J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年04月号

CASE 2 大里綜合管理 根底にあるのは会社の一途な志 “ありがとう”の心地良さが 若者のやる気を引き出す

本業とボランティアの割合が6:4。そんな異色の会社が存在した。
千葉県・大網白里市の不動産会社、大里綜合管理だ。
同社では、ボランティアを行うことで従業員のモチベーションが上がり、それが本業にも生きている。その秘訣はどこにあるのか。
社長の野老真理子氏に話を聞いた。


野老(ところ) 真理子氏
大里綜合管理 代表取締役

大里綜合管理
1975年創業。不動産の維持管理・売買・賃貸借仲介、また、木造住宅の設計・施工管理等を行う。
94年、創業者の母より受け継ぎ野老真理子氏が代表取締役に就任。本業と共に地域環境整備に関するボランティア活動にも力を入れる。
資本金:1000万円(2015年4月)、
売上高:4億3000万円(2015年3月末日)、
従業員数:22名(2016年2月)

[文]=編集部 [ 写真]=大里綜合管理提供、編集部

●理念 仕事の4割はボランティア

「みんな、集まって」。平日の15時30分過ぎ。1人の女性の呼びかけで10人ほどの社員がグランドピアノの前に集まり、スタートしたのはなんと合唱だ。女性の軽快な指揮に合わせて『遥かな友に』を歌い始める。どの社員の顔も、生き生きと輝いている―。

土地管理や不動産の売買、賃貸等を行う大里綜合管理。驚くことに、同社の業務は本業6割、ボランティア4割だという。22人の社員は、道路や駅、海岸など地域の清掃、地元の人材を生かしたカルチャースクールの主催といったボランティア活動を行っている。社屋の2階スペースは、昼は近隣住民が日替わりでシェフを務めるレストランになり、その後は学童保育施設に変わる。現在、同社で行う地域貢献活動は、283種類に及ぶという(図)。

そんなユニークな不動産会社をまとめるのが、冒頭の合唱で指揮を務めた代表取締役の野老真理子氏である。

「仕事中の合唱、おかしいですか?でも、いいじゃないですか。会社に寄ってくださる皆さん、喜んでくれますから。仕事って本当は楽しくて、かけがえのないものなんですよ。もちろん我慢や苦労が必要な面もあるけれど、決してそれだけではないはず。こんなふうにお客様が喜んでくださり、自分たちも喜びを感じられるものなら、どんどんやっていこうというのがこの会社の方針なんです」

同社には若い社員も多いが、皆、自らアイデアを持ち寄り、自主的に働いている。なぜ、こんなに高いモチベーションで働くことができるのか。

●具体策 生き生き働ける理由

理由1:「ありがとう」の心地良さを体感できる

同社がボランティアとして行う、暮らしやすい町にするための活動や、地域を活性化するための活動は、この町の魅力を高め、ひいては同社が扱う不動産の価値を高めることにつながる。地域の人たちから信頼されることで、不動産業の顧客も増えるだろう。

だが、ボランティア活動の最大の目的は、「社員教育」なのだと野老氏は言う。

「“ありがとう”の心地良さを感じさせることが大切だと思っています。仕事とは、誰かの役に立ち、ありがとうの言葉と共にお金を頂くもの。ボランティアはお金を頂かないだけで、本質は仕事と一緒なんです。ボランティアを通じてありがとうの心地良さを味わっていれば、仕事のスキルを身につけ、それを“お客様の役に立つ”“ありがとうを頂く”という仕事の本質のために使える人間に育つんです」(野老氏、以下同)

同社の新人社員が不動産の知識やスキルを使って顧客から「ありがとう」の言葉をもらうためには、3~4年かかるという。しかし、道の掃除やゴミ拾い、イベントの受付といったボランティア活動であれば、入社したその日から“ありがとう”と言ってもらうことができる。

初めは嫌がっていても、徐々にやりがいを感じられるようになり、結果的に本業のモチベーションアップにつながるケースもある。例えば、水仙の球根を植える活動だ。同社では管理する土地の草刈が終了すると、ボランティアでそこに水仙の球根を植える。球根を植え始めた頃は、「なぜこんなことをするのか」と嫌がる社員もいたというが、水仙の花が咲き、土地のオーナーだけでなく近隣に住む人たちにも喜んでもらえるようになると、地域に貢献している実感を得られ、自分の仕事に誇りを持てるようになるのだそうだ。

理由2:アイデアを即、実践できる

社員が新しく始めようとする仕事に関して、一切「企画書」を書かせないというのもユニークである。

「企画書を書かされて、それを見ながら“どんなビジネスに結びつくのか”“採算は合うのか”などと聞かれたら、せっかく生まれたやる気の炎がどんどん小さくなってしまいます。“これがやりたい”というアイデアを、企画書を書かせることでつぶしてはいけません。うちの場合は、生まれた炎には油を注ぐんです」

本人の努力でできることなら、何をやってもいいではないか、とりあえず何でもやらせてみよう、というのが野老氏の考えなのである。

社員のやりたいようにやらせたら、失敗することもあるだろう。しかし野老氏は、社員の失敗を全く恐れていない。

「失敗したら謝ればいいんですよ。やらないで考えているよりやって失敗したほうが、数倍も数百倍もその人の経験になりますから。失敗することって、本人の権利ですよね。それをさせなければ、人は育てられないと思います」

社員のチャンスを広げる試みのひとつに“ナノビジネス”がある。会社が毎年、社員一人ひとりに支給する5千円の資金を元手に、それぞれが自分の“事業”を立ち上げ、売上目標の達成をめざしているのだ。「地域の役に立つこと」「自分がやりたいこと」「本業の邪魔にならないこと」。これさえ守れば、どんなビジネスでもOKだ。自作した菓子の販売、健康麻雀イベントの開催、廃材を使った家具の製作、珍しい野菜の仕入れ・販売など、ユニークなビジネスが展開されている。

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