マッキンゼー『Centered Leadership』の著者が語る 女性リーダーたちの能力を最大限に発揮させるポイントとは
『Centered Leadership』というリーダーシップモデルを2008年頃から世に送り出しているマッキンゼー・アンド・カンパニー。このモデルは、世界中の60人以上の優れた女性リーダーたちへのヒアリングを土台に見出したものであるという。そこで、このモデルを開発し、同名の著書を刊行した2人に、その概要と、日本の人事・人材開発部門への助言を聞いた。
5つの要素が明らかに
知性や教育、仕事へのコミット度合いは同じにもかかわらず、男性に比べて圧倒的に女性リーダーが少ないというのは、米国でも、また他の多くの国や地域でも同じである。この状況を変えるべくマッキンゼーでは2004年頃から、世界中のトップクラスの女性リーダーを中心に、彼女たちは特に何が優れているのか、彼女たちのどういうあり方や性質が成功に寄与しているのかを、ビデオインタビューや研究文献を中心に調査した(最終的には160人以上の、男性を含めた各界のリーダーがインタビューに協力)。
そして、得られた情報をさまざまな方法で分析し、一番コアとなるケイパビリティ※の組み合わせを明らかにしていった。その結果、以下(図1も参照)の5つの要素が相互に関連し合っていることがわかったという。つまり、これらを意識することで、リーダーたちは能力の幅を拡大し、潜在能力を解き放つことができるということだ。
MEANING(意味):仕事や行動、目的へ向かう自分にとっての意味。これが明確になることで強みや幸福につながる。
FRAMING(ポジティブな認識):自分の思い込みや認識に気づき、常に認識をよい方向にシフトし、マインドセット(考え方)や行動を望むべき方向に適合させられること。
CONNECTING(つながる):信頼を築いてコミュニティをつくり、人にスポンサーになってもらうこと。
ENGAGING(主体的に従事):主体性を持って、リスクをとり、行動すること。
ENERGIZING(エネルギーの調整):自分の心身や感情、精神的なバランスに配慮し、エネルギーを持続・調整すること。
“Centered”の意味
ところで、この「Centered」とはどういう意味なのか。
「“Centered”とは、いつも自分のことに自覚的で、よい選択ができる状態にいられるということです。たとえ不意打ちをくらってもドッシリと立ち、すぐにバランスを整えることができる。人はオープンマインドでいれば、難しい局面に対峙しても心をハイジャックされずに済みます。そのように、どんな環境に置かれても、自分の態度を選べるということです」(著者2名の共通見解、以下同)
日本語に訳すなら、「中核の」や「揺るがない」リーダーシップ、などとなるだろうか。
著書『Centered Leadership』には、読者がこの5つの要素に沿って自分の傾向に気づくためのワークも多く掲載されている。例えば「MEANING」であれば、過去、どんな時に自分の心に火がついた気がしたか、状況や理由、その時の感情などを思い出す。そういったワークを通して、自分がどういうことに「意味」を見出しやすいのかを探っていく。とても内面的な手法といえる。