J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年02月号

巻頭インタビュー 私の人材教育論 伸びるのは、好奇心を胸に何事にも学ぶ、輝きを持つ人材

自動車用・産業用各種電池、停電時にビルや通信・交通などのインフラシステムを一時的にバックアップする電源システムなど、社会を支える製品の製造・販売を行うGSユアサは、持株会社ジーエス・ユアサ コーポレーションの事業子会社である。
その両社の代表取締役社長を務めるのが、依田誠氏だ。
依田氏は1972年、旧日本電池に入社後、海外を中心にキャリアを重ね、2006年に社長に就任。その後、経営統合に伴う難しい局面を、強いリーダーシップで引っ張ってきた。
さまざまな課題をクリアし、2013年度には過去最高の業績を達成した依田社長が描く、今後必要とされる人材像とは。

依田 誠 (Makoto Yoda)氏
生年月日 1950年1月24日
出身校 中央大学商学部
主な経歴
1972年3月 日本電池(現 GSユアサ)入社
1995年4月 山東華日電池有限公司総経理
2000年9月 日本電池(現 GSユアサ)情報通信事業部長
2001年6月 同社取締役
2002年6月 同社常務取締役 電源システム事業部長
2004年4月 ジーエス・ユアサ コーポレーション(持株会社)常務取締役
6月 GSユアサ(事業子会社)代表取締役社長(現任)
2005年6月 ジーエス・ユアサ コーポレーション 専務執行役員
2006年6月 ジーエス・ユアサ コーポレーション 代表取締役社長(現任)
現在に至る

GSユアサ
2004年4月、日本電池(GS、1917年設立)とユアサコーポレーション(1918年設立)が経営統合して持株会社ジーエス・ユアサ コーポレーションを設立。GSユアサはその事業子会社。自動車用・産業用各種電池、電源システム、照明機器等の製造・販売を行う。
【ジーエス・ユアサ コーポレーション連結】
資本金:330億円、売上高:約3480億円、従業員数:13600名(いずれも2014年3月31日現在)
インタビュー・文/竹林篤実
写真/行友重治、GSユアサ提供

さらなる飛躍のテーマ

──ジーエス・ユアサ コーポレーション全体として、第三次中期経営計画の初年度(2013年度)は上々の立ち上がりでした。今後の見通しについては、どのようにお考えですか。

依田

おかげさまで2013年度は、売上高および営業利益、経常利益が過去最高となりました。2004年に旧日本電池と旧ユアサコーポレーションが経営統合して以来、10年が経過しています。これまでが経営統合の是非を検証する期間だったとすれば、まず成功と言ってよいでしょう。これを受けて次の10年では、さらなる飛躍をめざすことになります。

──自動車・二輪車用の鉛蓄電池では国内トップシェア、世界でも第2位のGSユアサが今後めざす企業像とは。

依田

ひと言で表すなら「エネルギーデバイスカンパニー」です。エネルギーをつくり、貯めて、社会に供給していく。エネルギーの効率的活用が、よりシビアに求められるこれからの社会において、重要な役割を担う企業集団への転換を図ります。第三次中期経営計画は、そんな思いを込めて練りました。

もう少し具体的に言えば、省エネ、創エネ、蓄エネを3本柱に据えた企業、ということです。

今のところ我々の基幹事業は、鉛蓄電池です。リチウムイオン電池が話題となっていますが、当社の売上構成で見れば10%程度にとどまります。ただ、今後の成長の糧がリチウムイオン電池であることは明らかであり、鉛とリチウムを成長の両輪として、マーケットに合わせた組織改編に取り組んでいきます。

──どう組織を変える予定ですか。

依田

そもそも鉛蓄電池とリチウムイオン電池では、生産と流通の仕方が違います。鉛蓄電池は基本的に地産地消型、需要のある地域で製造供給するのが効率的です。対してリチウムイオン電池は装置産業型の商品です。高度に機械化を進めた工場が必要なため、初期投資にそれなりの額が求められます。

したがってリチウムイオン電池では、一定の販売量を確保したうえで生産体制を構築しないと採算が取れません。そこで、より大きなマーケットを狙うのに、グローバル化は必然の流れとなります。

