J.H.倶楽部

無断転載ならびに複製を禁じます。なお内容は取材・掲載当時の情報です。

月刊 人材教育 2011年06月号

JMAM通信教育優秀企業賞 受賞企業事例報告 あいおいニッセイ同和損害保険 「お客様に一番身近な保険会社の実現」に向けた本気の人財育成

日本能率協会では、産業界に有効な能力開発のあり方を普及させることを目的に、
1988年「能力開発優秀企業賞」を創設。
第23回となる今回は、あいおいニッセイ同和損害保険が本賞を、
エイチシーエル・ジャパン、富士通が特別賞を受賞。そこで、その取り組みを紹介する。
あいおいニッセイ同和損害保険では、2000年代前半に起きた
保険料や保険金の支払いに関する問題の猛省から、品質向上を最優先課題と設定。
顧客満足の実現に向けて育成施策を継続して行ってきた。


伊藤 直弘氏
人事部長


兵藤 郁子氏
人事部 人財革新グループ グループ長(所属・役職は2011年1月現在)

あいおいニッセイ同和損害保険
1918年創立。国内最大規模のMS&ADインシュアランスグループのメンバーカンパニー。2010年10月にあいおい損保とニッセイ同和損保が合併して誕生した。「お客様第一」を掲げ、個人向け、法人向け
の損害保険サービスを提供する。
資本金:1000億円、正味収入保険料:1兆1241億円(あいおい損害保険[連結]とニッセイ同和損害保険[単体]の単純合算数値、2010年3月期)、従業員数:1万6964名(2011年3月末現在)

取材・文/石原野恵、写真/本誌編集部

業界全体の猛省からお客様第一主義への改革

2010年4月、あいおい損保、ニッセイ同和損保、三井住友海上グループが経営統合し「MS&ADインシュアランスグループ」が誕生した。その半年後の10月には、あいおい損保とニッセイ同和損保が合併。新会社「あいおいニッセイ同和損保」は、同グループの中核企業に位置づけられる。

合併以前から、顧客一人ひとりの声を大切にしながら損害保険サービスを提供してきた2社だが、この合併の理念を「お客様にとって一番身近な保険会社」とし、従来の施策に新たな新入社員育成の支援システムを導入して、両社の強みを活かした能力開発活動を行ってきた。

一連の取り組みを始めたきっかけについて、人事部長の伊藤直弘氏は次のように語る。「保険業界は、この15年で大きく変化しました。1996年の金融ビッグバンを皮切りに、業界各社の再編、保険料率の自由化による独自商品の開発が活発に行われるようになりました。それが一因となって、2005年には保険金未払い問題、2006年には保険料適用誤り問題が発生してしまったのです。多様化する保険商品に対して、社員の育成が追いつかないという事態に業界全体が陥ってしまったというのが、今振り返って率直にいえることです。この経験から業界全体が猛省し、当社では“保険はお客様のためのものであり、お客様のために業務品質が最重要である”と原点に立ち返り、一連の取り組みを実施してきました」(伊藤氏)

では、保険会社にとっての業務品質とは何か。伊藤氏は、「社員と、保険を販売する代理店」だと話す。「ご存知のように、損害保険には商品の“形”がありません。目には見えず、お客様が実際に触って試すこともできません。では何が商品の質を左右するかというと、保険を説明し具現化する“人”。この点に着目し、全社員の業務品質の向上と均一化を推し進めてきたのです」(伊藤氏)

全社員を多方面から育成し高い品質を保つ

現在同社では、大きく分けて次の3つの側面から人財育成を行い、それを下支えする制度を設けているという。

●業務品質の均一化

●顧客目線の習得

●多様な人財の育成

以下、内容を具体的に紹介する。

●業務品質の均一化

①全社員マスタープログラム

2007年から全社員の知識・スキルを底上げし、均一化する目的で行われているのが、「全社員マスタープログラム」だ。保険業界に最低限必要な知識を習得するためのもので、部長職から新人まで、全部署の社員が学習を義務づけられている。年3回、イントラネットを使ったeラーニングで学習し、期末に確認テストを行う。設問の内容は、保険商品に関する知識や、コンプライアンス、社内ルールなど。管理職には、さらに管理職向けの学習課題が追加される。「保険会社の人間が保険を知らないということはあってはならないことです。当社には、営業、損害サービス、業務、本社と4部門がありますが、営業や損害サービス部門の場合、保険についての知識は日常業務の中で必然的についてきます。しかし新しく入った社員や、普段お客様との接点がない本部の社員には知識のばらつきがあります。そこをカバーするために、部署を超えて自主的に勉強してもらう機会となっています」

2007年から実施したこのプログラムは、現在では受講率が99%を超える。2010年度は、受講できなかった社員は約1万6000人中のわずか6人だけだという。「取り組み開始当初は、社員から反発もありました。ですが、単に『やってください』というだけではなく、人事から趣旨をきちんと説明したり、事前に資料を用意して勉強会の開催を促したりしてきたことで、職場に根づいてきたと考えています」

また、確認テストの合格が昇格要件となっており、目標点に達しない場合は追試となる。それでも合格できないと昇格できないというように、人事制度とも連動していることも、社員の学ぶ意欲を高めているようだ。

②ファミリートレーニング体制

上記に加えて、全社員の知識レベルを強化するうえで大きな役割を果たしているのが、「ファミリートレーニング体制」。入社3年目まで、職場ぐるみで新入社員を育てるOJT制度である(図表1)。人財革新グループ長の兵藤郁子氏に詳細を聞いた。「多くの企業がOJT制度を導入していると思いますが、新入社員とその指導役の1対1で育成する形が一般的ではないでしょうか。当社では、OJTの指導役だけに育成を任せてしまうのではなく、部署全体で育てる体制をとっています。指導リーダーは1人設けますが、育てるのは全員。“ファミリー”という名称には、皆で育てましょうという想いが込められています」(兵藤氏)

こちらはJ.H.倶楽部会員限定記事です。
ご入会後、続きをお読みいただけます。

残り:2,311文字

/

全文:4,622文字

【入会・年会費無料】

J.H.倶楽部は人事の仕事に役立つ特典が満載です!

  1. 総数2000本以上の人事の実務に役立つ記事(※)が閲覧可能
    ※専門誌『Learning Design』(旧『人材教育』)の記事
  2. 新サービス・お役立ち情報(調査報告書・ホワイトペーパーなど)の先行案内
  3. 会員限定セミナーへのご招待/講演動画・配布資料の閲覧
  4. 興味関心に沿った必読記事を、メールマガジンでお知らせ!