J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

CASE.1 あさ川製菓 雇用継続先進企業の知恵 高年齢の職人を導いてきた 会社の「期待」と「責任」

あさ川製菓は菓子製造で創業141年を数える老舗企業だ。
古くから高年齢の職人が活躍し、2006年(平成18年度)には、就業規則を改訂、99歳までの再雇用を打ち出している。
高年齢者を雇用する会社にはどんな視点が必要なのか。
代表取締役の桐村幸雄氏に話を聞いた。

桐村幸雄 氏 代表取締役
あさ川製菓
1872年(明治5年)創業。従業員数:271名。和菓子・洋菓子の製造を行う。素材を生かした菓子作りを理念とし、和菓子の「偕楽」「八菓撰」「偕楽の梅」「梅古木」は全国菓子大博覧会で数々の賞に輝く。古くから高年齢者を活用しており、平成21年度高年齢者雇用開発コンテストでは優秀賞を受賞。

[取材・文]=中村博昭、[写真]=中村博昭、あさ川製菓提供

創業の明治の頃より現場を支えたベテランたち

あさ川製菓の創業は1872年(明治5年)。今年で141年目を迎える菓子製造の老舗企業だ。創業の基本理念にはこう書かれている。「究極まで原料素材をありのままに追求して、おいしいお菓子づくりを具現する」。品質がより良く、おいしい和菓子、洋菓子を提供するため、創業時から60歳を超えてもベテランたちを継続雇用してきた。ここでは高年齢者が活躍するのはごく当たり前の風景だ。創業5 代目社長である桐村幸雄氏は語る。「先々代社長の当時も高年齢の職人がいました。当社は原料素材にこだわり、餡も原料から自社で作っています。その材料を商品に仕上げてくれるのが社員たちです。品質の高い菓子を作るには、やはり良い職人やスタッフが必要です」

現在は社員の約2割、50名が60歳以上であり、70 代も3名在籍。最高齢の78歳の男性社員は和菓子製造の現場で、桜餅などの加工を行っている。今もバイク通勤し、大変に元気だ。「ここで働く高年齢者は皆、健康で元気。私も高年齢者を雇用しているという意識をほとんど持っていません。それくらい、皆さんには活躍してもらっています」

2006 年の改正高年齢者雇用安定法の施行を受け、就業規則を改訂。60歳定年になった希望者全員を65歳まで嘱託社員として再雇用。さらに健康で、業務に支障がなければ99歳まで再雇用するとした。将来的には70歳定年をめざしている。2009 年には、高年齢者の活用への取り組みで、独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構が主催する高年齢者雇用開発コンテストで優秀賞を受賞。高年齢者と中堅、若手社員がともに働く姿が高い評価を受けている。

リーダーシップを期待し嘱託課長職を設置

では実際、ベテランたちはどのように勤務しているのだろうか。嘱託契約は1年間で、再雇用時の仕事や職場はほとんどがそのままだ。唯一、体力的に難しいと判断し、餡をこねる作業をしていた担当者に、職場を代わってもらったという。勤務時間はほとんどが一般社員と同じだが、人によっては短くすることも。「年齢が上がってくると、時間を短くしたほうが負担なく集中できる場合もある。その点は個別に対応しています」

給与は月給制から時給制となり、金額はそれまでの実績から算定される。パート社員も含め、時給の最低額は700円。最高給は1400円前後。定年前と比べると給与水準は約70%から80%程度となっている。時給金額の見直しは1年に一度、契約更新時に行われ、仕事の習熟度などが評価される。賞与の支給はない。役職については、管理職で、定年後も現場でリーダーシップを発揮してほしい人材がいたため、「嘱託課長」というポジションを用意。現在3 名の嘱託課長がいる。

「正規の課長は別にいますので、補佐的な役割となりますが、それまでと同様の手腕に期待しています」役職手当はないが、その分は時給額に上乗せされる。わざわざ設けられたポストだけに、会社から経験と実績を期待されているポジションといえるだろう。

高年齢者も会議に参加し職場環境を改善

あさ川製菓では、高年齢者雇用を進める中で、職場の改善活動にも取り組んできた。高年齢者(および障害者)が働きやすい環境を整えるため、トイレの改修や玄関のバリアフリー化は当然ながら行われている。さらには、高年齢者も参加して作業環境の会議を行い、そこで作業動線の改善にかかわるレイアウト変更を実施。以前は各製造ラインの作業動線がパーテーションで分断され、原材料や加工製品を移動させる負担が大きかった。そこで機械の配置変更とパーテーションの撤去を行い、作業者の負担を軽減した。また、高い所に手が届かない人のために作業用の踏み台を設置したり、高年齢者のために滑らない靴も用意した。高年齢者自身が会議に参加することで、具体的に困っていることを伝えることができ、それらが環境改善に直結している。

また、連続作業による負担を軽減するため、朝10時と15時に10分間の休憩を新たに設けた。負担が軽くなっただけでなく、言葉を交わす時間ができ、社員間のコミュニケーションがより深まるという効果もあった。マネジメントに関する工夫もある。繁忙期や閑散期における生産状況において、人員配置の変更を円滑に行うため、ライン管理者を配置したのだ。和菓子、洋菓子の各製造ラインに、現場の状況や社員個々の事情を理解している60歳代の男女各1名がその役割を負っている。

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