J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年05月号

CASE 4 サイボウズ 多様な制度に、風土も根づく カギは社員同士、経営と社員の日常的なコミュニケーションの工夫

サイボウズではユニークかつ多様なワークスタイルを導入し、それが社員間の信頼や会社に対する安心感につながっており、組織も活性化されている。
そうした試みの背景には、会社が重視して代々受け継いできた理念と文化がある。制度と文化の両面から見てみよう。

松川 隆 氏 事業支援本部 人事部 マネジャー
椋田 亜砂美 氏 ビジネスマーケティング本部 コーポレートブランディング部 プロデューサー

サイボウズ
1997年設立。「チームあるところ サイボウズあり」をスローガンに、グループウエアなどのチーム・コラボレーションを支援するツールを開発・提供している。また、サイト『サイボウズ式』を通じて、「新しい価値を生み出すチーム」のための情報発信も積極的に行っている。
資本金:6億1400万円(2014年12月末現在)、連結売上高:59 億6500万円(2014年12月期)、連結従業員数:511名(2014年12月末現在)

[取材・文]=楠本 亘 [写真]=田邉泰子

● 人材定着への努力 離職率が28%から3.9%へ

1997年創業のサイボウズは、グループウエアの開発、販売、運用に強みを持つIT企業だ。人の入れ替わりが激しいという業界の常識に漏れず、同社でも2005年当時での離職率は28%と高かった。

ところが、2013 年末時点でのデータでは離職率は3.9%と約7分の1にまで激減(図1)。およそ10 年の間に、選択型の人事制度や他に例を見ない長期の育児・介護休暇制度等を設けてきたことが、人材定着につながった形だ。

「ワークスタイルや人事、評価等のさまざまな制度や工夫は、全て社内の『危機感』からスタートしているといえます。人材の定着を図りたい、時代の変化に応じた多様な働き方を認めるべきだといった、会社が直面したテーマや現場から聞こえてくる提案や悩みから各制度が生まれてきました。社員の働き方、言い換えれば会社との関わり方についての選択肢が増えることで、社員たちの間に安心感が広まり、結果として組織の活性化が図れていると感じています」(椋田亜砂美氏)

● 組織を活性化する制度 自ら自由に選ぶワークスタイル

組織の活性化を支えてきた同社のユニークなワークスタイルの概要をまず見てみよう。

2007年に導入された選択型人事制度(図2)は、ワーク重視型(PS2)、ワークライフバランス型(PS)、ライフ重視型(DS)の3分類からなる。

「育児や介護、また学習など社員それぞれの事情と希望に応じて、自ら選んでもらう制度です」(松川隆氏)

現在のところ、PS2:PS:DSの比率は、74:20:6(%)と、ワーク重視型が多数を占める。

次いで、2010 年に始めた在宅勤務制度を発展させ、「ウルトラワーク」(図3)という制度を定着させた。これによって、働く時間と場所の制限が完全になくなった。

「生産性を落とさないという前提でウルトラワークを選ぶことが可能です。運用は柔軟で、例えば花粉症がひどいシーズンのみウルトラワークで自宅作業中心にしたり、自身や子どもの病気・入院期間のみウルトラワークを利用したりしても構いません」(椋田氏)

その他、早くも2006 年から育児と介護については最長6年という休暇制度を設けている。現在まで、妊娠・出産を経験した女性はほぼ100%育児休暇を取得し、最長では4年にわたって休業したケースがある。

「現在、社員の平均年齢が32歳と若いこともあり、介護に関する切実な悩みはほぼ発生していません。けれども、今後は仕事への支障が出てくるケースもあるかもしれず、今から介護と働き方に関する制度のあり方を試行錯誤していく必要を感じています」(松川氏)

他では、転職や留学を経た後に再び同社に復帰を促す制度として「育自分休暇制度」(最長6年。35歳以下のみ利用可)を2012年から開始。現在まで6名が制度を利用しているという。青年海外協力隊で奮闘中の女性や、スタートアップの会社にて活躍している男性がいる。

「100人いれば100通りの人事制度があるのが理想だと思うのです。育自分休暇制度で今当社を離れている人が、一区切りついた時に『戻りたいサイボウズ』であり続けることが使命だと思います」(椋田氏)

同社では、これらの制度以外にもイベントや研修、部活動をサポートする手厚い制度を多数設けている。

● 社内文化 制度の前提に風土が根づく

組織活性化に貢献しているこれらの制度だが、その背景にある風土や文化にも着目する必要がある。

同社の文化は、具体的には以下の4点に集約できる。

「公明正大」の文化

「自立と議論」の文化

「率先垂範」の文化

「ルールより目的」の文化

そして、これらの文化を育んできた同社の理念は「30 年後に、世界で一番使われるグループウエアを提供する会社であること」だ。

つまり、先述した諸制度は全て、理念と、それを支える文化があってのものだ。かつ、理念や文化は飾り物やお題目であってはならない。

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