J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2011年08月号

特集 フォロワーシップを発揮する ベテラン中堅はこう強化する

35歳から40代前半ほどの“ベテラン中堅”社員。下の層にも上の層にも影響を及ぼす、非常に重要な時期である。しかし、全員が管理職にはなれない、組織の現実の中、モチベーションの維持が大変な時期でもある。しっかりと能力を発揮してもらい、バリバリと働いてもらうにはどうしたらいいのか。最強のフォロワーシップを発揮する、名アシストをつくるには――

上下にアシストを決めるベテラン中堅社員

「もっと早い段階から育成を強化しておくべきだった……」

これは、管理職やリーダー育成を行う企業からよく寄せられる声だ。フラット化が進んだ昨今の組織の管理職には、重大な責務が集中している。身につけておくべき能力も多く、求められているレベルも高い。管理職への準備期間も長くなってしかるべきだろう。

そこで今回、弊誌では「管理職予備軍」とも称されるベテラン中堅社員の強化策に焦点を当てた。具体的には、いわゆる「係長」や「リーダー」職に声がかかる35歳~40代前半の社員を想定している。

残念ながら、多くの企業の現実として、ベテラン中堅社員の全員が管理職になれるわけではない。では、管理職になれない人材が、リーダーやマネジャーとしての能力を備えなくてもいいのかといえば、答えは「No」だ。

韓国、中国企業をはじめとする、他国の世界市場の席巻、「3.11」の影響――日本企業が今一度、組織力を強化しなくてはならない理由は枚挙にいとまがない。強い組織の1つの要件には、ポジションに関係なく、必要とあれば、いつでも誰もがリーダー、マネジャーとなって業務を行える、ということが挙げられる。

管理職と若手のハブである「ベテラン中堅」は、まさに組織の要。その全員が高い能力と意欲を持ってスタンバイしていてくれなくては、組織は強くあり続けることはできない。この層には、管理職にも若手にも、常に効果的な“アシスト”をし、陰ながら重要な貢献をするベテランでいてほしい。上司からも組織からも、フォロワーシップを発揮して組織を盛り立てることがこの層には求められている。では、彼・彼女らにはどんな能力を身につけてもらうべきか。そして、そうした能力を高め、やる気を持って働いてもらうためにはどうしたら良いのだろうか。

役割意識を変えマネジメント能力を伸ばす

彼・彼女らに身につけておいてもらうべき能力や姿勢について、青山学院大学教授の山本寛教授(P28)、そして経営コンサルタントで道代表取締役社長の河合太介氏(P32)両オピニオンに共通した重要な点は、次の事柄である。

①自分の限界を知り「他人の力で成果を出す」マネジメント能力

②後輩指導を行う能力や態度、意識目の前の仕事をこなす、という役割から、組織に好影響を及ぼし貢献する役割を果たすように、意識を変革してもらう必要があるのだ。

実際、これらは今回取材した企業でもしっかりと意識されていた。

例を挙げれば、キッコーマン(P46)では、入社してから管理職に昇格するまでの時期を2つに分け、入社8年目(30歳前後)までをCDP第Ⅰ期、それ以降を第Ⅱ期に分けて育成しているが、第Ⅰ期の時期にみっちりと階層別教育を行い、第Ⅱ期に、上記①と②を強化するための研修を行っている。いわば「通過儀礼」のように、意思決定にかかわる立場であることを、ベテラン中堅たちは意識させられる。

日本郵船(P38)でも30代、40代、50代社員にキャリアデザイン研修が実施されている。しかし同社では、育成ローテーションで配属される先々での「実践」に重きを置く。多くの現場で、実際に人を相手にして身につけられる、人を動かす力やマネジメント意識。もちろん、Off -JTで学びの補完も忘れない。

評価のフィードバックも、②の後輩・部下育成に密接にかかわる。日本郵船では、一定の年次になれば順次昇進していく代わりに、上司や先輩から厳しいフィードバックがなされ、改善を要求される。フィードバックを行うベテラン中堅にとっては、考課者能力やマネジメント能力を伸長する良い機会となる。

やる気をなくすベテランは「枠」を勝手に設けている

そして、ベテラン中堅の「やる気」にまつわる本質を説くのが、キリンホールディングス(P42)の事例だ。

今回取り上げたのは、主に同社の「地域限定型」ベテラン女性社員たちへの施策である。2007年頃から、キリンビールが女性推進の活動を始めたが、同社では女性社員たちへの調査により、モチベーション停滞の原因を突き止めた。その1つが、「自分の“仕事の枠”を自らつくり上げ、それ以上のことはしてはいけないと思い込んでいる」人がいるということだった。自分はこれだけやればいい、と自ら線を引く。時には上司がその枠をつくり上げる――貴社のベテラン中堅社員にも(もちろん女性に限らず)自身の方向性や仕事の範囲を狭めている人はいないだろうか。

ベテラン中堅の中には、それまでの異動履歴などから、会社が自身に望むキャリアを何となく把握し、モチベーションを下げる人もいる(主観的プラトー化)。しかしどんな企業でも、社員には仕事や活動の幅を設けずに良いイノベーションを起こしていってもらいたいはずだ。意識・無意識に、自身に「枠」をつくってしまうベテラン中堅には、その枠を取り払ってもらう必要がある。

キリンホールディングスでは、「キリンウィメンズネットワーク」という推進組織を設け、気づきの起爆剤になるフォーラム(地域会)を開催したり、人事が「チャレンジ転勤制度」(期間限定でもとの職場に戻ることも保証)を設けたりと、枠をはずすきっかけづくりや、実際にチャレンジできる制度を設けて後押しし、彼女たちの自発性を引き出すことに成功している。

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:1,738文字

/

全文:3,476文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!