J.H.倶楽部

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月刊 人材教育 2012年10月号

特集 日本の屋台骨を再構築する 生産現場を支える「ものづくり人材」の育成

「六重苦」ともいわれる状況に置かれ、グローバル競争で苦戦を強いられている日本の製造業。日本企業のプレゼンスを再び取り戻すためには、戦略的な舵切りと、現場力の維持が不可欠だ。うち、「現場力」とは、生産現場を支える中核人材たちが発揮する力である。これまで日本の強みといわれてきた現場力も、それを維持する人材がいなければ、衰えていく一方なのだ。変化の時代を生き抜き、ものづくりの将来を支える彼・彼女らには、どんなことを、どんなふうに高めてもらえばよいのだろうか。また、それを支援する企業側の具体策とは。

写真 : アフロ

日本の製造業が抱える危機感

日本の基幹産業として、経済を牽引してきた製造業。しかし、東日本大震災と電力不足、円高、韓国や中国企業を中心とするアジア諸国勢の台頭、そして団塊世代の熟練技能者の一斉退職など、「六重苦」ともいわれる状況に置かれ、グローバル競争で苦戦を強いられている。

生産のグローバル化が進展しているとはいえ、日本のものづくりは、依然として世界最先端である。そして、そのノウハウは現場が生み出してきたものだ。

しかし、今後のノウハウ、技術の伝承、そして現場力の維持に、日本のものづくり企業は不安を感じているようだ。独立行政法人 労働政策研究・研修機構の2011年の調査※1でも、60.8%の企業が、生産現場の中核を担う人材が不足していると答えているのである。

中核人材とはどんな人材なのか

中核人材(中核的技能者)とは、具体的にはどういう能力を持つ人材かといえば、以下の能力が上位3位に挙げられている(前出調査、P40、Opinion②藤本真氏ページ参照)。

○「製造現場のリーダーとして、ラインの監督業務や、部下・後輩の指導を担当できる」能力

○「製造現場で多くの機会を受け持ったり(多台持ち)、複数の工程を担当できる(多工程持ち)」能力

○「設備改善・改造や治工具製作などを含めた生産工程全般にわたる作業を担当したり、試作・開発・設計に参加できる」能力

技能だけではなく、幅の広いスペシャリスト――リーダーシップや指導力、そして幅広い知識を得ている必要があることが見てとれる。いい換えれば、「生産現場のリーダー的存在として、人を指導し、ものを管理する能力」「現場で自律的に、生産管理や保全、改善を行っていくことができる能力」ということになるだろう。

技術の高度化、納期の短期化、製品のモジュール化などの、生産プロセスでの変化や、現場の雇用形態の変化などにより、日本企業は戦略と生産プロセスの大きな転換を求められている。現場と、現場の中核人材にも、その変化に自律的に対応できるようになることが求められているのである。

こうした人材を育成していくためには、どういったアプローチがあるだろうか。

トヨタや日産に代表されるような、グローバル競争で健闘している企業では、安全、品質管理、生産性、環境など、項目ごとに明確な「ありたい姿」の到達基準をつくり、その達成を着実にめざしている。また、それを現場で運営する際には、誰もが到達への道筋をたどれるよう、標準化、言語化がなされている。そして、品質や生産プロセスなど、全てに関連する“自社の価値観”も、しっかりと共通の価値基準や規範として共有を図っている。

中核人材育成の具体的アプローチ

今回の取材企業でも、それらは徹底されていた。

半導体のアッセンブリーメーカー、石川サンケン(P52)は、社内等級認定制度と通信教育を活用しながら、段階を追って工場全体のマネジメントができる人材を育てる取り組みを、長年にわたり行っている。社内等級制度を設けていることで、2級、3級、4級と、その人がどの段階の知識を得ているかが明確になっている。独自の理解度確認テストと改善実践レポートと組み合わせた総合成績は、人事データとして長期的な育成、適材適所にしっかりと活用されている。

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