J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年03月号

CASE.3 大成建設 研修、制度とプラスアルファ 女性本人・上司の意識研修に加え 夫婦同伴のセミナーも開催

2007年に「女性活躍推進室」(現・人材いきいき推進室)を設置し、女性社員が活躍できる環境づくりを推進してきた大成建設。
女性リーダーの育成に力を入れており、現在、30名を超える女性管理職が各職場で活躍している。
特にユニークな取り組みとして、配偶者やパートナーを招待できる「両立支援セミナー」がある。

塩入徹弥氏 管理本部 人事部 人材いきいき推進室 室長
大成建設
1873年創業、1917年設立。国内外における建設・土木の設計・施工、環境、エンジニアリング、原子力、都市開発、不動産など幅広い分野で事業を展開。
資本金:1124億円、売上高:1兆1962億円、従業員数:7951名(2014年3月末)
[取材・文]=増田忠英 [写真]=大成建設提供、編集部

● 背景
労働力減少に女性パワーを

“男性の職場”というイメージが強い建設業界。大成建設でも、以前は基幹職(総合職)での採用は男性に限られていた。設計部門などの限られた部門では、途中から基幹職に登用される女性社員はいたものの、女性社員の大半は担当職(一般職)として補助的な業務に就いていた。

その状況に転機が訪れたのは、2000年頃の就職難だった時代。理工系学部の女子学生が基幹職を希望して応募してくるようになったのだ。

「今後ますます労働人口が減少していく中で、従来のように男性中心でやっていては将来はない、という危惧がありました」と、人材いきいき推進室室長の塩入徹弥氏は当時を振り返る。

2003 年に基幹職として女性の採用を始めたところ、意欲も能力も高かったことから、徐々に採用人数は増えていった。そして2006 年には、会社の方針として女性の活躍推進を決定。翌07年、推進組織として人事部内に女性活躍推進室が設置された。塩入氏はその当初から室長を務めてきた。

「当時の建設業界は右肩下がりの状況で、厳しい競争の中で勝ち残っていくために打ち出した施策の1つが、女性の活躍推進でした。社内には、優秀なのにその力を活かしきれていない女性がたくさんいました。彼女たちがもっと力を発揮できるように、社内環境を整えていこうと考えたのです」(塩入氏、以下同)

以降、同社の女性活躍推進室は、以下の6つのテーマを掲げて取り組みを進めてきた。

①意識啓発 ②採用数の拡大 ③職域の拡大 ④能力開発支援 ⑤働き続けられる環境整備 ⑥社内風土改革

結果、女性の新卒採用に占める割合は約20%、正社員における割合は16%に増え(2015 年1月現在)、建設現場で活躍する女性社員も増えつつある。

しかし、同社がめざすのはそれだけではない。特に基幹職として採用した女性社員が、ゆくゆくは管理職、リーダーとして活躍する人材に育つことであり、その支援に力を入れている。本稿では代表的な施策として、①次世代リーダー育成研修、②女性社員を部下に持つ管理職研修、③パートナーと参加する両立支援セミナーの3つを紹介したい。

● 具体策1 早期選抜 次世代リーダー育成研修

筆頭は、基幹職として入社後、5 ~7年目の若手女性社員を対象に行われる研修だ。毎年全国各部門から20 ~25名の女性社員を選抜し、将来を担うリーダー人材として、求められる役割を担えるよう育成することを目的に、2012年から実施している。

「入社5 ~ 7年目というと、30歳を目前にする人たちがほとんどで、自分の将来をより具体的に考えるようになる時期です。しかし、周囲にロールモデルが不足しているため、その後のキャリアに不安を感じやすくなります。そうした不安感を解消するという目的もあります」

研修は2日間で行われ、基礎、中級、上級と年ごとにレベルアップ。内容は企業戦略の解説、先輩女性社員とのネットワークづくり、会社が過去に手がけた物件のレクチャー、リーダーとして求められる行動やホスピタリティ、コーチングを含めたコミュニケーションスキルの修得などである。

「女性社員は、目の前の仕事には一生懸命取り組みますが、自社や仕事を全体的な視点で見る点が弱い、という傾向があります。そこで、戦略の話をしたり、当社が施工した諸物件がどのように利用されているかを体感してもらっています。そうしたことから、仕事に対する誇りを改めて感じてもらうことが重要です。

また、男性中心の会社の中、自分の力を発揮していくにはどうすればいいか、といったこともアドバイスしています」

リーダーとして必要なことを学ぶことも重要だが、別の意味でもこの研修は効果を発揮している。というのも、この研修は、同じメンバーで年1回実施されているが、女性が1人しかいない職場も多いため、参加者たちはこの研修に出ることで、全国のいろいろな部署で働いている仲間とつながることができるのだ。困った時やキャリアについて相談相手ができた、心の負担が軽くなった、などの声も上がっているという。

● 具体策2 女性社員を部下に持つ管理職研修

「女性社員の育成にとって、一番のキーパーソンは直属の上司」(塩入氏)という考えから、女性社員の上司を対象とした研修も行っている(2013 年~)。

彼女たちを育成するために必要な情報を上司に提供することに加え、短時間勤務中の社員に対するマネジメントの仕方や、ハラスメントにならないようなコミュニケーションなどについても扱う。研修内容は、上司たちや女性社員にヒアリングした内容を踏まえて決めている。

「例えば、上司が女性社員に仕事を依頼すると、消極的な反応が返ってくることがあった場合、やる気があるのか疑問に感じることがあるようです。それは、個人差は当然ありますが、女性の特性として失敗することが怖いとか、男性よりも慎重である面が影響しているのではないかと考えています。ですから上司が背中を少し押してあげることで、少しずつ彼女たちが自信を持ち、前向きになってくれば、より仕事にチャレンジするようになる、とアドバイスしています。

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