J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年10月号

TOPIC-② 国際女性ビジネス会議「明日を動かそう~新しい人、企業、社会~」レポート 明日を動かすために、今できること

働く女性が互いに学び合い、高め合える場をつくろうと1996年から始まった「国際女性ビジネス会議」。今年で15回目を迎えた本カンファレンスは、女性起業家としても有名な佐々木かをり氏が代表を務める国際女性ビジネス会議実行委員会が主催するもので、毎回1000名ほどが参加する。参加者の95%以上が女性という、熱気あふれるカンファレンスだ。2010年7月24日に開催された会議の様子を紹介する。

■講演①
新事業への挑戦とチームワーク ~エキナカ・地域活性化~

東日本旅客鉄道 事業創造本部 地域活性化部門 部長
鎌田 由美子(かまだ・ゆみこ)氏
1989年、東日本旅客鉄道入社。事業開発畑を歩み、大手百貨店出向後、本社、支社、グランデュオ立川出向などを経て、2001年に本社でエキナカの開発に携わる。リーダーとして、エキナカというコンセプトを創造し『ecute』を立ち上げ、統括。2005年、『ecute』を運営するJR東日本ステーションリテイリング代表取締役に就任。2008年11月より現職。
■講演②
事業再生から学ぶ、企業・組織・経営

ボストンコンサルティンググループ パートナー&マネージング・ディレクター
秋池 玲子(あきいけ・れいこ)氏
早稲田大学理工学部、同大学院修士課程修了、マサチューセッツ工科大学スローン経営学大学院修了。キリンビール、マッキンゼー・アンド・カンパニーを経て、2003年から産業再生機構で事業再生の実務に当たる。在職中に九州産業交通取締役、カネボウ化粧品社外取締役、関東自動車取締役を兼任。2006年より現職。政府系委員なども歴任。

文/和田 東子、写真/本誌編集部

「明日をつくるために大切なのは、今、自分が志高く、前進しているかを問うこと。お互いにお互いの良い体験をつくり、今日この場で楽しい1日を過ごすことから、明日をつくっていきましょう」

冒頭、実行委員長の佐々木かをり氏が今回のテーマ「明日を動かそう~新しい人、企業、社会~」について挨拶し、満場の拍手とともに第15回国際女性ビジネス会議が幕を開けた。朝10時の開会から懇親会終了の20時まで、10時間にも及ぶ長丁場。

会議の構成は、午前中に後述の鎌田由美子氏、秋池玲子氏の講演と、林文子氏(横浜市長)、田坂広志氏(多摩大学大学院教授)、吉田和正氏(インテル代表取締役社長)などによる10分講演、午後はテーマごとの分科会となる。本稿では志高く、明日をつくるために行動を重ねてきた2人の女性──「エキナカ」の仕掛け人として知られる鎌田氏と、産業再生機構で企業再生に尽力した秋池氏の講演を紹介する。

■講演① 新事業への挑戦とチームワーク ~エキナカ・地域活性化~

JR東日本は鉄道事業を中核とした企業ですが、少子高齢化の影響で長期間にわたって乗客数が減少し続けてきました。それでも業績を伸ばしてこれたのは、さまざまな新サービス投入の効果です。

しかし将来を考えた時、1日1700万人以上が利用するという駅そのもののポテンシャルを活かし、新しい価値を提供していくことが重要との認識があり、これが「通過する駅から集う駅へ」をコンセプトにスタートした、「ステーションルネッサンス」という会社の中期計画につながっていきます。その1つがエキュートであり、今、多くの方にご利用いただいているエキナカです。

エキナカ始動!最大の壁は?

けれども、単に通過するだけだった駅で足を止めていただくためには、駅が魅力的な場所になる必要があります。そこで、駅全体を1つの空間としてとらえ、設計し直す必要がありました。そのためには、縦割り組織の壁を乗り越え、会社全体で取り組まなければなりません。

一般の方にはわかりにくいと思いますが、駅構内の施設は、コンコースは鉄道の管轄、店舗は子会社の管轄といったように、管轄と権限が複雑に入り組んでいます。

そのため駅を1つにという総論には皆が賛成しながら、各論では強固な反対が巻き起こったのです。たとえば駅のコンコース全体に空調を行き渡らせたり、駅と店舗部分のトイレの清掃レベルを揃えるだけでも、各場所や物品、設備を管轄する部署や関連会社を集めての調整が必要になるのです。

