J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

CASE.2 日本たばこ産業 カギは自ら学びたいという「渇望」 学習意欲を刺激する制度を構築

海外でのM&Aを積極的に展開し、たばこ市場では世界第3位のグローバル企業となった日本たばこ産業(JT)。
海外事業のウエイトをいっそう高める中で、日本人社員の語学力強化策をどのように展開しているのか。

山本祥太郎 氏 人事部次長
ベットスキ・シルビャ 氏 人事部課長
日本たばこ産業
1985年設立。JTグループとして世界中で事業を展開し、世界たばこ市場におけるシェア第3位に。現在、90以上のブランドを120以上の国と地域で展開。
資本金:1000億円、連結売上収益:2兆3998億円、連結従業員数:5万1563人(共に2014年3月31日終了年度)
[取材・文]= 楠本亘 [写真]=編集部

●英語教育 実践力を重視したプログラム

健康志向の高まりや高齢化などにより、国内の喫煙率は年々低下を続ける。そんな中、日本たばこ産業( JT/以下JT)は、主力事業であるたばこ分野での海外進出を積極的に進めてきた。同時に、国内では医薬品や飲料、加工食品などの分野にも進出し、事業の多角化を図っている。

1999年には、RJRナビスコ社から米国外のたばこ事業を取得。また、2007年には英国ギャラハー社をM&Aで取得するなど、1994 年の東証一部上場以降、海外たばこブランドや企業の買収にも意欲的だ。現在、同社のグループ利益の6 割以上は海外たばこ事業が占めるまでになっている。たばこ業界の市場規模で見ても、フィリップ モリス、ブリティッシュ・アメリカン・タバコに次いで世界3位のシェアを占める。

いまや、JTグループは単なる国内の大企業にとどまらない。グローバル企業たらんとし、また現にグローバル化に成功してきた。グローバリゼーションに対応できる人材を育てるために、同社ではさまざまな研修・教育プログラムやサポートを行っている。

語学面を中心に見てみると、まず新入社員研修で、全員がTOEICを受験。英語でのコミュニケーションスキルの現状レベルを知る。その後も、全社員が年2回、TOEICを受験し、継続して目標を立てられるようにしている。

さらに、希望すれば、全社員を対象とする「ストライク研修」の受講が可能だ。この研修はあくまでビジネスにおける実践力を養うものが中心。グローバル対応力を培う、英文での「ビジネスライティング」「プレゼン」、そして「異文化コミュニケーション」の3つがある(図1)。

これらの研修は年に複数回、開催しているが常に定員枠を超える希望者があり、全員は受講できない。そこで、業務上、英語が必要な社員はビジネス英会話教室などに通い、会社が応分の費用をサポートしている。

● 実践力の向上策 海外研修、派遣制度の活用

同社ではここ数年、採用にあたり、「グローバル企業」であることを強調している。そのため、留学経験者などもともと英語に堪能な人が増えている。それでも入社早々、戸惑いを覚え、学びの必要性を感じる人は多いのではないか、と人事部次長の山本祥太郎氏は言う。

入社後、グループのJTI(JT International/以下JTI)とのやり取りでは、英語が共通語となる。また、部署によっては国内での会議、メールといったやり取りでも、1人でも外国人が交じっていれば、原則として英語のみを使用する。特に、資材の調達やマーケティングなどの部門は海外との折衝も多く、英語でのコミュニケーションが前提だ。

山本氏は、語学やコミュニケーションのスキルを高めるためには、何より自主性が大切と指摘する。

「本人の『学びたい』という“渇望感”に期待しています。会社として、全社員の成長を支援する制度やサポートを充実させてはいますが、『やらされている』という感覚では、真の成長はない。自分の内に湧き出る学習意欲がベースにないと、生きたスキルにはならないのではないでしょうか」

渇望感を持ち続ける社員に対して、同社はさらなる成長の場を提供している。それが2006年から始まった制度、EA(エクスチェンジアカデミー)、DA(ディベロップメントアサインメント)、FA(ファンクショナルアサインメント)という3 段階の海外研修、派遣制度だ(図2)。

EAでは、日本、JTIのグローバル本社があるスイスで、各1週間の研修を行う。国内外から参加した社員が集まり、異文化交流やチームビルディングなどを学習。最終日にはJTとJTIの幹部に提言を行う。

さらに、30歳前後の社員を主な対象とするDAでは、約2年と長期にわたって社員をJTIに派遣。現地で外国人社員に交じって戦力として働いてもらう。いわば研修生のような位置づけといえる。

最も難易度の高いFAは、JTIのニーズに応じ、即戦力が期待できる人材をJTIの相応のポストに派遣。期間は1~5年程度とさまざまで、中にはJTIの要職を担うようになった人材もいるという。

せっかく育てた優秀な人材を海外に取られる格好だが、そこはグループ全体で持続的に成長していけばよいという割り切った考えだ。

● 語学教育の目的 海外で活躍する意欲の向上

同社では年に1回、上司との間でキャリア面談が行われる。各人のキャリア志向や特性と会社のニーズを考慮し、海外派遣を決める。これまで、DAではおよそ240人が、FAでは180人が選ばれ、スイスなどの海外に渡った。

8 年強の間に派遣された400人を超える社員たちは、会社からグローバルリーダーを嘱望された人々だ。その選抜はどのように行われるのか。

英語での対話力や交渉力ももちろん見るが、それは二の次だ、と山本氏は言う。

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