J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2013年04月号

Opinion 3 生涯キャリアの視点から 企業人としての円熟を 組織運営と若手育成の糧に

改正高年齢者雇用安定法の施行による雇用延長推進は、高年齢者を本当に幸せにするのか。
そして、企業は彼らの力を十分に活用できるのか。
技能も意欲もばらつきがある世代を活かし、企業競争力の源泉とするために、
生涯キャリア発達の視点から渡辺三枝子氏が、個人と組織のありたい姿を示唆する。

渡辺 三枝子( わたなべ みえこ)氏
1943年生まれ。米国ペンシルバニア州立大学大学院博士課程(カウンセリング心理学)修了、Ph.D.取得。日本労働研究所研修機構主任研究員、明治学院大学、筑波大学大学院教授を経て、現在、立教大学大学院教授、(特任)、立教学院調査役。専門はカウンセリング心理学、職業心理学。主な著書に『新版 キャリアの心理学』『キャリアカウンセリング入門』(どちらもナカニシヤ出版)など。
[取材・文]=道添 進 [写真]=本誌編集部

雇用延長で成功する人の共通点

年金支給開始の問題と絡んで、定年退職年齢の引き上げ対策はこれまで幾度となく繰り返されてきた。一見、高年齢者に優しい制度のようだが、個々が将来を考える機会を奪いかねない危険もはらんでいると思う。定年がある限り、その後の人生を自ら考え、決断していく必要性は以前からいわれてきたし、65歳に延長されたとしても状況は同じだ。しかし延長された年月を、企業人としての役割を認識し積極的に取り組むのなら、定年後に続く人生も充実させることができるし、企業にとってもプラスとなるだろう。

ではどうすればそれは可能か。そのヒントを探る時、以前参加したある研究が思い浮かぶ。50 ~55歳で出向となった人々を対象に、出向を通して新たな職業人生活を成功させた人々の、成功要因を探し出したのだ。たとえば大手から子会社への配転を告げられた50 代の男性は、かつて地方に工場長として勤務した際に、零細企業の経営者と付き合った経験が、出向先子会社への適応に役立ったという。彼らのように過去を振り返り、経験をもう一度捉え直して新しい価値を見出し、これからの人生に活かす姿勢こそ、生涯キャリアの形成に欠かせない。

誤解されるキャリアの意味

ところが最近、キャリアの意味がいびつに解釈されている。仕事の能力や資格取得ばかりが取り沙汰され、自分の目標を達成することだけが働くことの意味と固定的に捉える、誤った自己実現が流行しているようだ。もちろん職能も大事な要素ではあるが、今所属する組織は所属する人々がつくり上げていく「生きる場」であって、単に仕事をこなす場ではないことが忘れられがちではないか。本来「キャリア」とは、その場において自分が経験することを意味づけし、その意味を積みかさねた結果として築かれる個々人の“生き様”のことである。

キャリアの意味を問う時、私の脳裏には高村光太郎の「道程」という詩が浮かぶ。「僕の前に道はない 僕の後ろに道は出来る」。企業人であれば、自分が組織で何を学び取ってきたのか、つまり組織内外の人間関係や知識、能力の広がりの意味を見出し、組織を通しての自分の成長を価値づけることこそが基盤となるわけである。その意味で、雇用延長や出向で成功している人は、自分の経験を前向きに捉えることに長けている人であり、組織の中で自分をどう活かせるかを身につけてきた人といえよう。

関係性づくりが

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