J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2015年01月号

KEYWORD 3 女性活躍推進

アベノミクスの成長戦略の中核として位置づけられ、メディアでも毎日のように話題となっている「女性活躍の推進」。
これを受け入れ、現場で推進していく立場にある企業に対して、国はどのような支援を行っているのだろうか。
本稿では、2014年10月に行われた「第66回 全国能率大会 経営・技術大会」での講演内容から、経済産業省の取り組みと、そこから見えてきた企業の女性活躍推進に関する望ましい方向性を中心に紹介する。

福地真美( ふくち まみ)氏
経済産業省 経済産業政策局 経済社会政策室長
1997年通商産業省(現経済産業省)入省。エネルギー需給見通しの策定、経済協力政策や石油・天然ガス確保政策等を担当。在マレーシア日本国大使館赴任を経て2014年7月から現職。ダイバーシティ経営企業100選など、女性をはじめとした多様な人材がいきいきと活躍できるような社会の環境づくりに取り組む。私生活では1児の母。

[取材・文]=田邉泰子 [写真]=経済産業省提供・編集部

成長戦略の中核に位置づけ

安倍政権が掲げる「アベノミクス」の三本の矢の1つが、企業活動や貿易の規制緩和を中心とした「成長戦略」である。2013 年4月、安倍晋三首相は「成長戦略スピーチ」の中で、その中核として「女性の活躍」を取り上げた。

具体的には、「2020 年までに指導的地位に占める女性の割合を30%にする」という目標を掲げ、それに合わせて女性登用に向けた目標設定と自主行動計画の策定や、有価証券報告書への女性活躍の情報開示を各企業に求める他、国・自治体・企業の連携による新たな法的枠組みの構築といった、具体的な施策の運用に踏み切った。

こうした中、経済産業省(以下経産省)では、女性活躍推進に向けたさまざまな取り組みを行っている。今回は、それらの背景と具体的な施策について紹介したい。

女性活躍推進4つの背景

そもそも、なぜこれほどまでに女性の活躍を推進していく必要があるのか。

最大の理由は、これからの企業経営において、女性を含め多様な人材を活用する「ダイバーシティ・マネジメント」がより重要とされるからである。その背景に、次の4つが挙げられる。

1つめは、「多様なニーズへの対応」だ。中でも女性は、家計支出における意思決定のうち、6~7割は女性が行うという調査もあるほど、世界的に見て市場のメインプレーヤーとされる。よって「女性のニーズ」に応えることは不可欠であり、企業がそのための戦略を立てるうえで女性の存在は大きいからである。

2つめは、「資金調達」である。欧州を中心に、SRI(社会的責任投資。投資先選定の際にCSR活動を重視すること)のシェアが拡大しており、ダイバーシティの推進も指標の1つとされている。長期的かつ安定的な資金調達のためにも、女性の活躍は一役買っているということだ。

3つめは、「適応能力の向上」が挙げられる。イギリスのリーズ大学の調査によると、「役員に女性が1人以上いる企業は、経営破綻の確率を20% 減らすことができる」という報告もあり、多様な人材を擁する企業は、ガバナンス管理や変化に対する対応力に優れ、仮にリーマンショックのような厳しい環境下に置かれた場合でも業績の落ち込みが少なく、かつリカバリーが早いとされている。

そして4つめに挙げられるのが、「優秀な人材の確保」だ。能力は高いが制約のある人材も能力発揮できる環境を整えることにより活躍を後押しし、さらにその成果を社会に向けて発信することで、より広い母集団から人材が集まるようになり、優秀な人材確保につながる。

なお「女性が活躍している企業は業績がよい」という調査もある(図1)。

以上の理由から、ダイバーシティ・マネジメントの試金石として女性活躍を促進することは、企業経営にプラスの効果を与えるというのが、世界における標準的な見解である。

旧態依然で取り残された日本

一方、日本はといえば、2014年の世界経済フォーラムが発表した男女平等などの度合いを示す「ジェンダーギャップ指数」ランキングで142カ国中104位と、女性の活躍が進んでいるとはとても言い難い。「終身雇用・正社員・男性中心」という、戦後の製造業を中心とした「大量生産・価格競争」の経済構造に即した就労モデルからの一層の変革が必要な状況にある。

ところで、「日本は歴史的に男女の役割が違うので、他国に比べて女性の就業率が低い」といった論調が一部で見られるが、果たしてそうだろうか。

OECDの調査では、1970 年代初頭の日本の女性就業率は50%台なのに対し、オランダは20%台であり、決して低い数値ではなかった。ところがそれ以降、各国とも女性が働きやすい社会の実現に向けてさまざまな政策を進めたため、急速に女性就業率が上昇した。結果として、1990 年代半ばにはオランダに逆転を許すなど、日本は取り残された状態で今に至るのである。

現在、日本には約300万人超の女性の潜在労働力が存在すると見られるが、この層の就労が実現すると、雇用者報酬は7兆円増加するという試算がある(平成24年2月 男女共同参画会議基本問題・影響調査専門調査会報告書より)。また、例えば米国ヒラリー・クリントン氏がスピーチの中で「日本の女性労働力が男性並みに上昇すれば、GDPは16%上昇する」と発言したように、海外からも日本の女性の活躍による経済効果に期待の目が注がれている。

量と質の相乗効果を狙う

そうした背景を受け経産省では、女性活躍促進に向けた取り組みの方向性を、大きく2つの軸で捉えている。

1つめの軸は「量の拡大」である。現在、第1子出産を機に約6割が離職している状況にある。さらに、少子高齢化や人口減少を受け、将来の日本には深刻な人材不足が懸念されている。そこで、「ワークライフバランスの推進」や「保育園や学童の整備」など、女性が働きやすい環境を整え、女性が働き続けられるようにするものだ。

もう1つの軸は、「質の向上」である。現在、働き続けている女性であっても、能力を十分に発揮できていないケースもある。企業の競争力強化の点においても「女性が能力を存分に発揮し、活躍できる組織の構築」が、成長には不可欠だ。企業は経営戦略の中核としてダイバーシティ・マネジメントを推進することが重要であると同時に、例えば女性の管理職・役員への登用など女性活躍の状況を「見える化」することも求められる。

そして「量の拡大」と「質の向上」の2つの軸は、互いに影響し合う関係だと捉えている。両方が強化されることで女性が活躍する場の裾野が広がり、キャリアアップのロールモデルが増えることで、さらに「量」と「質」が強化されるという、シナジー効果が期待できる。

女性活躍を支援する取り組み例

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