J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年03月号

寺田佳子のまなまな 第3回 日本大学生産工学部創生デザイン学科 三井和男教授に聞く 「幸せなキモチの構造デザイン論」(前編)

今回のお相手は、寺田さんが「プレゼンテーション」の授業を受け持つ、日本大学生産工学部創生デザイン学科で、構造設計を研究する三井和男教授です。
「アートとテクノロジーの融合」「柔らかい工学」というユニークなテーマを掲げる学科の、ユニークな学びのお話を、ユニークな研究室で伺いました。

寺田佳子(てらだよしこ)氏
ジェイ・キャスト常務執行役員、IDコンサルティング代表取締役、日本イーラーニングコンソーシアム理事、IT人材育成事業者協議会理事、熊本大学大学院教授システム学専攻講師、日本大学生産工学部非常勤講師、ATD(タレント開発協会)会員。著書に『学ぶ気・やる気を育てる技術』(JMAM)など。https://www.facebook.com/YoshikoTeradaBook

三井和男(みついかずお)氏
日本大学生産工学部創生デザイン学科教授。工学博士。1977 年日本大学生産工学部数理工学科卒業。日本大学生産工学部で、助手、助教授などを務め現職。専門は計算工学。主な研究テーマは「自己組織化による構造形態の自律的生成と空間デザイン」「遺伝的アルゴリズムによるシステム最適化と形状デザイン」など。建築デザインコンペで、構造観点での技術調査員等を担う。

アイデアをすぐカタチに

三井教授の研究室は愉快で美しい。不思議なカタチ、面白いデザインが溢れ、しかも全体がオーケストラのように調和し、何とも心地良いからだ。

教授の好奇心の幅広さを証明するように、サイコロのようなもの、ランプのようなもの、ボールのようなもの、尿し瓶びんのようなもの(教授曰く!)……。と、本当は何だか分からない「のようなもの」がたくさん並んでいる。

だから、一つひとつを手に取って、「これは?」「へぇ!」「どうやって?」「すごいですね!」と、ひとしきり「びっくりポン」の連続をしてからでないと、本題に入れない。

ちなみに先ほどの「尿瓶のようなもの(!)」は陶器でつくったiPhoneスピーカーだそうで……(汗)。

その教授、学生が3Dプリンターで製作した水差しをしみじみ眺めて、

「アイデアがひらめいたら、すぐプログラムを書き、そしてカタチにする。そのサイクルの早さに、今、ものすごくワクワクしてるんです」

と、実に楽しそうなのである。

こんな三井教授のワクワクに、最初に火がついたのは1964年のこと。そう、東京オリンピックの年だった。

親戚中がみんな建築関係という環境で育ち、ごく自然に建築に興味を抱いていた小学5年生の三井少年は、国立代々木競技場を間近に見上げて、その流れるような美しさと迫力に圧倒され、思わずこうつぶやいた。

「いいなぁ~。こういう仕事がしたいなぁ~」

それまで漠然としていた将来の夢が、大きく輝く「カタチ」となって目の前に現れたのである。

その競技場を建築設計したのが日本を代表する建築家の丹下健三氏、そして構造設計を担当したのが「世界のツボイ」と呼ばれる坪井善勝氏である。ワクワクを胸に、迷わず大学で数理工学を選んだのも、坪井門下の指導者がたくさんいることが魅力だった。

柔軟な変化と数理工学

ところで、「構造設計」や「構造デザイン」とは何なのか。そもそも、「建築設計」「建築デザイン」とどう違うのか。教授の言葉を借りれば、

「強度の面から設計を考えるのが構造設計」。

少々乱暴な解釈をすると、「こういうカタチが良い」とイメージを示すのが建築家ならば、緻密な計算の基に、「それを実現するためにはこういう構造・工法・素材・デザインが良い」とソリューションを提案するのが構造デザイナーということ、らしい。人体に例えると、全身のプロポーションの美しさを描くのが建築、そのスタイルを支える骨格や筋肉の構造、内臓や血管のすみずみにまで気を配ってつくり上げるのが構造、ということになる。

大学では坪井先生の弟子にあたる数学者に師事したのも、将来、あのワクワクする構造デザインをするには高度な数学の知識が必要と考えてのこと。

だが、当時は高度成長期。「建築?いいねぇ!」だが、「数理工学?何それ?」といわれたモノ優先の時代だった。しかし、「何それ?」と不思議がられた知識が、やがて大いに役立つことになる。

「バブルがはじけて、大学も淘汰される厳しい時代になりましたからね。社会のニーズに合わせて、研究テーマも学部学科の編成も、モノから情報へと柔軟にシフトしないと、生き残れなくなったのです」

大学も、「しなやかに、スピーディーに変化する力」が求められる時代がやってきた、というわけだ。

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