J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

CASE.4 テンポスバスターズ 多様性が“自然”な職場年齢にこだわらず評価し、成長を促す 「戦力になるシニア」と働く

「従業員の3人に1人が60歳以上」。
高齢化社会の先端企業ともいえるのが、テンポスバスターズだ。
飲食業向けのさまざまな支援事業を行う。
2005年、厚生労働省・高年齢者雇用開発コンテストで部門別賞(能力開発部門)に入賞。
「何歳になっても成長したい」と思わせる、独自な人材育成を取材した。

伊藤航太 氏 人事総務部
テンポスバスターズ
1997年設立。連結売上高:145億(2012年4月実績)、連結従業員(パート、アルバイト含む):463名外食産業における設備・備品のトータルサプライヤーとして、厨房機器・用品の販売、店舗設計および、内装工事、店舗用不動産の紹介、人材派遣、リース事業、飲食店のFC本部立ち上げ、飲食店経営者向けにノウハウを伝えるスクールの開催など、開業支援サービスを行う。全国に45店の店舗を構える。
[取材・文]=西川敦子 [写真]=本誌編集部

いくつになっても能力開発

飲食プロデュース事業を展開するテンポスバスターズ。全国45店舗を拠点に、厨房機器や食器・調理道具のリサイクル販売事業を展開。さらに飲食業向けポータルサイトや、開業支援、リース・クレジット取り扱い、ステーキやビストロチェーン経営など、「飲食業」をキーワードに多彩な業態を繰り広げる。2004 年から導入しているのが、60歳以上を対象に採用する制度「パラダイスシステム」だ。10 年近く経った今では従業員の3人に1人が高齢者である。最高齢はなんと80歳。「 経験豊か」「真面目」「忠誠心が高い」など、さまざまな長所が評価されるシニア人材。一方、「新しいことに挑戦するのが苦手」「柔軟な対応力に欠ける」といったマイナスの側面も指摘される。再就職先で補助的な役割に回りがちなのは、こうした背景も影響しているかもしれない。

ところが同社では高齢者が若年者と同様、事業の中核を担う。60歳以上の中途採用者には正社員も多いうえ、高齢のパート従業員が優勝をめざし、社内コンテストで若手とスキルを競い合う。人事総務部伊藤航太氏曰く、「シニアがここまで戦力になるとは。正直、当初は予想していなかったんです」

きっかけは本社の所在地である大田区の町工場。70 代を超えるであろう熟練工たちの姿を見た創業者、森下篤史氏(現執行役員)が、改めて定年制に疑問を抱いたところからパラダイス制度がスタートした。

「もともと成果主義が浸透していた会社。年功序列や性別による区別はありませんでした。それなら、募集対象の幅を思い切って60歳以上に広げてみてはどうだろう、と。幸い、改正雇用対策法の実施(2007年10月)以前だったため、『60歳以上限定』を大きく謳う、大胆な募集広告を出しました。まずは、月120時間、週5日以内を条件にスタートしたのですが、相当な数の応募がありました。その後、シニアの比重は急速に増加。今や60歳以上の従業員は全体の29.2%です。

ただ、これだけの人数となると、人材としての質も問われます。趣味的に職場に通われたのでは、困ってしまいますから」「パラダイスシステム」の募集文句にあるのは、「接客の大好きな、テキパキ働く60歳以上」だ。「年下の従業員と同じように、生産性や効率性を上げ、成長するシニア人材でなくては」と伊藤氏は強調する。

「歳だからムリ」は禁句。みんな、成長をめざす

シニアの採用について特別な基準は設けていない。主婦、内装業者、コック、経営者、銀行員。経歴はさまざまだ。レジ打ちも初めてなら、パソコンなど触ったこともない、という人が少なくない。だが、『歳だからムリ』は禁句だ。シニア自身はもちろん、上司である年下の店長も同じ。午前中など、お客の少ない時間帯を狙って、できるようになるまでOJTを繰り返す。

「個人差はあるものの、年齢による学習能力の低下は避けられませんから。でも、そういう人はちゃんと自覚して努力します。『もうボケてるから覚えられないよ』などとぼやきつつ、自宅に商品のカタログを持ち帰るなどして仕事を覚えていくんです。中には20 代の店長と70 代の部下、という組み合わせも。当然パソコンの知識にも差がある。たとえば、『カーソルを動かして』などといっても年配の人には何のことやらさっぱり。そんな時は、『カーソルって何?』『この矢印のことですよ。じゃあ、今度から矢印と呼びましょうか』といった具合に、お互いわかり合える言葉で、会話を成立させています」

シニアのモチベーションに火をつける仕掛けもある。業務別に速さや正確さ、成果を競い合う「パートマイスター」だ。レジ打ち、ラベル打ち、電話対応・店内案内、食器の梱包、カタログ営業など、分野ごとに全国区のコンテストが行われる。参加者は各店舗で選抜されたメンバーだ。「年齢も業務の熟練度もさまざま。ナンバーワンの実力者ももちろんいますが、新しい仕事にチャレンジしてほしいから、とあえて未経験者を店長が指名することも。たとえば、『○○さんは接客が上手だから、カタログ営業も向いているに違いない』という具合です。コンテストが控えている、となるとやはりみんな目の色が変わります。シニア参加者の健闘ぶりはすごいですよ。総合1位は30代が取っても、部門別となるとシニアが大活躍。70歳近い人が上位に食い込むこともあります。表彰式はかなり盛大にやります。その様子や優勝者インタビューなどをSNSで全国の従業員に見てもらったりもします」

できる人には給与も出す公平な成果

育成と同様、評価についても年齢で区別することはない。販売員の給与は6カ月に1回、改定が行われる。評価の柱は2つ。1つは実績。そして、もう1つは日々の取り組み実行度だ。半年に一度作成する「ビジネスライフシート」をもとに上司と面談。目標到達度や成長度について検討する。ビジネスライフシートには、「こんな仕事がしてみたい」「こんな能力を身につけたい」といった目標を記入する。

たとえば「商品を手早く確実に梱包できるようになりたい」など。食器の束ね方ひとつとっても、いい加減に紐をかければ荷崩れが起き、破損してしまう。一見地味だが、熟練度が問われる作業だ。慣れや工夫が必要になる。

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