“新しいことを学ぶ面白さを学ばせる”ってことですね。変化のスピードがますます速くなる時代なのだから、それはとても大切なことに違いない。

最初は愉快なネタ探しから

ただ、どうやって、興味と好奇心を掻き立てるのだろう?

「それはね、ネタとハードルとサイズ、です」

ん?“ネタ”と“ハードル”と“サイズ”?“ネタ”って、漫才でもするんですか?

「はは(笑)。作家の井上ひさしさんの言葉に、『むずかしいことをやさしく、やさしいことをふかく、ふかいことをおもしろく、おもしろいことをまじめに、まじめなことをゆかいに、そしてゆかいなことはあくまでゆかいに』っていうのがあるんですが、僕、これが大好きで。とにかく、学生が深いことを面白く、まじめなことを愉快に学べるようにする。そのために必死になって面白くて愉快なネタ探しをするんですよ」

へぇ!では、講義準備はネタ探しからですか?

「そう。学生たちがまだ知らない世界を見せるのが僕らの役目。そして、それを嫌いにさせちゃったらオシマイだから、くどくど全部を説明せずにチラっとだけ見せて、なんか面白そう、とその気にさせるのがワザですかね。ま、僕が言った愉快なことがそのまま企業や社会で役に立つとは思いませんけど(笑)」

いえいえ、「ネタ探し」と「チラ見せ」ワザだけでも十分に役立つかと。

で、次の“ハードル”とは?

「ちょっと頑張れば跳び越えられる、と思えるようなハードルを設定するということです。“難しいことを易しく”見せるということですね」

どんなに素敵なこと、夢見たことでも、自分の力ではとても届かない高いハードルだと感じた途端、学生はそれを別世界の「他人ごと」とあきらめてしまう。それをなんとか、「自分ごと」と捉えさせ、跳んでみようという気概を持たせるためには、学生の許容範囲をほんの少しだけ上回る高さにハードルを合わせる工夫が必要だ。

実は教授自身も、新しいハードルを前に躊躇したことがある。

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