J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2011年06月号

“宇宙一の企業”をめざす 価値観に基づく環境づくり

「宇宙一の企業」をめざす会社がある。
モバイル広告代理店事業を行うライブレボリューションだ。
理想の組織を追求するために、
“人として当たり前で大切にすべき価値観”を
『LR HEART』として明文化し、
採用や評価の制度と連動させて、
従業員の行動へと結びつけている。
「宇宙一」を見据えた企業の環境づくりを紹介する。

増永 寛之氏 代表取締役

"2000年設立。モバイル広告代理店・
スマートフォン広告代理店事業を
展開。これらの領域を中心に、「お
客様の利益創造活動」に貢献し、
「お客様を成功と幸せへと導くプ
ロフェッショナルサービス」を提供
する。
資本金:2億5494万円、売上高:53
億円(2010年12月期実績)、従業員
数:60名"

取材・文/石原野恵、写真/ライブレボリューション提供、石原野恵

愛をベースにした経営がメンバーを幸せにする

ライブレボリューションは、モバイル広告仲介の分野で近年急成長の企業だ。「宇宙一の企業」になるというビジョンを掲げ、「メンバー第一、顧客第二主義」、「ノルマなし、サービス残業なし」といったユニークな制度や組織風土を持つ。同社の創業者で、代表取締役の増永寛之氏は、次のように話す。「“宇宙一”というのは、売り上げや利益ではなく、宇宙一愛されるということです。それにはまず、当社がメンバー(従業員)から愛される存在でなくてはなりません。一番身近なメンバーからも愛されない企業が、お客様や取引先から愛されることはないからです」(増永氏、以下同)

この根幹には、「人は幸せになるために生まれてきた」という増永氏の信念がある。人は、単に仕事をするためだけでも、お金を稼ぐためだけでもなく、幸せになるために生まれてきた――だからこそ、ノルマを課して競争させるのではなく、共感や感謝、愛をベースにした組織環境を整えることが重要だと増永氏は述べている。

この同社の理念や価値観は、「LRHEART」という形で、「宇宙一愛される企業になる」というビジョンのもと、経営理念、企業理念、同社のメンバー全員が守るべき29の基本原則などがまとめられている。その内容は、「人間性を追求する」「個人プレーよりチームプレー」といったことから、「メールを出す際のエチケットを守る」「身の回りの整理整頓」などの細かな項目まで多岐にわたる。

たとえば、うち1つには「高潔さが基本」という項目があり、法や規則を遵守するとある。「 例を挙げると、メンバーが1000万円の損失を生むミスをしたとしても、当社では許されます。しかし、たとえ1万円でも横領するようなことがあったら、そのメンバーは即解雇でしょう。なぜなら、金額の大小ではなく、その行為が高潔さに反するからです。同様に、残業代を支払わないというのも法に反していますから、当社ではサービス残業は一切ありません」

また同社を訪れると、受付には訪問客の名前が書かれたウェルカムカードが置かれ、複数のドリンクメニューから好きな飲み物を選ぶことができる。これもLR HEARTにある「お客様への感謝」「礼儀正しさ」「積極的で丁寧なコミュニケーション」という項目を実践している形だ。

こうした姿勢や企業風土が評判を呼び、同社は就職活動中の学生から広く共感を集めている。2009年から3年連続で「就職活動中に出会った魅力的な企業ランキングNo.1」に選ばれ(ジョブウェブ調べ)、同社の就職セミナーや会社説明会には、4万人を超える学生が訪れるという。

また顧客からも多くの信頼を得て、同社の事業は着実に拡大してきた。2004年12月期の売上高が3億8000万円だったのが、2005年期末で7億3000万円、直近の2010年には53億円まで成長している。

当たり前のことをきちんとやれば組織は強くなる

LR HEARTができたのは、創業から5年経った2005年。増永氏自身が書きあげた。きっかけは、ザ・リッツ・カールトン・ホテルの「クレド」に触れたことだった。「自社の価値観や理念をまとめようと考え、ザ・リッツ・カールトン・ホテルの人事部長様にお話を伺いました。その時に、『なぜリッツカールトンでは世界中の社員がクレドを守れるのか』と訊ねたところ、『人間として正しいことが書いてあるから』という答えが返ってきました。これは確かに当社にも当てはまる、そう感じて、業種や職種に関係ない本質的な価値観をLR HEARTとしてまとめたのです」

その際、増永氏は「自分の価値観、もしくは自分が理想とする価値観を盛り込んだ」と話す。「多くの企業が理念やウェイを掲げていますが、企業のトップ自身がその価値観を心から受け入れ、実践できるものでない限り、従業員にいくら実践させようとしてもできないと考えたのです」

LR HEARTを制定したことによって、当時在籍していたメンバーで、その価値観になじめない人は抜けていった。しかし同時に、LR HEARTがメンバーに浸透していくに従って、売り上げが倍以上のスピードで成長していったのだ。その理由を増永氏は次のように話す。「組織において大切なのは、何をメイン事業とするかということよりも、良好な人間関係があり、メンバーが気持ちよく過ごせることだと思います。そのためには、価値観がそろっていることが大切です。

極端な例を挙げると、世の中には報・連・相は面倒だからしたくないという人もいますよね。ですが、挨拶や報告、上司が部下の話に耳を傾けるといったことは、LR HEARTに掲げており、当社では当たり前のことです。その価値観が同じであるほうが、気持ちよくスムーズに仕事ができると考えています」

価値観連動型の評価・給与制度

LR HEARTを制定した後、同社ではいくつかの取り組みを行った。まずはLR HEARTを名刺サイズの八つ折りのカードに印刷し、常に携帯できるようにした。さらに、毎日の朝礼で1ページずつの読み合わせを始めた。

発表者がLR HEARTの内容を1ページ読み上げた後、該当項目に関連する自分の経験談や考えを3分ほどで発表する。最後に増永氏が当該ページにまつわる話をする、といった具合だ。これを繰り返すことで、毎日必ずLR HEARTの一部に触れることができる。「いくら当たり前のことだとしても、人間ですから常に完璧にできるわけではありません。また、一度身につけたと油断していると、当たり前のことすらできなくなってしまうことがあります。何度も繰り返して同じ文章を読むことは、価値観の統一には重要なプロセスです」

さらに評価についても、LR HEARTと連動した仕組みへと変更した。かつて同社では、営業職には成果報酬型、その他の職種には年功序列型の給与制度をとっていた。しかし事業の拡大に伴い人が増え、チームによる分業で仕事を進めるようになると、その体制がうまく機能せず、メンバーの不公平感につながってしまっていたのだという。

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