J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年10月号

内省型リーダーシップ 第6回 内省型フォロワーシップ

前回までお読みいただいた読者の中には「自分の上司にも内省型リーダーシップを学んでほしい!」と思われた方もいるかと思います。そう思っていただいたことは嬉しいのですが、内省が必要なのはリーダーだけではありません。フォロワーにも内省は有効な行動様式なのです!リーダーがどんなに優れていても、実際にはリーダー以外の人々(フォロワー)が動かなければ何も達成できません。今回は理想のフォロワー像を提示します。


永井 恒男氏(ながい つねお)
野村総合研究所IDELEA(イデリア)事業推進責任者
2005年、野村総合研究所の社内ベンチャー制度を活用して、エグゼクティブコーチングと戦略コンサルティングを融合した新規事業「IDELEA(イデリア)」を起案し、立ち上げる。facebookとtwitter(ID:neo_nagai)で連載の感想募集中!
http://www.id.nri.co.jp/

内省はリーダーにだけ必要なのではない!

前回まで内省がリーダーシップに有効であることを述べてきた。筆者はメンタルモデルや自己定義の再構築といった自己変革こそが組織を変えていくことを強調してきたつもりである。共感していただいた読者の中には、「自分の上司も内省型リーダーシップを知ってくれたらなぁ」と思った方もいるだろう。大変ありがたいことながら、少しその考えを保留してほしい。「上司(または社長)に変わってほしい」という考えの底にはどのような世界観が横たわっているのだろうか?内省型フォロワーシップとは、フォロワーであることを積極的に選択し、全体最適を考えながら主体的に考え、実行するというフォロワーが有すべき自己定義である。本稿ではフォロワーのための内省についてご説明する。いずれはリーダーになりたい方はもちろん、リーダーになりたくなくても仕事を充実させたいと思っている方には是非読んでいただきたい。

組織を変えるのはフォロワーだ!

リーダーとは、自らのビジョンを信じ、前人未到の沼地を渡り、現状を大きく変える人である(『リーダーシップの旅』野田智義+金井壽宏/著、光文社/刊)。そのためリーダーはいつの時代でも脚光を浴びるが、フォロワーがいなければリーダーは存在しえない。起業家であるデレク・シヴァーズ氏が「社会運動はどうやって起こすか」についての講演で興味深い映像を提示しながら、フォロワーの大切さを解説している(www.ted.com/talks/lang/jpn/derek_sivers_how_to_start_a_movement.html)。ある野外コンサート会場で、ある男が大変ユニークなダンスを始める。しばらくの間、周囲の人は茫然と見ていただけであったが、数人が一緒に踊り出し、次から次へと一緒に踊る人が増え、遂には数百人が一緒に踊るというものだ。デレク氏も強調しているが、興味深いのはフォロワーがいなければ、最初にユニークな踊りを踊り出した男はただ1人で踊るだけで終わり、ムーブメントは起こらなかったということだ。リーダーが偉く、フォロワーが取るに足りない存在というわけではないことをここでは強調したい。フォロワーが存在してこそ、リーダーが存在できる。自分がリーダーを引き受けた時こそ実感ができるだろう。かけ声をかけても一緒にやってくれる人がいなければ何もできないのだ。またリーダーとフォロワーは役割であって固定的な身分のようなものではない。近年では、部署横断のタスクフォースのような取り組みがなされることが多いが、そこでは部長がメンバーで課長がリーダーであるというように、役職が逆転することもありうる。その時に、部長が「課長の指示には従えない」と上司面を決め込むことがある。これではリーダーである課長はやりにくくてたまらない。筆者は、リーダーとはあくまでも役割であり、あるシーンではリーダーである人も別のシーンではフォロワーとなることが往々にしてあると考えている。そのため本稿は現在リーダーの立場にある方にも、フォロワーの立場になった時には参考にしていただきたいと思っている。「フォロワーなんて簡単だ!」と思っているならなおさらである。

なぜフォロワーは自責的、積極的ではないのか?

さて一般的にフォロワーというものはその名の通り「従う人」と捉えられている。極端な場合、リーダーの指示に黙って従うことが仕事だと思われている。折角さまざまな能力に恵まれた人々が「ただ従う人」であるという自己定義を持つようになったのはどうしてだろうか?過去、資本家と労働者が会社を形作っていた頃、経営者は資本家(オーナー)自身であったり、資本家より信任を得た人物が務めていた。その頃上司とは正に管理職であり資本家サイドに立つ人物である。女工哀史の時代には、工場長の指示には絶対服従が求められ、労働者にできるのはせいぜい面従腹背である。その後、労働者運動などを経て労働者の権利が大きく向上するが、それもここ30年の話である。それより遡れば、上司は身分として上司であり、努力や能力によって部下が上司になることは大変稀なことであった。歴史的に上役を批判して不遇になった人の例は枚挙にいとまがない。人間の発達段階を見た時にも同様のことが言える。人間は生まれてしばらくの間一人で生活することができない。通常は授乳から始まる親の手厚いサポートを受けて育つ。特別に権威主義的な両親に育てられなくとも、親の言うことは正しいという前提において生きるしかない。もちろん親や先生の言うことの全てに従う子どもはいないし、一定の年齢になれば反抗期を経て自己が確立する。しかしながら、基本的に親や先生の指示には従うべきであるというメンタルモデルは多かれ少なかれ幼児期に刷り込まれる。そして幼児期に刷り込まれたメンタルモデルはなかなか払拭されない。さらに日本では年長者を敬う文化がある。歴史的経緯や人間の発達段階における刷り込み、さらには文化的背景から「フォロワーはリーダーに黙って従うものだ」というメンタルモデルができている。しかし、同時に人々はリーダーがいつも正しいとは限らないことを知っている。「リーダーに従う」と「リーダーはいつも正しいわけではない」という二つの葛藤する世界観に挟まれ、「リーダーの指示は正しいとは思わないが、自分にはどうしようもない」という一種の諦めが生まれる。その諦めが続けば「自分は言われたことはきちんとやるが、リーダーの方針が間違っているのだから成果は出ないだろう」といった他責的な姿勢に変わっていくこともある。こうして消極的で他責姿勢のフォロワーが創られるのだ。

内省型フォロワーシップで仕事の充実感が増す

だが、フォロワーという役割は世界観の持ちようで仕事の充実感や満足度、成果までもが大きく変わる。リーダーや組織の決定に対して受け身でいれば、図表1のように他責的、非生産的な姿勢やメンタルモデルに陥ることも往々にしてある。

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