J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2010年10月号

企業事例(書く②) 東陽テクニカ 意識して書かせることで文章力と論理的思考を訓練

情報通信測定機器をはじめとする測定機器の専門商社、東陽テクニカ。社員の多くが理工系大学出身という同社では、論理的に考えをまとめ、文章を書く能力を養成するための社員教育を多数行っている。しっかりと書く力を強化することで、論理的に考える力がを養っている同社の教育を紹介する。

渡辺 洋介氏
東陽テクニカ 代表取締役社長
東陽テクニカ
1953年設立。情報通信測定機器をはじめとした測定機器の専門商社。海外からの技術導入の他、アフターサービスの提供、プレ・セールスサービス、測定機器の自社開発も行っている。
資本金:41億5800万円(2009年9月現在)、売上高:185億(2009年9月期)、経常利益:13億9000万円(2009年9月期)、従業員数:507名(2010年4月1日現在)
取材・文・写真/高橋 美香

論理的な文章がビジネスを効率化する

光通信関連測定器や騒音振動解析システムといった専門性の高い測定機器を輸入・販売する東陽テクニカ。商社の枠にとどまらず、測定機器の専門企業としてアフターサービスや機器の自社開発など、幅広いビジネスを展開している。同社の主要な業務内容が、理工系の知識が必要なものであることから、社員の多数が理工系大学出身だ。

そうした中、同社では論理的に書く能力を重視し、文章力向上のための社員教育を行っている。代表取締役社長渡辺洋介氏は、文章の書き方を社員に学ばせる理由をこう語る。

「当社の事業では、国内だけではなく海外との折衝業務が多く、日本語・英語を問わず文書を書くことが求められます。日本はもちろん、海外のビジネスパーソンとも対等にビジネスをするためには、相手を説得できるような文章を書かなければなりませんし、相手を納得させるためには論理が必要です。論理的な文章を書くということは、文系・理工系に限らず仕事をするうえで必要不可欠な能力なのです」(渡辺氏、以下同)

同社が書く力を意識するようになった背景は、ある時期から若手社員を中心に文章力の低下が目立ち始めたことにあるという。

「私は、毎朝、社員たちから上がってくる500通に上る文書に目を通しています。毎日文書を読んでいるうちに、同じ内容のものが何度も顧客とやり取りされていることに気づきました。1回で終わるはずのものを、3回やり取りをすればコストは3倍に膨れ上がり、ムダが出ます。テーマや結論が明確に示された文章は、コスト削減につながるのです」

同じテーマの内容を複数回確認すれば、最悪のケースでは顧客に不安を与え、信頼を失う。論理的な文章が書けるか否かは、企業の印象、さらには業績を左右することもある。書く力がビジネスに与える影響は、非常に大きいのである。

書く力の養成は読むことから始まる

社員の書く力を強化するために、同社では、Off-JTや通常業務の場を通して文章を書く機会を多数設けている。主な取り組み内容は、①内定者は読書感想文を提出②新入社員研修時の「週報」③文章の書き方研修④海外出張中はレポートを毎日提出の4つである。

①内定者は読書感想文を提出

まず、内定者を対象にした書く力強化の教育である。これは2006年から始められた取り組みで、10月の内定式から入社までの間に好きな本を読み切り、感想文を提出するというもの。

「“書く”ことは、ものを理解することから始まります。読んで語彙やその主旨などを自分の中に一度取り入れ、理解することが大切なのです。ところが最近は、1冊の本を完全に読み切るという経験自体、減ってきているのではないでしょうか。また、学生時代のように、誰かが常に何かを教えてくれるのを待っているような受け身の姿勢では、社会人は務まりません。そこで、本を自分で選び、最後まで読み切って、自分の理解したことを書くことで、単に文章を書く訓練だけでなく、論理的な理解力の向上を意識してもらう機会にもしています」

同社の新入社員は毎年20名ほど。新入社員が書いたレポートは、渡辺社長が自ら内容を確認し、コメントを手書きで付け加える。時にはその人が書いた感想に対して、他の考え方を示すという。社長の直筆コメントが書かれた感想文を手にした新入社員からは感嘆の声が聞かれる。新入社員とトップとの、かけがえのないコミュニケーションの機会にもなっているようだ。

②新入社員研修時の「週報」

新入社員はまた、新入社員研修期間中、「週間報告書」を提出する。その週に習得したことを知識として定着させるのが狙い。週報は、メンターや課長がチェックして、内容に不備があれば厳しくフィードバックされる。文書を書き慣れていない新入社員が社会人へと成長するための“洗礼”ともいえるものである。

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