J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年03月号

CASE.2 新生銀行 めざすは定着化ではなく“戦力化” 継続就業支援は実情に合わせ 特別扱いせずに育成し活かす

金融業界というと、女性が活躍しにくい業界というイメージがないだろうか。
しかし、新生銀行は、女性管理職比率(部長代理・支店長代理以上の役席者における女性の比率)が2014年3月末現在で26%と、業界最高水準を維持している。
同行の実情に合った継続支援と育成の施策や、企業としての明確な姿勢について紹介する。

林 貴子 氏 人事部 企画・育成担当 統轄次長
佐々木 準 氏 人事部 部長代理
新生銀行
2000年6月に「日本長期信用銀行」から「新生銀行」に名称変更。「ユニーク」「成長・飛躍」「迅速・実践」のキーワードに沿って個人・法人向けに、特色あるサービスを提供している。
資本金:5122億円、連結総資産:9兆1901億円、連結従業員数:5265名(いずれも2014年9月30日現在)
[取材・文]=木村美幸 [写真]=編集部

● 女性リーダーの活躍状況
36歳で執行役員、再入社も

近年、企業で働き続ける女性の数は増えているが、女性管理職の数はまだ限られている。まして役員となればなおさらだ。実際、上場企業の女性役員の割合は2.1%(東洋経済新報社 役員四季報2015 年版)と、極めて少ない。

これに対し、医薬・食料品メーカーの大塚製薬には女性役員が6人おり、全役員の13%と、上場企業平均の6 倍を上回る。

しかも、6人のうち1人は、36歳の若さで執行役員になり、38歳で常務に就任している。さらに、いったん大塚製薬を離れた後、再び入社して常務執行役員になった女性もいる。

まさに女性が活躍している会社といえるが、女性を特別扱いした結果ではないというから驚く。人事部部長補佐でダイバーシティ推進プロジェクトのメンバーでもある田中静江氏は、「能力がある人を性別や年齢に関係なく登用した結果であり、管理職の数値目標を掲げて女性活用に取り組んでいるわけではない」と語る。

役員に選ばれた女性たちは、いずれも優れた実績を上げており、それを評価された結果なのだ。

例えば、最年少で役員になった女性は、業績が低迷していた化粧品を百貨店販売からネット販売に切り替えて業績を回復させた他、男性用化粧品「UL・OS」(ウル・オス)の開発にも携わり、5 年間で3.7倍もの売上伸張に貢献した。

一方、再入社した女性役員は、ロングセラー商品である「ファイブミニ」の開発を担当した他、「ポカリスエット」を大ヒットさせた実績を持ち、外資系化粧品会社の社長を務めた経験もある。これらが評価されたからこそ、役員に選ばれたのだ。

活躍している女性は、役員だけではない。現在、同社が事業の柱の1つとして力を入れる大豆関連商品のマーケティングにも女性リーダーが携わっている。また、女性がリーダーとして率いるプロジェクトチームが、医薬品の承認申請作業を大幅に短縮したケースもある。さらに、MR(医薬情報担当者)でも、女性たちが多数活躍している。

特別扱いしてきたわけではないとはいうが、どうしたらこれほどまでに女性リーダーを輩出できるのだろうか。その秘密を垣間見てみよう。

● 背景
 多様性を大切にする風土

その背景には、“多様性を大切にする”組織風土がある。

同社の企業理念は、「Otsuka-peoplecreating new products for betterhealth worldwide(世界の人々の健康に貢献する革新的な製品を創造する)」というもの。この言葉は1973年に同社の研究所の理念として掲げられた。また、後に同社の社長そして会長となった故・大塚明彦氏は、グローバル化が叫ばれる前から世界に目を向け、革新的な製品の開発を推し進めていた。

明彦氏は創業家出身の3 代目。「ボンカレー」を開発した他、社長時代にも「ポカリスエット」や「カロリーメイト」など、独創的な商品を世に送り出し、大塚グループの一時代を築いた人物だ。物真似ではない、他にない商品の開発を奨励し、そうした会社の成長の原動力となる革新的な製品やアイデアを生み出すためには、性別などの垣根を越えた多様な人材の活躍が重要だと考えていた。

実際、男女雇用機会均等法施行(1986 年)より以前、「ダイバーシティ」という言葉が産業界で使われるようになる前から、国籍や性別に関係なく優れた人材を登用し、女性のアイデアも商品開発に活かしていた。

こうしたトップの考え方や実践が社内に浸透しているため、同社は、「極めて風通しがよい会社」(田中氏)であり、意欲的に仕事に取り組む人には、性別や年齢に関係なくチャンスが与えられる。そうした組織風土が、女性社員たちにも積極的な挑戦を促しているのだろう。

● 具体策1(1990年頃)「女性フォーラム」で意識改革

組織風土に加え、早期からのダイバーシティへの取り組みも、女性の活躍やリーダー育成を促進した。

大塚製薬が、特にダイバーシティ推進のための取り組みを強く意識するようになったのは、均等法の施行がきっかけだという。1986 年の均等法施行を機に、女性社員の採用が進み、90年になると、その数は大きく増えた。

例えばMRは、日々刻々と進化する医薬品や医薬に関する勉強が欠かせないうえ、関係者との会食など、仕事が夜の時間帯に入ることが少なくなく、家庭や私生活との両立が難しい面がある。そうした中で女性たちがキャリアを築いていくには、一定の覚悟や熱意が求められる。

そこで同社では、マネジメント層や女性の意識改革、向上をめざし、90 年から「女性フォーラム」を開催した。

これは、MRをはじめとする、いわゆる“総合職”の女性を対象にした講演会だ。役員や管理職として社内外で活躍する女性が、仕事に対する姿勢やキャリアについての考え方などを、自身の経験を踏まえて語るもので、92年までに5回実施し、当初の目的は達成されたとして終了。2008 年からは、より多様な社員が活躍してほしいと考え、国籍や性別、年齢を越えた形の「ダイバーシティフォーラム」(図)として開催している。

● 具体策2(2007年~)4つのテーマに絞って改革

また同社では2007年にダイバーシティの専任組織として、「ダイバーシティ推進プロジェクト」を立ち上げ、次の4つを重点課題として注力した。

①女性社員の意識改革

②管理職の意識改革

③メリハリのある働き方の推進

④インフラ整備

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