J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年03月号

マッキンゼー『Centered Leadership』の著者が語る 女性リーダーたちの能力を最大限に発揮させるポイントとは

『Centered Leadership』というリーダーシップモデルを2008年頃から世に送り出しているマッキンゼー・アンド・カンパニー。このモデルは、世界中の60人以上の優れた女性リーダーたちへのヒアリングを土台に見出したものであるという。そこで、このモデルを開発し、同名の著書を刊行した2人に、その概要と、日本の人事・人材開発部門への助言を聞いた。

McKinsey & Company
ジョハンヌ・ラボワ(Johanne Lavoie)氏Master Expert , Calgary
ジョアンナ・バーシュ(Joanna Barsh)氏Director Emeritus
『Centered Leadership:Leading with Purpose,Clarity, and Impact』
出版社:Crown Business
日本語版がSBクリエイティブより2015年中に出版予定。
[取材・文]=田邉泰子 [写真]=牛尾奈緒美氏提供

5つの要素が明らかに

知性や教育、仕事へのコミット度合いは同じにもかかわらず、男性に比べて圧倒的に女性リーダーが少ないというのは、米国でも、また他の多くの国や地域でも同じである。この状況を変えるべくマッキンゼーでは2004年頃から、世界中のトップクラスの女性リーダーを中心に、彼女たちは特に何が優れているのか、彼女たちのどういうあり方や性質が成功に寄与しているのかを、ビデオインタビューや研究文献を中心に調査した(最終的には160人以上の、男性を含めた各界のリーダーがインタビューに協力)。

そして、得られた情報をさまざまな方法で分析し、一番コアとなるケイパビリティ※の組み合わせを明らかにしていった。その結果、以下(図1も参照)の5つの要素が相互に関連し合っていることがわかったという。つまり、これらを意識することで、リーダーたちは能力の幅を拡大し、潜在能力を解き放つことができるということだ。

MEANING(意味):仕事や行動、目的へ向かう自分にとっての意味。これが明確になることで強みや幸福につながる。

FRAMING(ポジティブな認識):自分の思い込みや認識に気づき、常に認識をよい方向にシフトし、マインドセット(考え方)や行動を望むべき方向に適合させられること。

CONNECTING(つながる):信頼を築いてコミュニティをつくり、人にスポンサーになってもらうこと。

ENGAGING(主体的に従事):主体性を持って、リスクをとり、行動すること。

ENERGIZING(エネルギーの調整):自分の心身や感情、精神的なバランスに配慮し、エネルギーを持続・調整すること。

“Centered”の意味

ところで、この「Centered」とはどういう意味なのか。

「“Centered”とは、いつも自分のことに自覚的で、よい選択ができる状態にいられるということです。たとえ不意打ちをくらってもドッシリと立ち、すぐにバランスを整えることができる。人はオープンマインドでいれば、難しい局面に対峙しても心をハイジャックされずに済みます。そのように、どんな環境に置かれても、自分の態度を選べるということです」(著者2名の共通見解、以下同)

日本語に訳すなら、「中核の」や「揺るがない」リーダーシップ、などとなるだろうか。

著書『Centered Leadership』には、読者がこの5つの要素に沿って自分の傾向に気づくためのワークも多く掲載されている。例えば「MEANING」であれば、過去、どんな時に自分の心に火がついた気がしたか、状況や理由、その時の感情などを思い出す。そういったワークを通して、自分がどういうことに「意味」を見出しやすいのかを探っていく。とても内面的な手法といえる。

働く母親には「ENERGIZING」

著者に、先の5つの要素の中で、特に育児中の女性リーダーたちに重要な要素はどれかと聞くと、「調査段階で、お子さんがいるかどうかを区別していたわけではないのですが、このモデルを使って何人もの働く母親たちを教えてきた経験からお答えします」と前置きしたうえで、こう語った。

「働く母親たちには、特に『ENERGIZING(エネルギーの調整)』がカギになります。

家庭と仕事という2つの重荷を背負い、大変な毎日を送っている女性たちに“ワークライフバランス”を呼びかけても、多くの場合うまくいきません。その代わり、彼女たち自身のエネルギーの調整をしたらどうかと伝えています。これは子育て中の女性に限ったことではありませんが、多くの人がワーカホリックなマインドセットを持っていて、変えようとしません。働くお母さんも、自分のエネルギーの大半を仕事や子育て、家族の世話に費やしてしまう人が多く、自分のためにほとんど残さない。ただ、自分の人生を生きたいのであれば、このマインドセットは変えなくてはなりません。

仕事にしても何にしても“ここまでやる”という境界を設け、それを越えたら(何らかの方法で)エネルギーをチャージすることを自分に許す。そうしたアプローチをとることによって、エネルギーのレベルを改善することができるでしょう」

働く母親には、頑張り過ぎる人が多い。よって自身で体力や精神状態の調整を意識的にしてはどうか、ということだ。

ただ、個々人の頑張りには限界があるとも指摘する。

「組織の側が女性たちの能力開発と進歩を助けなくては難しい。もっと言えば経営者が、短期的な成果を競う今の資本主義のシステム自体を、人事のプロなどの手を借りて変更していく必要があります」

このことについてジョアンナ・バーシュ氏は以前、別の研究も率いていた。興味があれば、文末の参考文献で概要を読むことができる(英語)。

人事・人材開発部門がすべきこと

Centered Leadership モデル自体は、個人がどういう点に心がければ、もっとリーダーとして活躍できるかを説いている(しかも、「男性にも有効」と著者)。では、企業の人事・人材開発部門が彼女たちにできることとは。男性と違ったケアが必要なのか。

「女性に限りませんが、組織の中の少数派グループに対して、HR(HumanResource)部門ができることは確かにあります。

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