J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年09月号

TOPIC 1 ASTD International JAPAN リーダーシップ開発委員会報告 日本人グローバルリーダーは 早期から青図を描いて育成を

去る4月21日、CHO協会・ASTD日本支部共催セミナー、「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダーシップを開発するには?」が開催された(於:東京・パソナ本社1階多目的ホール)。このセミナーでは、ASTD日本支部リーダーシップ開発委員会が研究、考察した、日本企業におけるリーダーシップ開発のあり方や課題について同委員会委員長を務める永弘之氏が、参加者とのディスカッションを交えて語った。本稿では、主に当日の講演から、日本企業が置かれている危機的状況と、グローバルリーダー育成の必要性、そしてその方法についての提言を紹介する。

永 弘之(ながれ ひろゆき)
エレクセ・パートナーズ代表取締役、ASTD日本支部理事、リーダーシップ開発委員会委員長。化学会社の経営企画、外資系コンサルティング会社のコンサルタント、衛星放送会社の経営企画部長・事業開発部長などを経て現職。幅広い業界の企業に対して、9000名以上の経営幹部、若手リーダーの育成を支援。著書は『マネジャーになってしまったら読む本』(ダイヤモンド社)、『強い会社は社員が偉い』(日経BP社)など多数。写真は当日のディスカッションテーマを説明する永氏。

取材・文/関 敦子、写真/本誌編集部

変化するカントリーマネジャーへの役割期待

「野村證券では、各事業分野におけるトップのポジションの大半は、日本人以外の人材が務めています。実力主義の野村において、日本人が選ばれていない――これはひとつの象徴ではないでしょうか。そしてこのままでは、日本企業がグローバル拠点のトップを日本人に任せることは、難しくなっていくのかもしれません」ASTD JAPANリーダーシップ開発委員会委員長を務める永弘之氏は、こう語り始めた。昨今よく語られるように、日本経済、そして産業のプレゼンスが低下している中、日本企業のグローバル展開のありようは大きく変化してきている。日本企業は、従来の製造拠点や技術をベースとした展開から市場開拓へと、グローバル展開の中心をシフトしてきたのである。当然ながら、ここで重要になるのは、製造に関する知見ではない。海外で現地の市場を開拓するために、現地の人材を活かしながらどのようにマーケットでのプレゼンスを広げていくかが重要になってくる。そしてこの変化は、各企業におけるカントリーマネジャー(1カ国以上の海外事業所を統括する現地トップ)クラスへの役割期待の変化に直結しているといってよい。では、求められる期待役割を果たせる人材は、日本企業において育成されてきたのだろうか。永氏によれば、本人の実力によって、その役割を果たしてきたリーダーは確かにいる。しかし、それらの人材は、「必ずしも企業によって意図的、計画的に育てられてきてはいない」と指摘する。「今の優れた日本人グローバルリーダーたちの能力は、その本人たちが無我夢中で、失敗も含めた体験、“修羅場”を経験する中で、相応の能力を身につけてきたもの。彼らは、企業によって、計画的に育てられたわけではありません。これから日本が海外の市場を開拓していくグローバルリーダーを育てようとしても、その知見がないわけです。これまで通りの日本企業の育て方では、リーダー育成は相当に困難を極めるでしょう」(永氏、以下同)まだ時間が残されているならば、こうした人材を育てるための策を講じなければならない――そこで委員会は、今回「グローバルでアイデンティティを発揮するために求められるリーダーシップを開発する」ことをテーマに据えた。そのうえで、○どういう力を身につければよいか○それはどのような経験を通じて、身につけられるものなのか○それは、どのような仕組みで可能になるのかという3つの視点を持って、まず調査・研究を行った。

グローバルリーダーに今、求められる能力

グローバルで通用するリーダーに必要な力について、委員会では最初に、委員が有する問題意識や知見、文献等の調査をもとに、17の仮説を設定した(図表1)。そして、これらの項目について、実証研究のためグローバルリーダー経験者10人に体験談をインタビューし、それをもとに検証を行った。結果、リーダー経験者たちは、中でも次の5つの項目を「特に重要な力である」と指摘したという。1.判断軸をブラさずに本質を捉えて決断する力2.組織リーダーの役割へのコミットメント、オーナーシップ意識3.利害関係が異なる多様性が高い組織内で調整、合意形成を図る力4.社会貢献意欲5.高い傾聴力、観察力をもとに状況や人の感情を読み取る力まず1つは、ものさしをきちんと示し、判断軸を明確にすることである。特に、海外で事業を立ち上げる経験を積んだリーダーたちは、「逃げずに意思決定をすること」の重要性を強調したという。2つめの「組織のリーダーと役割へのコミットメント」も非常に重要とされた。というのも、グローバル拠点に派遣されたリーダーは、たった数年しかそこにいないかもしれない。その中で、赤字の拠点を黒字化する、生産拠点のオペレーションを正常化してローカルの現地のマネジャーが回せるようにするなどといった目標や役割を、限られた期間内で、しかも現地人材を動かして達成するには、目標・役割に対する強いコミットメントが必要なのだ。さらに第3として挙げられたのは、インサイダーとして現地のマネジャーやローカル(地域)スタッフをまとめ上げることである。単に日本から送り込まれた調整役として機能するのではなく、合意形成を図り、時に本国に対していうべきことをいう。そうした力の必要性が強調された。ちなみにこの点が、実際にリーダーたちが最も苦労をした点でもあるようだ。

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