現在、当社には国内の事業部とは独立した形で国際事業部があります。鉛蓄電池主体の事業体制であればこれでよかったのですが、今後、リチウムイオン電池事業を伸ばしていくためには、グローバル化のレベルを一段階引き上げる必要があると考えています。

グローバル人材の本質

──グローバル化を進めていくとなれば、求められる人材も変わってくるのではないでしょうか。

依田

地産地消体制なら、中国で販売する製品は中国でつくり、インドネシアでつくったものは現地で売るわけです。この体制では、日本で働く従業員と海外の従業員が交流する機会はまずないでしょう。ところがグローバル化を進めれば、国による垣根はなくなります。海外から日本に来て働く人が出てくるだろうし、逆のパターンも増えてくるはずです。

── 最近は大学でも「グローバル人材」育成を目標に掲げるところが増えています。GSユアサではどのような人材を求めているのでしょうか。

依田

まず、グローバル人材とは何かを改めて考え直す必要があります。グローバル人材と言えば、一般的には語学力と、海外で暮らしていける精神的なタフネスなども注目されているようです。

けれども、それは本質ではないと考えています。言葉は基本的にツールに過ぎません。英語に関しては、中学校から大学を卒業するまでに10年間接しているわけです。ですから一定の基礎知識は身についているはずで、普通に考えれば最低限のコミュニケーションはとれるでしょう。

日常の会話において文法的に正しいかどうかは、全く関係ありません。会話の中で“I go to school yesterday”と言ったとしても、そこは“go”じゃなく“went”だろうなどと誰も指摘しないでしょう。文章にできなければ、単語を並べるだけでも理解してもらえるものです。

──要は、伝える何かを持っていることと、伝えたい気持ちが大切だと。

依田

営業ならば、価格は$100だと紙に書いて、「OK?」と添えれば、商談は可能なわけです。

だからといって語学力を否定しているわけではありません。言葉はもちろんできるに越したことはないし、語学的なセンスもあったほうがいい。けれども、根幹に持つべきは“自己主張”です。海外では何事につけ交渉しなければ、前に進みません。交渉する際に必要なのは、自己主張なのです。

求められる脱・日本人的行動

──日本人の一番苦手なことかもしれません。

依田

国民性による違いは確かにあります。例えば空港で飛行機の遅延が決まった時の行動などを見ていると、はっきりと差が出ます。

航空会社のカウンターで、一番最初に一番大きな声で騒ぎ出す人たち、次に大きな声で怒鳴るように自らの要求をまくし立てる人たち、冷静な話し振りながら極めて論理的に交渉を進めようとする人たちなど、国による違いは明らかです。そして、それを遠く離れたところからじっと見ているのが日本人です。これでは海外で生き残っていくのは難しい。

自分の要求をきちんと主張しなければ、代替便への優先順位や出発までの時間を過ごすホテルのグレードなど、全ての待遇や条件が悪くなったり、後回しにされたりするかもしれません。個人レベルの問題であれば自分が我慢すれば済むかもしれませんが、ビジネスの場であれば、言うべきことを言わないのは致命的な機会損失になりかねません。もちろん一方的に我を通せという話ではなく、こちらも言いたいことを言う、その代わり相手の話も受け止める。これが大原則です。

輝きを放つ人材をめざせ

── 組織がグローバル化すると、求められる人材も当然、大きく変わってきますね。

依田

それを教育でなんとかしようという話になるわけですが、例えば理想的なリーダーを“教えて育てる”のは難しいと考えています。部下から慕われるのは人間的な魅力を備えている人だと言われます。では、そんな魅力を教育で身につけさせることができるものでしょうか。

それより先天的な資質に私は注目します。人を見る時に気をつけているのは、その人が何か輝くものを持っているかどうか。どこか1つでもキラっと光るものがあれば、それを起点に伸びていく可能性は高いでしょう。

──ある意味、運命論的な捉え方をされているのでしょうか。

依田

確かに人には、持って生まれた運不運があると思います。人生をトータルで判断すれば、最終的にはバランスが取れると言われますが、そんなものではないでしょう。運のよい人はずっとよいままでいるように私には思えます。

ただし誤解されては困りますが、運不運で人の優劣が決まるという話ではありません。

──どうすれば輝く人材になれるのでしょう。

依田

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