J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年04月号

Opinion③ ディズニー社の例に見る顧客満足を向上するソーシャルラーニング戦略

会社を超えて、広く社会から学ぶことができるソーシャルラーニング。この「社会」には、当然ながら「顧客」も含まれる。Facebookが生まれた米国では、企業でも先進事例が出てきているが、米国のラーニング事情に詳しい、きよみ・ハッチングス氏が、中でも成功事例であるディズニーの、「顧客とともに学ぶソーシャルラーニング」について解説する。

きよみ・ハッチングス 氏
米国カリフォルニア州に在住。30年前より日米のビジネスの架け橋として、コンサルタント会社「クロステック社」を設立し企業、政府、教育機関のプロジェクトに携わる。企業関連では、リーダーシップ研修、コーチング等の人材開発に携わる傍ら、「組織評価及び改革」「企業文化の醸成」等のプロジェクトにも参画。日本イーラーニングコンソシアムでは、海外レポートを担当。著書に『グーグルに学ぶ幸福な職場』(朝日クリエ出版)などがある。

2011年12月、フォーブズオンライン誌は、Facebookのユーザー数が8億人にも上り、5億人が毎日ログインしているという数字を発表した。このようなユーザーの増加に対応し、欧米の企業は盛んにソーシャルメディアを自社のウェブサイトに導入し始めたが、トレンド的に導入したため失敗した事例も多い。

しかし、そんな中でディズニー社は、早くからソーシャルメディアをカスタマーサービス(CS)の向上に利用し、2011年度には『ビジネス・ツー・コミュニティー』誌とeラーニング専門誌の『ツリバンテス』誌より、「企業業績に即貢献するソーシャルラーニング」で高い評価を得た。好例として見てみよう。

カスタマーニーズの変化と企業内教育

同社には、ディズニーランドのようなテーマパーク、クルーズ、ホテルといくつもの「ディズニーブランド」があるが、創立以来何よりも大事にしているのが「ああ、楽しかった」というカスタマーの声である。この声を聞くために、同社は2つの方法で従業員教育に取り組んでいる。

1つは、25年前から行われている「ディズニー・インスティチュート」による従来の企業内教育。もう1つはオンラインカスタマーの増加に対応した新しい教育方法で、「オンライン上でのカスタマーとのソーシャルラーニング」である。

同社の米国のサイトに来るカスタマーは、ほとんどが子どもとその親達(母親が多い)だが、Facebookユーザーが多く、おしゃべり好きで、Facebookの“友達”からいろんな情報を得ている。知識が豊富で買い物上手だが、問題に即対応してくれないと怒る、という特徴を持つ。

Facebookユーザー1人には、平均で100人の“友達”がいるといわれるが、そうしてオンライン上で毎日いろんな話をしているカスタマーのニーズは瞬時に変化している。そのため、同社の教育関係者は、同社が誇る「質の高いCS」を実践するには、従来の企業内教育だけでは内容的にもスピードにおいても十分でないことに気づいたのである。

特に、Web上で実際にカスタマーとやりとりをするオンラインサービスの担当者は、対話や活動を通してカスタマーが「今必要としていることは何か」をつかみ取り、タイムリーにそれを提供できる必要がある。ディズニーの教育部は、これからのCS向上のためには、カスタマーに「自分が関心のあることを学びやすいソーシャルな環境」を提供し、同時に社内に「カスタマーとソーシャルラーニングができる人材」を揃えることが重要であると判断。「ディズニー・インターアクティブメディアグループ」を新しく設置し、ソーシャルラーニングを戦略的に実施し始めたのである。

カスタマーにとって学びやすい環境とは

同社のオンラインサイトhttp://disney.go.comとソーシャルサイトhttp://disneyparks.disney.go.com/social-media/はカスタマーが「一緒に話したくなること」や「一緒にやりたくなること」で盛りだくさんである。たとえば、「思い出を共有しましょう」というページでは、ディズニーと自分の思い出の写真やビデオ、思い出話を使ってドキュメンタリーを作ることができる。「ディズニーワールドに行きたい」のページでは、ディズニーワールドに入場する際に胸に貼るステッカーを、前もって自分の家族用に作れる。また、母親用のコミュニティーサイトでは、パークでの過ごし方や宿泊先などについて活発な意見交換が行われており、さらには毎年「Disney Social MediaMoms Celebration」という母親用のコンフェレンスも主催している。

ここに、ディズニー社と、ソーシャルメディアの利用で成功していない他社との大きな差がある。

他社は、口コミ効果の強いソーシャルメディアを宣伝ツールとしてだけに利用し、盛んに自社の商品について伝えようとしている。すなわち「教えてあげましょう」という、一方向のクラスルーム方式で利用している。自社のサイトにアクセスするカスタマーは、自分の関心のあることについて、他の人達と一緒に学びたいと思っている人達であることを無視しているのである。当然ながら、自分が主体的に参加できないサイトには早く飽きて去っていき、もっと悪いことには「このサイトは面白くない」といった悪評を瞬く間に広げてしまうのである。

カスタマーとソーシャルに学ぶ?

「カスタマーとソーシャルラーニング」という教育方法は、従来の研修スタイルに慣れている教育関係者からみると理解しにくいだろう。パブリックのオンラインサイト上でカスタマーと学ぶ、というのはどのようなことなのか。

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