J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年04月号

OPINION3 キーワードは「理解」と「改善の継続」 グローバル若手社員に 愛される会社づくり

実は海外の優秀な若手人材が注目しているのは日本企業である―こう語るのは高度外国人材の採用に詳しい柴崎洋平氏だ。
一方で、せっかく期待を抱いて入社した彼らがモチベーションダウンし、離職してしまうケースは後を絶たない。
グローバル社員の納得感を高める、風土と人事制度の改革とは。


柴崎洋平( しばさき ようへい)氏
フォースバレー・コンシェルジュ 代表取締役社長/CEO
1975 年東京生まれ。幼少期をロンドンで過ごす。上智大学外国語学部英語学科卒業後、ソニー入社。携帯電話向けカメラの商品企画、半導体の営業・マーケティングなどに従事し、通信機器のグローバル企業とビジネスを行う。2007 年にフォースバレー・コンシェルジュを設立。世界中の学生の留学・インターンシップ・就職をサポートするビジネスを展開している。上智大学非常勤講師、世界経済フォーラム(ダボス会議)Young Global Leaders (YGL)2013 選出。

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=フォースバレー・コンシェルジュ提供、田邉泰子

日本企業の魅力とは

世界は優秀な人材で溢れている。もし彼らが、日本企業で力を発揮できたなら、競争力低下や労働力不足といった、我が国の産業における課題解決も夢ではないだろう。

そこで当社では世界中のトップクラスの大学と提携し、学生たちに向けた日本企業の就職プロモーション活動、優秀な人材と企業とのマッチングなどを手がけている。さらに入社後の人材のリテンションといったフォローアップサービスも行う。

海外の学生たちとのネットワークは世界30カ国、およそ700大学に広がっているが、彼らの日本企業に対する関心度は決して低くない。複数の世界の大学ランキングでアジアNo.1のシンガポール国立大学で就活セミナーを開けば、約300人を収容できる講堂が、学生でいっぱいになる(次ページ写真)。

彼らは日本企業で働くことにどのようなモチベーションを見いだしているのだろう。それを知るには、「母国以外の国で就職する」ことが、外国人にとって当たり前ではない、という実情を理解しておく必要がある。

確かに、Googleなどのトップ企業が世界の超優秀な学生を破格の条件で採用する例はある。だが多くの海外グローバル企業では、現地法人ごとにその国の人材を採用するのが一般的だ。本社で働けるのは、現地法人で特に成果を出した、一握りの人材のみである。

一方、日本企業では採用方法が異なる。正社員になれば日本の本社に勤務する道も開ける。そうなれば母国にある拠点に、マネジャーとして派遣されるチャンスも巡ってくるかもしれない。

国際競争力の低下を指摘されながらも、日本企業のブランド力はいまだ根強い。また、中途採用が一般的な海外企業と違い、新卒一括採用を行うのも日本企業ならではの特色である。大学を卒業してすぐ有名企業に就職できる点は、外国人学生にとっては大きな魅力といえる。

冒頭で述べたように、日本企業にとっても高度外国人材の需要は増すばかりだ。今後、国内の労働人口は減少の一途をたどる。人材の母集団が縮小するということは、それだけ優秀な人材の絶対数が減るということだ。優秀な人材の確保は、企業の死活問題に関わる。国内の労働市場だけに注目していては、競争力低下は免れない。

これからは、世界中から優秀な人材を集め、彼らのモチベーションを維持、喚起していかなければ、企業経営は立ち行かなくなるだろう。

戸惑う“評価の曖昧さ”

しかし、新卒で入社したエリート外国人が日本独特の人事制度や企業文化に馴染むのは、なかなか難しい。残念ながら数年で会社を辞めてしまうケースが後を絶たないのが現実である。

彼らが辞めてしまう理由は、どこにあるのか。本人たちにヒアリングすると、「評価制度の曖昧さ」に不満を感じるという声を非常によく聞く。

海外の企業では実力が全てだ。評価体系は成果主義に基づいている。入社早々の若手も例外ではなく、2、3年という短いスパンで成果を出そうと、自身の専門性を駆使し必死で働く。ミッションを達成すれば昇進できるし、培ったキャリアをベースに、転職という形で新たなチャレンジにも臨めるからだ。雇用市場が流動的なアメリカなどでは、実力が伴えば20代で部長としてヘッドハントされることも夢ではない。

また、海外の企業は、その“実力”の評価尺度が非常に明確だ(図1)。言い換えれば、「20代で部長になる」というゴールを設定する場合、どの時点でどのような成果を上げる必要があるかという、ロードマップを描くことが可能なのである。

それに対し、日本はまだまだ終身雇用を前提とした年功序列の色が強い。特に伝統的な日本の大企業では、「20代部長」などほぼゼロだろう。それどころか、入社後数年間は下積みの期間で、大学での専門を生かすよりも、社会人として経験を積み、視野を広げるほうが大切だとされる。特に文系ではその傾向が強く、専攻や研究テーマと関係のない配属になることが多い。任せられた仕事に取り組んだ結果、それがどのように評価され、今後のキャリアにつながるのかも不透明だ。

就職先に日本企業を選んだ外国人たちは、“年功序列”というシステムを頭では理解したうえで入社している。しかし、日本人のように昇進していく親の背中を見て育ち、その仕組みを感覚的に理解しているわけではないから、本当の意味で腹落ちしにくい。

そのため、日本に来てしばらくすると就職前に抱いていたイメージとのギャップに戸惑うことになる。数年経っても目に見える実績を残せなければ焦りも募るだろう。次第に「いつまでこの仕事を続ければいいのか」「いつか世界から取り残されてしまうのでは」と不安に駆られるようになる。やがてモチベーションの維持が難しくなり、「これから」という時に、転職したり母国へ帰ったりしてしまうのである。

改善意識の重要性

外国人社員のモチベーションが低下する要因がもう1つある。彼らの孤独感を深めるような、単一的な職場環境だ。実際、“外国人であること”が働く障がいになりかねない現実に気づき、改善を重ねた企業では定着率が上がっている。

改善内容は、英語を公用語にしたり、イスラム教徒が日々の礼拝を行えるスペースを用意したりといったものである。もちろん、共に現場で働く日本人社員にも、外国人社員の考えや文化を理解し、彼らを受け入れる姿勢が求められる。

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