J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年08月号

OPINION3 男性中心の組織はこうすれば変わる 成果を公正に評価し、暗黙知を共有する

従来、日本の企業では、出世しようとすれば深夜残業と飲みニケーションが欠かせなかった。
同じ公式を育児中の女性にあてはめられるだろうか?
もちろん、答えは「ノー」だ。残業しなくても、飲み会に出なくても、女性がキャリアアップできるような制度づくり、組織づくりとは。
女性活躍やダイバーシティ・マネジメントなどに詳しい塚田聡氏が解説する。

塚田 聡( つかだ さとし)氏
三菱UFJリサーチ&コンサルティング 経済・社会政策部 副主任研究員。慶應義塾大学経済学部卒業、慶應義塾大学大学院 社会学研究科社会学専攻 前期博士課程修了(修士)。金融機関、外資系コンサルティング・ファームを経て現職。女性活躍推進・ダイバーシティマネジメント戦略室所属。ワークライフバランス推進支援、看護職の確保・定着サポート、マネジメント能力向上による業務効率化・生産性向上の支援も行う。
[取材・文]=Top Communication [写真]=編集部

日本の組織に特有の問題

女性のキャリア形成が難しい理由はいくつかある。育児中の女性は、男性社員と同じような働き方ができなくなる。出張、転勤、残業がしづらい、などだ。中でも最大の問題は、残業が困難になることだろう。もちろん、短時間で効率よく仕事をこなす女性は少なくない。それでも、長時間労働ができないと、“一人前”の戦力とみなされない風潮がある。

そこには日本企業の組織のあり方が密接に関わっている。

そもそも日本企業の雇用、組織のあり方は「メンバーシップ型」と類型化されている。正社員は契約上、職務も勤務場所も限定されない。彼らが中心メンバーとなり、企業という「共同体」を支えていることからこう名づけられた。

なぜ、メンバーシップ型組織が女性活躍を阻むのか。理由を改めて考えてみたい。

■メンバーシップ型の落とし穴① 業務の空白地帯がある

メンバーシップ型組織の特徴のひとつは、職務の範囲が曖昧なことだ。一応、社員はそれぞれ自分の役割、担当業務を持っている。にもかかわらず、誰の担当なのか曖昧で、チームとしての対応が求められる業務の「空白地帯」がある(図1)。これらの仕事は、周囲の人々の“頑張り”によって片付いていく。

しかし、短時間勤務、あるいは定時で帰宅する女性は、自分の業務の範囲を超えた仕事をなかなか担えないのが現実だ。

■メンバーシップ型の落とし穴② 残業が評価される

一方、上司の評価は、空白地帯の仕事をどれだけ負担したかに左右される傾向がある。自分の仕事をやり遂げるのは当たり前。組織やチームへのさらなる貢献こそが評価の源泉となる。

必然的に、労働時間が評価の尺度になりやすい。ノー残業デーが広がるなど、残業時間削減が叫ばれる昨今だが、それでも、毎日定時で帰る社員より、(必要性が高いかどうかは別として)やり手のいない仕事に深夜まで取り組む社員のほうが受けがいい(図2)。したがって残業できない女性は評価も上がりにくくなってしまう。

■海外に多いジョブ型の特徴 業務の空白地帯が少ない

メンバーシップ型と対照的なのが、欧米企業に多い「ジョブ型」組織である。ジョブ型では、役割、担当、権限が明確に定められている(図1)。反面、柔軟な対応力には欠けるため、役割や担当の境界線でトラブルが起こった場合は、責任の押し付け合いが発生しがちだ。

ただ、一人ひとりの仕事の領域がはっきりしている分、自分で仕事の進め方を決めることができる。長時間労働を暗に強制されることもない。

女性の活躍を推進するうえでは、ジョブ型組織に利がありそうだ。

情報不足の問題

日本の組織では、仕事だけでなく、情報面においても女性が蚊帳の外に置かれやすい。

従来、男性たちはインフォーマルなコミュニティ(明文化されない組織の文化や慣習、暗黙のルールなどを共有する非公式な人間関係)、いわゆる「オールド・ボーイ・ネットワーク」を築いてきた。長時間を共に過ごすからこそ、互いを熟知し、共通の価値観を醸成できるのだろう。空白地帯における仕事の役割分担は現場の阿あ 吽うんの呼吸で決まることが多いが、それも高コンテクスト文化(言葉ではなく雰囲気や状況で察し合う文化)を共有しているからできることだ。

喫煙所での休憩タイム、飲みニケーションも、いまだに貴重な情報交換の場になっている。大抵は他愛のない雑談を交わしているが、時々その中に新しいプロジェクトの方針や、次期部長候補の名前といった重要な話が交じることがある。情報によっては仕事上、有利になったり、昇進・昇格に関係するものもあるだろう。

女性はこのネットワークから排除されていることが多く、キャリアアップのタイミング、チャンスを逃しやすい。

長時間労働を抑制する

以上からわかるように、女性がライフイベント後もキャリアアップするには、長時間労働が評価される仕組みを変えると共に、インフォーマルな場でやりとりされている重要な情報をみんなで共有することが必要だ。

まず、長時間労働への対応だが、労働時間ではなく、成果に評価軸を置くことを徹底すべきだろう。

実際に成果による評価を徹底している企業を見ると、トップが長時間労働をよしとせず、成果を評価のベースとする方針をはっきりと打ち出している。こうした企業には、他に以下のような工夫も見られる。

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