J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2016年03月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 良質なサポートビジネスの鍵は 尊敬・革新・笑顔のマインド

IT化や急速なグローバル化の潮流の中で、企業を取り巻く環境は、ますます複雑化し激変している。
コールセンターやITサポートのアウトソーシングサービスを担う富士通コミュニケーションサービスも、ITアウトソーシングサービスからCRM(顧客関係管理)アウトソーシングサービスへと幅を広げてきた。
その転換や継続したサービスを支える組織として「ユニークな個性あふれる企業づくり」を推進するのは、社長の乙黒淳氏だ。
具体策を聞いた。


乙黒 淳 (Atsushi Otoguro)氏
富士通コミュニケーションサービス 代表取締役社長

生年月日 1956年9月23日
出身校 早稲田大学政治経済学部
主な経歴
1980年 4月 富士通 入社
1994年12月 富士通コミュニケーションサービスへ出向
1995年 5月 同社 マーケティング本部 販売推進課長
2005年11月 取締役 HR統括部長
2007年 4月 取締役 コーポレートサービス本部長
2008年 4月 取締役 事業推進本部長
2011年 6月 常務取締役 営業本部長
2013年 4月 常務取締役 ソリューション本部長
   6月 代表取締役社長(現職)

企業プロフィール
富士通コミュニケーションサービス
1994年、コーポレートソフトウエアとして創立。全国10カ所のサポートセンターと顧客先での常駐のオンサイトサービスを実施。事業領域はコンタクトセンター、ITアウトソーシング、セールスマーケティング、バックオフィス。
資本金:4億5000万円、売上高:184億円(2014年度)、従業員数:3800名(2015年3月現在)


インタビュー・文/浜名 純
写真/中山博敬

変化なくして成長なし

―富士通コミュニケーションサービス(CSL)は、企業向けサービスプロバイダーとしてスタートし、2014年に創立20周年を迎えました。「顧客のビジネスに貢献する真のパートナーとなる」と標榜していますが、今後の経営の方向性については。

乙黒

当社が設立された1994年は、マイクロソフトのWindows95が世に出る約1年前です。最初の10年間は、提携したアメリカのストリーム社のビジネスモデルを取り入れテクニカルなサービスを行い、次の10 年は富士通系のパソコンのサポートなどを大きなプロジェクトとして行ってきました。これからは自主ビジネスを拡大していこうというのが大きな流れです。

例えば、クラウドやビッグデータなど、我々を取り巻く環境は大きく変わりつつあります。その真っ只中にいるのが我々のビジネスですから、我々自身が変化していかなければなりません。社会の変化に対応し、我々も変化する―これが当社のベーシックな考えであり、変化の流れが速ければ速いほど、我々も速く変化していかねば生き残っていくことができません。変化なくして成長はない、というわけです。

―「顧客接点」も重視されています。

乙黒

クライアントは多種多様な業種・業務の企業です。しかし、お客様と触れ合う「顧客接点」というビジネスプロセスを我々がアウトソーシングで受けている、ということは共通しています。

そこで、顧客接点における運用サービスを「顧客接点BPO(Business ProcessOutsourcing)」と定義し、人とICTが高度に融合し卓越したサービスを提供することにより、お客様の成功に貢献することをめざしています。

では、その顧客接点BPOを、どう進化させていくのか。その進化を実現させるのが我々の人と組織の変化であり、人材育成であるということができるでしょう。

“CSL Statement”

乙黒

当社は、ハードを作っている会社ではなく、100%、サービスを提供する会社です。サービスは基本的には人が提供するもので、サービス=人、に他なりません。そういう意味で100%、「真実の瞬間」の会社と言っても過言ではないですね。

「真実の瞬間」とは、1980年代、スカンジナビア航空が経営再建に取り組んだ際のキーワードで、同社を復活させた要因の一つとなったものです。経営コンサルタントのリチャード・ノーマンが提唱し、当時のヤン・カールソン社長兼CEOが書いた著書『真実の瞬間(邦題)』で注目されました。一言でいえば、「顧客は、その企業に接する瞬間(ほんの短い時間)で、その企業のサービス全体に対する良し悪しを判断する」ということです。

