J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年03月号

負けないマネジャーのための孫子 第18回 「危機感」で有事を乗り切る教え

社員が安穏として危機感に欠けていると感じる経営者は多いものです。
どうすれば危機感を抱かせることができるのでしょうか。

青柳浩明(あおやぎ ひろあき)氏
ビジネス論語スクール主宰。幼少から40年にわたり、「論語」「孫子」等の漢籍を学び、ビジネス現場でSE、PM、経営企画等の実践を積む。中国古典の伝播活動として企業団体等で精力的に講義・講演活動中。著書に『論語説法』(講談社)他。aoyagi@rongo-school.com

有事に能力を発揮させるには

今月の章句は、個々の社員が常日頃から危機感を抱いていれば、厳しさを増す経営環境や有事の際でもうまく乗り切れるという教えです。

「衆は害に陥りて然る後に能く勝敗を為す」の「害」とは、ビジネスの場面でいえば、不祥事などのトラブルやミス、業績不振や赤字といった有事の状況を指します。「能く勝敗を為す」は、有事に陥った際に危機感を抱いた各人が、持てる能力をフルに発揮して窮状を打破できるか(勝)、あるいは逆にプレッシャーに押しつぶされてさらに事態が悪化するか(敗)。それは、その人次第だということです。

人間、逃避できない厳しい状況下では、やり抜くしかないと覚悟し、全力を尽くすものですが、必ずしも社員が自然にそうなるとは限りません。マネジャーは、社員が平時からそのような姿勢を持つように、差し向ける必要があるのです。

能力を発揮させる2つの工夫

今月の章句の前段部分を眺めると、そこに能力を発揮させる2つの工夫が見てとれます。

1つは、「無法の賞を施し、無政(むせい)の令を懸(か)く」ことです。例えば、敵地での掠奪行為。長い歴史の中、戦に勝利した褒美として敵国内での掠奪行為を例外的に認める施策は、古今東西で頻繁に行われてきました。軍隊の規律として現在は許されるものではありませんが、戦友を失い自らも負傷しながら命がけで長き戦闘に耐え、勝利に尽力した兵士を労うために、敢えて行うことがありました。

これは極端な例ですが、たまには規定外の厚い報奨や、特別な規則・施策などを打ち出し、社員の気持ちを現状打破に向かわせるための工夫も必要だということです。

もう1つは、「これを犯(もち)うるに事を以てして、告(つ)ぐるに言(げん)を以てすること勿かれ。これを犯うるに利を以てし、告ぐるに害を以てすること勿かれ」。

これは、軍隊を動かす時は任務を与えるだけにして、その理由を説明してはならない。戦闘の有利な面だけを知らせて、害になることを知らせるべきではない、という工夫です。

常道は、事前の説明をしっかりと行い、納得のうえで仕事に取り掛からせることですが、それはあくまで平時のこと。今月の章句は有事の教えです。ネガティブな情報が知れわたると、怯んだり、逃げたりする人も出てきますから、それを防ぐ必要があるのです。これは、悪意に基づく隠ぺいや虚言ではありません。目的は、余計な情報を与えずに、部下を安心させることにあります。

カテゴリー解説

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