J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

CASE.2 SCSK「働きがい」の基本はワークライフバランスにあり経営トップが社員を巻き込み「働き方」を改革

ダイバーシティ、人材育成、健康管理など、合併前から「働きがい」を高めるためのさまざまな仕組みを構築してきたSCSK。
しかし、大切なのは個別の施策より、ワークライフバランスそのものの向上、と悟る。
長時間労働が当たり前だったIT 業界において、労働時間を大きく減らし、ワークライフバランスの改善に努力した同社の取り組みを探る。

SCSK
1969年、前身である住商情報システムが設立。
2011年、CSKと合併し、SCSKに商号変更。
産業システム、金融システムなど7事業セグメントの連携によりITサービスを提供。
資本金:211億5200万円、連結従業員数:1万1689名(2014年3月31日現在)
[取材・文]=平沢真一 [写真]=SCSK

● IT 業界の事情 長時間労働は「当たり前」か?

コンピューター・システムは24時間365日、止まることなく稼働させなければならない。そのため、お客様はごく自然な気持ちで24 時間体制のサポートを期待し、IT会社側もそれに応えるのが使命、という認識を持ってきた。常に変化にさらされており、進化のスピードが速い、という業界事情もある。SCSKの執行役員で人材開発部長の河辺恵理氏も、かつては深夜3 時まで残業し、翌朝9 時に出社するような生活を当たり前にしていたという。

2011年10月、住商情報システム(SCS)はCSKと合併してSCSKとなる。両社の組織や文化を統合・リニューアルする中で、長時間労働を是とする認識を根本的に改めようと立ち上がったのは、住友商事副社長から同社の会長兼社長(現会長兼CEO)に就任した中井戸信英氏だった。

昼休みになると、多くの社員が机に突っ伏して寝ている。その姿を見て、中井戸氏は「この会社は人を大事にしていない」と感じた。

「『まずは働く環境を変える』と言い、取り掛かったのが引っ越しでした。すぐに東京都中央区晴海から、江東区豊洲の広く新しいオフィスへと本社を移転しました。1人当たりのワークスペースを1.5 倍に拡大しただけでなく、社員食堂、診療所、リラクゼーションルームなども整備しました」

中井戸氏は働く環境を整えると、今度は「社員の働き方を変える」と決めた。

●「働きがい」の基本 ワークライフバランス

合併前から住商情報システムでは、「働きがい」に注目し、ダイバーシティや人材育成などに力を注いできた、と河辺氏は振り返る。

例えば、ダイバーシティの面では、女性の活躍を促すために、育児と仕事を両立できる制度を数多く整えている。定時帰宅や育児休暇はもちろん、会社の近隣に引っ越せば、引っ越し代の50%を支給したり、保育所にかかる費用の50%を支給したりと、かなり手厚い内容である。

しかし、そこまでしても、女性社員の働きやすさはあまり向上しなかった。「ほかの社員は皆、遅くまで働いているのに、自分だけ先に帰るのは不安」とか、「大事なことは夜の会議で決まる。意思決定に参加できない」など、ビジネスパーソンとしてのキャリア形成に不安を抱き、安心して働けないと訴える声は相変わらず多かった。

対策を検討するうち議論は次第に「これって、本当に女性や育児の問題なのか、という話になってきた」(河辺氏)。問題の本質は制度整備ではなく、慣習となっている長時間労働にあることがわかってきたのだ。

残業を前提とするから、「定時帰宅」がまるで特別なことのように議論される。自分が出られない夜の会議で何かが決まってしまうことに不安を持つのは、女性に限らず、誰だって同じではないか。

長時間労働は社員に健康被害をもたらすばかりでなく、慢性的な疲労感によって、創造的な仕事を妨げる。技術系社員は勉強する時間が十分に取れず、将来に不安を覚えている。そんな働き方を放置したまま、どんなに手厚い制度や施策を講じても、働きがいなど感じられるはずがない。そんな意見に、皆がうなずいた。

たどり着いたのは「働きやすい、やりがいのある会社の環境整備イメージ」(図1)だ。「ワークライフバランス」を全ての基本と位置づけ、それを実現して初めて「ダイバーシティ」「健康管理」「人材育成」などの施策が意味を持つ、としている。

働きがいを論じる前に、長時間労働をやめてワークライフバランスを整えることが必要だ。この考え方を大義として、中井戸氏をリーダーとする同社の挑戦が始まった。

● 最初の挑戦 まず残業時間の半減をめざす

2012 年4月、それまで部分的に導入していたフレックスタイム制を全社員に広げ、同7月から本格的な「残業半減運動」に入った。仕事に対する意識を「量より質」に改革するための施策だ。

その取り組みは徹底したものだった。まず、全社で160ほどある部署の中から、特に残業の多かった32部署の部長を責任者として、残業を減らすための具体的な施策を提出してもらった。実施期間は7月~ 9月の3カ月間。結果は各部長の業務成績に反映されることになった。

提出された施策の中には、「業務の見直し」「仕事の負荷分散」「形骸化しているノー残業デーの徹底」などが見られたほか、「朝礼や昼礼でコミュニケーションを強化するといった施策も多かった」(河辺氏)。1日1回、部内の仕事を皆で確認し合い、本当に残業が必要かどうかを検討する。日々部員間で仕事量を調整し、全体としての残業時間を減らす。かつての同社とは、発想からして大きく変わってきた。

同社のフレックスタイム制は、11時から15時がコアタイムだ。従来も、管理職を中心にこの制度を導入していたが、「お客様の営業時間が9 時から5時までだから、自分の勤務もそれに合わせよう」と考える人が多く、あまり機能していなかった。

「フレックスタイム制を全社員に広げたのを機に、そのような考え方も改めてもらった」(河辺氏)。「社員の労働時間を管理する責任は部長にある」として、深夜残業をした翌日は11時出社としたり、残業が続いた週の翌週は毎日15時に帰宅する、などを徹底した。

また、情報セキュリティーの観点から、従来はお客様の資料を自宅に持ち帰らない慣習があり、客先へ直行・直帰できる状況でも、資料を取るためだけに会社に立ち寄っていた。合理的に考えてこれを見直すなど、細かい改善を施した。

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