J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年01月号

船川淳志の「グローバル」に、もう悩まない! 本音で語るヒトと組織のグローバル対応 第9回 緊急提言版:学び方を変えない限り、英語どころか『グローバル対応』は無理!

多くの人材開発部門が頭を悩ませる、グローバル人材育成。
グローバル組織のコンサルタントとして活躍してきた船川氏は、「今求められているグローバル化対応は前人未踏の領域」と前置きしたうえで、だからこそ、「我々自身の無知や無力感を持ちながらも前に進めばいいじゃないか」と人材開発担当者への厳しくも愛のあるエールを送る。

船川 淳志( ふなかわ あつし)氏
グローバルインパクト代表パートナー。慶應義塾大学法学部法律学科卒業。東芝、アリコジャパンに勤務後、アメリカ国際経営大学院(サンダーバード校)にてMBA取得。組織コンサルタントとして活動する傍ら、以下の講師を歴任。サンダーバード日本校 客員教授(1999-2003)、NHK教育テレビ「実践・ビジネス英会話ーグローバルビジネス成功の秘訣」講師(2003-2004)、社団法人日本能率協会 主催「グローバルビジネスリーダープログラム」主任講師(2004-2007)、国際基督教大学大学院 Global Leadership Studies 非常勤講師(2011-)、早稲田大学大学院 ETP 非常勤講師(2011-)。

前回の解答を提示しない理由

第8回(本誌2014 年12月号)では、19問の問題を掲載した。その解答と簡単な解説をリストアップするのが連載記事の通例だろう。しかし、私はそれをしない。なぜか。

前回のクイズ、19問はこれまでの私の講座の受講生をはじめ、さまざまな方に取り組んでいただいている。英語力があって(レベル3.0以上)、普段から英語を使っている解答者は「(問題のレベル感としては)こんな感じでしょうね、恐らく」とか、「でも、一般の人には難しいでしょうね」と嫌味ではなく言っていた。

「3.0以上」の中でも、「かろうじて3.0に到達した人」、言いかえると「英語でのプレゼン、交渉、ファシリテーションをなんとかこなしている人」にとって、前回の問題は確かに難しいだろう。実際、商社やメーカーに勤務し駐在員経験もある「英語のビジネスは10 年以上」という方でも、第1部、第2部を通して「未知の言葉」、「未体験の言い回し」が2 割程度あった。これは全く不思議ではない。反対に「4.0に近い人たち」は20問中、わからない問題は1、2問だった。

では、「かろうじて3.0に到達した人」と「4.0に近い人」は何が違うのか。まさに、その違いに気づくことが、「解答リスト」を確認することよりはるかに重要だ。そして、その違いに気づけないことこそ、多くの日本人にとって英語が上達しない根本的な原因になっている。したがって、今回はこの問題を取り上げていきたい。

「帰国子女」というレッテル

「4.0に近い人たち」に共通している点がいくつかある。まず、彼ら、彼女たちは海外、それも英語圏での仕事や留学など何らかの原体験を持っている。帰国子女の人もいる。ただし、留学経験者が必ずしも4.0に到達できるわけではないことは強調したい。特にMBA取得者の場合、「英語環境での仕事」に従事した経験がないと、かなり厳しい。理由は2つ。多くのMBAホルダーは日本の大学を卒業し、何年かの社会人経験を経て留学する。となると、早くても20 代半ば、それ以降でMBAをめざすわけだ。年齢は語学習得の絶対的な制約条件ではないが、年齢が上になればなるほど厳しくなるのは事実だ。2 年の留学経験後、仮に外資系企業に入ったとしても、実は英語力はそれほど必要としないという業種、職種も少なくない。

また、「帰国子女だから英語ができる」というステレオタイプ(先入観、思い込み)は論外であることも、この際、述べておこう。「帰国子女」というラベリングは、現代の全球化時代の「多様な帰国子女」には当てはまらない。バンコクの日本人学校に通った人もいれば、ウェールズの寮制学校に通った人もいる。後者のほうが英語ができると思いきや、そうとも限らない。帰国後、英語を使っていなければ話せなくなるからだ。この自明の理を無視した世間のラベリングに辟易している帰国子女は少なくない。

厳密に言えば、ステレオタイプは頭の中を効率よく整理する機能のひとつでもある。さまざまな事象や要素をなんらかの「くくり」で整理できるからだ。

しかし、その「くくり」を個々の事象や人間に当てはめていくと先入観となり、実態を捉えられなくなる。これは多文化、多国籍、多民族、多言語社会において極めて重要な問題だ。「やはり中国人は」というような安直なステレオタイプにいかに我々が飛びつきやすいか、考える必要があるだろう。日本国内でも我々は社名や学歴など属性のステレオタイプに依存し、一人ひとりを理解する努力を怠っていないか?そんなことを続けていれば、いつまでたっても人間を真に理解することも、物事の本質に迫ることもできない。

言語空間の広がりと深み

「4.0に近い人」に共通している2番目の要素は、日本語であれ英語であれ、「言語空間の広がりと深み」を求めている点だ。人間は言葉とイメージによって思考している。英語でも日本語でも、言葉があやふやな人は思考もあやふやだ。いくら英単語を暗記しても、第6回(本誌2014 年10月号)で述べたように、それは「点の学習」であって、「線の学習」や「面への展開」にはならない。言いかえれば、「点在する単語」を知っていても(knowing)、点と点を結びながら考える(thinking)習慣がなければ、言語空間は広がらない。

例えば、前回のクイズ第1部Q5に次の問題があった。

Q5 福島第一原子力発電所の事故は我々に多くの課題を突きつけています。この原発はBWRといわれる沸騰水型原子炉。BWRをそれぞれ英単語で言うと?

私が最初に勤めた東芝、あるいは日立や電力会社の方だったら知識としてBWRを知っている人もいるだろう。しかし、実際に総合電機メーカーや電力会社の社員、合計400人以上に解いていただいたところ、Boiling Water Reactorと正解を書ける人は2割程度だった。電機メーカーに勤務していても、担当業務によっては、いきなりこう聞かれるとまごついてしまうのは当然だ。

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