J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年05月号

TOPIC−1 「アトリエMALL」プロジェクトレポート 越境アクションラーニングで得られる学びとは ~若手ビジネスパーソンたちの挑戦 <後編>~

異業種の若手企業人たちがオリジナルの人材育成イベントの開催をめざす「アトリエMALL」プロジェクト。
先月号では2014年にイベントが行われるところまでを時系列にレポートした。
本号では、いよいよ彼ら彼女らにとって、どんな経験が学びとなったのか、その一端を紹介したい。

取材・文/井上佐保子 写真/編集部、参加者提供

アトリエMALLのおさらい

「アトリエMALL」は若手企業人が体験を通して学ぶ場を提供したいとの目的で、「さまざまな企業に所属する参加者が会社の枠を『越境』し、人材育成イベントの企画、実施を通して『学びの場づくり』を学ぶ越境型アクションラーニング・プロジェクト」として企画された(主催:一般社団法人 経営学習研究所〈MALL〉、代表理事は東京大学・中原淳氏)。

2014年夏からトータルで5カ月ほどをかけて行われ、参加者は多くの応募者から選考された25歳以上39歳以下のビジネスパーソン13人だ。8月のキックオフミーティング後、2チームに分かれてイベント開催をめざした。

さまざまな困難や危機を乗り越え、両チームとも無事11月下旬にイベントを実施した。イベント名は次の通り。

○Aチーム(チーム名:ほしぐみ)

「“学びの原点”から学ぶ、おとなのためのワークショップ ~『よるのほいくえん』で見つける創造性のカケラ~」

○Bチーム(チーム名:S-park)

「あなたの仕事を旅行に変える~仕事に対する新たな視点をみつけよう!~」

実施前と当日の模様は、小誌2015年4月号74ページに詳しい。

異業種プロジェクトの難しさ

このプロジェクトを進めていく困難さはどこにあったか。企画づくりの初期段階では、過程は異なるものの、両チームとも同様の壁にぶつかった。チームで1つの目的を達成するためには、思いを共有することがカギとなる。ところが、異なる組織に属する、多様なバックグラウンドを持つ初対面の参加者同士が思いを共有するのは容易ではなく、対話に長い時間を費やさなければならなかった。「9時間ぶっ続けで話したこともありました。仕事でもこんなに語り合ったことはありません」(Aチーム参加者)。

また、一人ひとりの思いを大事にするあまり、何をチームのイベントのテーマにするか、なかなか絞り込むことができなかった。

長岡健MALL理事(法政大学教授)がキックオフミーティングで指摘したように「何をやってもいい自由とは、実は何も決められない不安と隣り合わせ」でもある。イベントの規模や日程などいくつかの制約以外は、特に制約はないゆえに、「何かやりたい」と強い思いを持ちながらも、対話を重ねるほど「具体的に何をどうやっていいのか見つからない」というジレンマに苦しんだ。

特にBチームでは「多様な意見を活かそうとするあまり、企画審査会までにテーマが1つに絞り切れず、抽象的なものとなってしまった」(メンバー談)という。

仕事のやり方やコミュニケーションスタイルも異なる異業種メンバーがどのようにしてチームづくりを行い、イベント開催までこぎつけたのか。Aチーム、Bチームそれぞれの歩みを追ってみたい。

●Bチームの軌跡 チーム崩壊危機と“対話”

8月のキックオフ以降、互いの思いを語り合うことに時間をかけてきたBチーム(S-park)。和やかな雰囲気があり、イベントでは企画・運営からツールづくりまで、それぞれの個性が発揮されていた。

しかし、そんなBチームも、9月24日の企画審査会で企画が承認されず(編集部註:両チームともこの時は承認されず)、厳しい指摘を受けた後は、チームが崩壊しかけたという。対話を重ね、互いを理解し合い、仲のよいチームになっていたのが裏目に出ていたか、「普段、仕事でははっきりと意見が言えるのに、チーム内では遠慮が出て、言えなくなってしまった」(メンバー談)

企画審査会でAチームのプレゼンを見て、「自分たちの企画は具体性に欠けているし、意味づけが不明瞭」と感じたメンバーが多かったが、その先に進めず、当初の案であった「遊び」というコンセプトで続行するかどうかも意見が割れた。その後も延々と対話を続ける中、「仕事を遊びに変えてみては」というアイデアが浮かび、仕事を体験ツアーにして提供している企業の話題が、あるメンバーから出たことで、方向性が定まった。

「コンセプトが決まってからは、みんなワクワクしてきて。『入口を空港のゲートのようにしよう』『パスポートを作っては?』など、アイデアがポンポン出てくるようになり、一気に楽しくなりました」(メンバー談)

「はっきりとしたリーダーはいないチームでしたが、それぞれが得意なことを役割分担することで、自社でやっている仕事のやり方が活かされ、自分の強みに気づくことができました」(メンバー談)

紆余曲折はあったが、長い時間をかけて対話を重ねたことで、たどり着けた企画だったとも言える。

●Aチームの軌跡 こだわりを貫く

人材育成に対して強い思いを抱くメンバーが集まったAチーム(ほしぐみ)。ある1人のメンバーの熱い思いにチームメンバーも共感し、9月初旬に今回のイベントのゲストとなる石井希代子氏のワークショップを体験したことで、メンバー間で、早い段階から企画のイメージが出来上がっていた。

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