J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

CASE 1 アサヒビール 働きがいのある組織の源泉 自社商品へのロイヤルティと会社に対する信頼

「働きがい」について調査を行うGreat Place to Work®Institute Japanの
「働きがいのある会社ランキング」で、2007年から2012年まで
6年間連続でベスト10入りしたアサヒビール。正社員離職率も1%未満と低い。 
従業員が意欲的に働けるよう、どのような取り組みを行っているのか。
人事部長の杉中宏樹氏に聞いた。

アサヒビール
1889年、大阪麦酒会社の名称で創業。「アサヒスーパードライ」は1987年に誕生。ビール業界に革命を起こすヒット商品となった。発泡酒やビールテイスト清涼飲料、洋酒、ワイン、低アルコール飲料、焼酎など幅広い酒類を手がける。
資本金:200億円(2011年7月1日現在)、連結売上高:1兆7142億円(2013年12月期)、従業員数:3905人(2013年12月31日現在)
[取材・文]=赤堀たか子 [写真]=アサヒビール、編集部

● 働きがいを生み出す土壌 商品への愛着と会社への信頼

アサヒビールには働きがいを感じる社員が多い。理由のひとつは「商品への愛情」ではないか。人事部長の杉中宏樹氏は次のように解説する。

「当社の商品は、ビールをはじめとする消費者向けの商材。いずれも身近な商品だけに愛着はひとしおでしょう。さらに言えば、社員は、スーパードライが大好きで、『スーパードライをつくりたい、売りたい』と思って入社した人がほとんどです。“スーパードライ好き”が集まることで、自然と社員のベクトルが揃う。“体育会系”とも言える、一体感、団結感がある組織風土が醸成されたのだと思います」

実際、社内を見ても、「自社商品しか飲まない」という社員が多いそうで、「他の業界では、商品が気に入れば他社のものを買う人もいると聞きますが、当社では考えられないこと。飲食店さんには、まず、自社のビールがあるか調べてから行きますね(笑)」というほどだ。

会社に対する信頼も働きがいに結びついている。経営理念に「最高の品質」を掲げる通り、品質重視を貫いている。その姿勢が、「おいしいだけでなく、優れた品質の商品を提供している」という自負を生む。結果的に、高いロイヤルティーや定着率につながっているのではないかと、杉中氏は分析する。

● 施策1 ブラザー・シスター制度

一方、人事施策による効果も見逃せない。そのひとつが、「ブラザー・シスター制度」だ。

新入社員に対し、5 ~ 8月の仮配属の期間中、職場の先輩社員がブラザーやシスターとなり、1対1で指導したり、相談に乗ったりするというもの。同社の伝統的な新人育成制度として長年活用されている。

新入社員は、最初に集合研修を受けるが、座学の勉強だけでは、学んだ内容を実践に移すことは難しい。そこで、OJTが必要になるが、その際、傍らでわからないことを教えてくれたり、間違いを正してくれたりする先輩がいれば、安心して仕事に臨める。そうした配慮から生まれたのがこの制度だが、実は、教えられる側だけでなく、教える側の教育にもなっているという。

「自分自身が理解していなければ、人には教えられない。だから先輩社員も必然的に勉強することになります。また、後輩の指導を通じ、コーチング研修や指導マニュアルで学んだ内容を、自分のスキルとして身につけることもできます」

ブラザー、シスターは、公募制で集める。伸ばしたいと思う部下に上司が応募を勧めることもあるが、基本的には、やりたい人が手を挙げる。したがって、応募者のほとんどは、リーダーシップのある前向きな人で、指導にも熱心に取り組む。その結果、「後輩も指導してくれた先輩を慕うようになります。指導期間終了後も信頼関係はずっと続きます」(杉中氏)。

● 施策2 キャリアアドバイザー制度

もうひとつ若手をサポートする仕組みに「キャリアアドバイザー制度」がある。キャリアアドバイザーという専門の相談員が全国を巡り、入社2、3 年目の社員と面談するというものだ。

アドバイザーは、同社のOB。人事系の役職経験者などから2 名を選び、2、3 年の任期で依頼している。

「現在の仕事はやりがいがあるか」「職場の人間関係や顧客との関係は良好か」といったことを聞き、何か問題があれば、人事に伝えるのがアドバイザーの役目だ。

入社2、3 年目の社員にとって、アドバイザーは、自分の親世代、あるいはそれ以上の年齢の人ということもあり、上司や同僚に話しにくいことでも打ち明けやすいという。また、この面接を行うことで、若手の間に「会社は、自分のことをしっかり見ていてくれる」という認識も育まれる。

「一定の年次で行われる集合研修もありますが、配属先によっては、本社と接点が少ない人もいます。しかし、キャリアアドバイザーの面接があることで、本社の人事も自分のことを気にかけていてくれると感じ、安心感が生まれるようです」

現在は、2人のアドバイザーが全国を回っているが、今後は、シニア世代の活用とからめ、各エリアに1、2名ずつアドバイザーを配置していくことも考えている。

● 施策3 プロセス評価

働きがいを高めるためには、労働環境の整備はもちろんだが、仕事そのものへの満足度も重要だ。仕事の成果に対する評価も納得がいくものでなくてはならない。

そこで同社では、6 年前からプロセス評価を導入している。期首の目標設定時に、具体的な取り組みを設定。上司は、その取り組み状況を見ながら、必要に応じ、軌道修正を促しつつ、目標達成に向け、指導する。

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