J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2010年10月号

手で書くか、キーボードで書くか 脳を刺激して賢く書く方法

脳科学の立場から見ると、「脳の活動」と「書くこと」には、どのような関係があるのだろうか。
とりわけ、書くことの原点ともいえる手書きは、脳の活動と密接に関係しているという。
専門家の見地から、手やキーボード入力で「書く」ことが、人間の脳にもたらす影響について聞いた。

牧 敦(まき・あつし)氏
1990年日立製作所入社。日立中央研究所、基礎研究所に配属後、脳機能計測法・光トポグラフィを世界で初めて開発。脳科学研究の一環として、脳の言語機能に関する研究に携わる。20年間の研究所勤務を経て、2010年4月より現職。
取材・文・写真/高橋 美香

私は、20年間にわたり日立の基礎研究所等で人間の脳について研究を重ねてきた。その蓄積から、「書く」ことと脳の関係性について述べよう。人間の脳には以下の特徴がある。

・言語機能が発達した

・進化とともに視覚機能が発達した

こうした特徴を踏まえ、当初は人間の脳と言語の疑問点について研究を行った。その中で、「書く」という行為と脳の関係性を調べたことがある。その前段となったのが、視覚と学習効果を研究した次の実験である。

視覚による情報共有で学習効果が向上

脳は、視覚から得る情報を、聴覚の3倍の速さで処理できる。この長所を活かした授業ができれば学習効果も高まるという仮説を立て、手書き文字を即時に電子化できる「デジタルペン」を中学校の授業で取り入れて学習効果の度合いを調べた(2009年終了文部科学省「先導的教育情報化推進プログラム」)。デジタルペンで書かれたものは、スクリーンに映し出され、書いた文字データを教師も生徒もリアルタイムで共有できる※。このシステムを用いるクラスと従来通り黒板で授業を行うクラスに分け、作文の授業で検証した。

生徒が書いた作文は、説得性、客観性といった質的な面と、主張に対する根拠の数、反対意見の言及数などの量的な面から評価され、点数化した。結果、スクリーンに浮かぶお互いの意見を視覚的に共有したほうが、黒板授業のクラスの生徒たちよりもあらゆる項目で高得点を収めた。

この実験から、従来のような、「聴く」ことが中心の授業に加えて、視覚から情報を効率的に取り入れながら情報共有を図ることで、学習効果が高まると結論付けられた。

ここで、キーボード入力された情報を見て共有した場合も、手書きの時と同様に学習効果が期待できるのか、という疑問が浮かび上がる。この疑問が、私が「書く」ことと脳の関係を調べるきっかけになった。

※デジタルペンはアノト・マクセル製。授業システムは日立製作所が開発。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:922文字

/

全文:1,843文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!