お客様にとって当社のコールセンターで電話対応を行うオペレーターのAさんは、まさに我が社を代表しており、一言一言、一秒一秒が真実の瞬間なのです。

そこで、どんな人材が望まれるかについて、20周年を機に「CSL Statement」を制定しました(左ページ写真)。

CSL Statementは当社のビジョンと価値をまとめたものです。「OurVISION」「Our PROMISE」「CSLMIND」の3つから成ります。

そして、CSL MINDでは、大切にする行動原則として「Respect」「Innovative」「Smile」を挙げています。真実の瞬間を意識してサービスを最大限に素晴らしい品質にするためには、自分を取り巻く人々に対するリスペクトマインドが必須であり、変化し成長するためには、今の自分を変え、絶えず新しい価値創造にチャレンジする、すなわちイノベートすることが重要です。また、自分自身がビジネスを楽しむという気持ちがないと良いサービスは提供できません。必然的に笑顔(Smile)が大切になるのです。

めざすは“ユニーク”な会社

乙黒

加えて、Our VISIONでは、「私たちは、豊かな個性を高め合い、常にサービスを革新し続け、笑顔あふれる、ユニークな会社をめざす」ことを謳っています。

当社は新卒も採用しますが、通年採用、キャリア採用がほとんどで、3800人の社員のほとんどが多種多様な分野を経験した人の集まりです。それが、当社のチャンスであり、アドバンテージ。皆の長所や得意分野に注目し、そうした皆さんのキャリアや個性を強みとして最大限に伸ばしていく。OurVISIONの「豊かな個性を高め合い」という表現には、そんな意味が込められています。

そういった個性で、サービスを革新し続け、変化させて「笑顔あふれるユニークな会社」を実現するというのが我々のビジョンです。他に比べられるものがないような“唯一無二”の会社を自分たちでクリエイトしていこうという気持ちを表しているのです。

―継続的な変化やイノベーションをめざす際に、留意すべき点はありますか。

乙黒

成功体験が重なるとそれに頼り、次もうまくいくだろうと思ってしまうこと、でしょうね。イノベーションには、今の業務を改善するものと、全く新しいことをやる、ある意味破壊的なイノベーションとがあり、時には後者が必要になりますから。

ただ、社員たちには、まずはもっとイノベーティブになってほしいと願っています。

経営で一番大事なこと

―次代を担う経営幹部の育成にも注力されています。社長が思う、経営に関して一番大事なこととは。

乙黒

私はそれは“経験”だと思います。経営理論をいくら身につけたとしても、実際に経営ができるとは言えないからです。お客様から厳しいご指摘を受けるといった経験をしなくては、社内やサービスを具体的に改善することはできないのです。ですから経営幹部に望むのは、いろいろな経験をするということです。

私自身、社長になる前に当社の全部署を経験しました。サービスを提供している部門の部門長も担いましたが、お客様に呼ばれて、「なんでこんなことになったのだ。来週までに改善提案を持って来い」とお叱りを受け、改善案を持ってうかがったことなどもありました。

私は、上級社員は皆、経営の一部だとよく言っています。ぜひさまざまな経験を積んで、会社の経営にも携わっていってもらいたいと思います。

一方、会社としては社員たちにいろいろな経験が出来る場を用意することが重要になります。

―その“経験”には、現場を肌で知ることも含まれていますか。

乙黒

はい、とても大切です。私は当社に来る前、富士通本社に在籍していた時、現場に行く機会があまりなかったのですが、当社のスタートアップに参加して以来、全てが変わりました。全部署を経験したことで、当社の現場の第一線で働く人にとてもインスパイアされたのです。これはまさに、私のビジネス人生の大転換です。その意味でも、全く異なる環境でさまざまな経験をするというのは素晴らしいことです。

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