グループ会社社員を起用し若いチームで挑戦する

エキナカ事業では、ES(従業員満足)の向上にもこだわりました。私は入社以来一貫して流通にかかわってきましたが、駅構内の労働環境の悪さにはずっと疑問を感じていました。冬は寒く、夏は暑い。後方施設が遠く、ゆっくり休憩も取れない。こんな環境で、どうやってお客様にすばらしいサービスを提供できるのでしょうか。CS(顧客満足)を高めるためには、まずESを高める。これが私がやりたかったことです。

店舗面積を削ってでも店舗に最も近い場所に後方施設をつくり、駅と交渉して物流動線を確保するなど、環境整備に取り組みました。

エキナカではもう1つこだわったことがあります。このプロジェクトには「グループ価値向上」という使命がありました。そこで本当の意味でグループ価値を向上するのであれば、グループ会社のプロパー社員が本社のこのプロジェクトに参加すべきだと考えたのです。

当時、親会社から子会社に出向することはあっても、その逆はありませんでした。この慣習を破って、グループ会社からの公募を行いました。

その結果100名近い応募があり、10名のメンバーを選出することができました。平均年齢29歳の若いチームが誕生したのです。「素人集団」ともいわれましたが、素人だからこそ顧客視点を持って、思い切ったことができたのだと思います。

その視点が活かされた例として「パーソナルギフト」という新ジャンルが挙げられます。これは、会社帰りの男性客が、家で待つ奥様やご家族におみやげに、また親しい友人などへのちょっとしたプレゼントに、といったデイリーなギフトのスウィーツのことで、非常に好評です。しかし当初、男性は、甘いものは嫌い、エキナカを利用しないといわれていました。

このように前例のないことが他にもたくさんありました。百貨店やショッピングセンターはピークが夕方です。ですがエキナカはもっと遅い夜の時間帯になります。エキナカがどうお客様に受け入れられるのか誰もわからない。だからこそ、試行錯誤をして一歩一歩進んできました。

地域の一員として地域全体をよくする

エキナカ事業を行う中で、私は駅は地域の顔であり、駅と地域が互いに利用し合うような役割を担えるのではないかと考えるようになりました。昨年、地域活性化部門に異動し、地方の再建や新機軸づくりに取り組んでいます。

最初に行ったのは、30室程度の長期滞在型ホテル事業の再建です。事業撤退は簡単ですが、ホテルは地域に雇用を生み出す施設であり、地元からの期待もあります。

私が最初に考えたのは、「30室だからこそできるホテルとは何か」ということです。

たとえば岩手花巻の「フォルクローロいわて東和」は、「菜園併設型ホテル」と銘打ったホテルとしてリニューアル。ここでは、朝、子どもが好きな野菜を収穫して食べる新サービスが好評です。

千葉館山にはスポーツを楽しむ「スポーツホテル」をつくりました。昨年は地元でトライアスロン大会を開催し、約2000名の人が集まりました。もちろん弊社ホテルだけでは収容しきれず、地元のほとんどの宿泊施設が満室、地域ぐるみの大きなイベントとなりました。

私たちは地域の一員です。地域全体で、一緒によくなろうとする──この発想が、地方と東京をつないでいるJR東日本という企業には必要なのだと感じています。

最後に皆さんにお伝えしたいことは、「能力は無限だが、時間も人生も有限」だということです。大切なのは、今やっていることに対して、100%力を出すことです。隣の芝生は青いといいますが、実際はどの芝生も青くはないし、どの芝生も青いのです。余力をキープしながらと思わずに、今に集中することが重要なのです。

私がエキナカ事業で学んだことは、わからなければ、わかる人に助けてもらえばいい。知識と経験は積めばいいということです。しかし自分の言葉で、自分の意見をいうことは自分でしかできませんし、その言葉が人を動かします。エキナカも最初は、何をやりたいのか、コンセプトの良さをわかってもらえませんでした。大宮のエキュートができて初めて、そういうことがしたかったのか、とわかってくださった方もたくさんいました。ですが、最初はとにかく自分の言葉で訴えることが重要です。

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