J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年09月号

企業事例3 インドに6週間! 実際に異文化を体験し語学力も集中強化

外国人とコミュニケーションを図るうえで最初に立ちはだかるもの。その最たる例といえば、言語と文化の違いという“2つの大きな壁”ではないだろうか。IHIでは、そうした2つの壁を取り除くために、実施期間6週間にも及ぶインド滞在研修を開始した。ビジネスで重要な位置づけとなっている新興国での異文化体験は、どのような効果をもたらすのか――。同社の取り組みを紹介する。

河合 浩  人事部 企画グループ 人事・人材開発グループ 部長
竒二 丈浩 人事部 企画グループ 課長代理

IHI
1853年石川島造船所として創業。現在は、船舶・海洋事業、航空・宇宙事業、機械事業、物流・鉄鋼事業、エネルギー・プラント事業といった重工業を主体とする製造会社として、ヨーロッパ、アメリカ、アジアなど世界各国で事業を展開する。
資本金:957億円、売上高:5135億円、従業員数:7986名(単体)(いずれも2011年3月期)

取材・文・写真/高橋 美香

異文化理解と語学が国際ビジネスの要点

「世界の個別ローカル市場のニーズを徹底的に把握するとともに、グローバルに展開される社内外の経営資源を最適に配置し、効率的に製品およびサービスを提供できるネットワークを構築する」これは、IHIが2009年11月に発表した『グループ経営方針2010』の中に盛り込まれた、同社が考えるグローバル化のあるべき姿である。現在、世界100以上の国と地域で、船舶・海洋事業、航空・宇宙事業をはじめとした、さまざまな専門性の高いビジネスを展開しているIHI。同社では進展の一途をたどるグローバル化を視野に入れ、グループ経営方針の大きな柱の一つとして、事業運営をこれまでの「国内中心」から「グローバル」へと大きくパラダイムシフトすることを決めた。こうした経営方針の転換を背景とした同社の育成方針について、人事部企画グループ人事・人材開発グループ部長の河合浩氏はこう話す。「新興国をはじめとした海外市場は、ビジネスにおいて非常に重要な位置づけになっていることは周知のことでしょう。企業としてグローバルビジネスに大きくパラダイムシフトする以上、海外で通用する人材の育成は不可欠。日本でのやり方や慣習、考え方のままで、ビジネスを行っても成功するはずがありませんから」(河合浩氏、以下記載がない場合は河合氏)『グループ経営方針2010』を受け、同社はグローバル人材に求める能力として次の2つを掲げた。1.異文化の差に興味・理解を示し、相互の強みの相乗効果から新しい価値を生み出す能力2.外国語(英語、その他の言語)でのコミュニケーション能力これらの能力をグローバル人材に求めていることの背景には、同社ならではの理由がある。「当社が扱う事業は各部門の専門性が高く、展開している国や地域もさまざま。ただ、どんな国でも顧客と契約を結んだり、工場を建設したりする際には、その国の慣習や文化を抜きに、コミュニケーションを図ることはできません。日本との違いをまず認識してもらい、そのうえで海外人材に欠かせない言語を学んでもらう。それが人事部として、全社一律で教育ができる部分ではないかと考えています」(人事部企画グループ課長代理 竒二 丈浩 氏)こうした育成方針は、日本のやり方をそのまま海外に持ち込むのではなく、各国ごとの独自の文化や習慣を尊重したいという同社の、海外ビジネスへの思いの現れでもある。

異文化と語学の違いを肌で感じるインド滞在研修

こうして、異文化理解と語学力という、グローバルコミュニケーションの礎をグローバル人材育成の柱に置き、さまざまな教育施策を実行する同社では、2010年10月、語学力強化と異文化を肌で感じることを目的とした次の“一手”を開始した。それが6週間のインド滞在研修だ。「これまでもさまざまな教育を行ってきましたが、異文化理解や語学を国内の研修で行うことに限界を感じるようになっていました。やはり実際に異文化を経験しなくては。そこで取り入れたのが、実際に海外に赴いて異文化を肌で感じ、語学を徹底して学ぶ、インド・チェンナイのSRM大学での研修です」同研修は、20代~40代の社員15名をインドへ派遣し、1日4コマ(1コマ=1.5時間)の語学の授業を行うというもの。しかし、授業だけでなく、夕食後から就寝までは自習時間で、多くの社員はその時間を予習・復習にあてているという。まさに朝から晩まで英語漬けである。「今回、インドへ派遣された社員の英語レベルは、TOEIC500点前後に統一しました。参加基準は、海外での活躍が期待されている人の中でも、語学力が不足している人材。具体的な人選は、各部門に委ねました」語学力を今一歩向上させる必要のある水準の一団にとって、インドでの滞在中は、異文化理解と語学学習を通じた、まさに外国人とのコミュニケーションの実践場だ。日本では何の心配もないことでも、新興国インドでは“不測の事態”が相次ぐ。

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