J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

人材教育最前線 プロフェッショナル編 「ビジネス力」と「人間力」を現場感のある施策で育む

「人材育成の仕事は開発や営業と違い、表舞台で脚光は浴びない。ただ学んでいった人たちが活躍してくれればいい。育成部門の役割とはそういうもの」と語るのは、クリナップ 人事部 人材育成担当部長の国井清史氏である。クリナップは2009年に創業60周年を迎え、企業理念の刷新と共に教育制度の再構築に着手。国井氏は体系づくりの中核を担い、さらに自ら先頭に立ち運用を軌道に乗せてきた。「最後は人を育てて、会社に恩返しをしたい」。そこには、自身の経験と知識を形にした育成の仕組みとこだわりがある。

人事部 人材育成担当部長
国井清史(Kiyoshi Kunii)氏
1980 年クリナップ入社。営業を経験後、1981年研究開発部に異動。暖房機器および浴槽関連開発業務に携わる。1984 年商品マーケティングを担当して以降、開発企画部、マーケティング部、経営企画部などで各分野のマーケティング業務を経験。2011年人事部 人材育成担当部長就任。

クリナップ
1949 年創業。システムキッチンなどの厨房機器をはじめ、浴槽機器、洗面機器など住宅設備機器の製造・販売を行う。1973年、日本初のシステムキッチンを開発。2009年には創業60周年を迎え、新企業理念として「家族の笑顔を創ります」を掲げた。
資本金:132 億6734万円(2014 年3月末現在)、連結売上高:1287億8500万円(2014 年3月期)、連結従業員数:3392名(2014 年3月末現在)

取材・文・写真/髙橋真弓

降ってきた“マーケティング”

人材育成担当部長の国井清史氏が新卒でクリナップに入社したのは1980 年。当時、新人は現場とお客様を知るために、まず営業所に配属された。国井氏も北海道の営業所で1年間、営業を担当したが、同時に新規商材の市場調査、市場開拓という本部からのミッションも担っていた。

その頃、同社では新たに開発商品本部を立ち上げ、ステンレスの発色技術を建材として商品化したり、デンマーク製の電気暖房機の輸入・販売を手掛けたりと、商材のラインナップ強化に積極的に取り組んでいた。そうした商品を販売店に置いてもらい、市場や消費者の反応を探るのが国井氏のもうひとつの仕事だった。

翌年、研究開発部に異動。デンマーク製暖房機の市場への訴求方法を改善するため、ヨーロッパ各国を回る現地調査に参加するよう命じられた。帰国後に提出したレポートで、国井氏は参加者の中で唯一、否定的な見解を述べたという。

「実は旭川にいた頃から製品に対する反応が薄いことはわかっていました。当時、住宅の断熱構造は十分ではなく、特に寒さが厳しい北海道では、電気による暖房では暖まらないうえに、電気代ばかりかかってしまいます。この構造では、日本の住宅にはまだ適合しないという意見を出し、温水を回すタイプのほうが可能性があるのでは、と素直に提案したところ、プロジェクトから外されてしまいました(笑)」

その後、バスタブの素材開発に携わっていたが、2 年ほど経ったある日、新たなミッションが降ってきた。

「突然部長がやってきて、『クリナップにはマーケティングがない。お前やってみないか』と言うのです」

暖房機の市場調査に少しかかわったものの、マーケティングに関する知識は全くない。だが人と違うことをするのが好きだった国井氏は専門機関や専門家を探し、一から学び始めた。やがて、第一人者と言われる梅澤伸嘉氏と出会った。

「発想法からグループインタビュー、調査方法などを教えていただきました。先生の教え通り、全て自前でつくったため苦労の連続でしたが、主婦の商品モニター制度などを導入することができました」

その後、開発企画部、営業本部、経営企画部など各配属先でもマーケティングを担当。営業本部時代にはエリアマーケティングの仕組みを構築するなど、クリナップ全体の商品戦略に影響を与えてきた。だが、全くの素人だった国井氏がなぜマーケティングに興味を持ち、深く理解できたのか──。

「実はマーケティングを学びながら、一方で夜間や休日に学校に通い、中小企業診断士の資格の勉強をしていました」

マーケティングは「企業戦略」につながる。企業の成長戦略の策定やアドバイスを行う中小企業診断士の勉強が、マーケティングへの関心を強めたのだ。さらに、「その時に学んだことが今、活きている」と国井氏は続ける。

「例えば、研修で財務諸表の見方について説明する時は必ず、『ビジネスがこうだから、こういう数字になって表れている』と話します。というのも、現場の人間にとって大事なのは、用語の解説や経理的な仕訳の方法ではなく、仕事と直結した話だからです。貸借対照表や損益計算書に表れている数字とビジネスの関連づけができていなければ、財務を理解したとは言えません」

こうした捉え方は、現場でマーケティングを経験し、中小企業診断士をめざすうえで体系的な知識を身につけた国井氏だからこそであり、後の自身の育成理念にも大きな影響を与えたという。

教育体系を大きく変える

国井氏は人材育成担当部長に就任する以前、経営企画部で教育体系を立て直すプロジェクトを率いていた。クリナップでは、リーマンショックの頃から経費圧縮で教育予算が減り、研修の規模も縮小していたが、2009 年の創業60周年を機に、育成の見直しが図られたのだ。

まず着手したのは階層別研修。中断していた主任研修を復活させた。

「40歳手前くらいの係長研修で、『階層別研修は新入社員研修以来です』という社員が多くいたのです。専門スキルの研修はあるものの、会社全体のルールや理念、歴史はもちろん、自分の役割、求められていることなどを認識する機会がほとんどないまま係長になってしまう状況に危機感を感じました」

そして、ただ復活させただけでなく、カリキュラムも大きく変更した。

「例えば、自分の業務を標準化するステップを組み入れました。標準化というのはマニュアル化することで、そのためには自分の仕事を洗い出す必要があります。いわゆるアウトプットです。アウトプットして客観視すると、自分の弱いところが見えてくる。そこを改善してもらいます。『今までは仕事に流されていたことに気づいた』という感想をくれた研修受講者もいましたが、そういう反応があると嬉しいですね」

また、クリナップで初めての選抜型研修も構築した。

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